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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2018年 1月
164/200

晶も挑戦

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

「や~ん、これも可愛い~♡」


倉庫の主ことホンダゴリラを見た晶ちゃんが声を上げた。


「じゃ、俺は飯を作るから。何か有ったら呼んで」

「ん~わかった。じゃあご飯よろしく~」


中さんは台所へ行ってしまった。


「さてと、じゃあやってみよっか?」


リツコがキーをONにしてゴリラのキックペダルを踏み込むと


ブルン…トントントントン…


「ね、エンジンが掛かるでしょ?晶ちゃんもやってみて」

「カブと同じでしょ?掛からないわけが無いじゃないの」


プルン…プス…プルン…プルン…プルン


「あれ?かかんないや」

「でしょ?私も最初はこうだったのよ」


晶が何度キックペダルを踏み込んでもエンジンは掛からない。

勢い良くキックしてもゆっくりキックしてもエンジンが掛かる気配も無い。

半泣きになって止めるとリツコが代わっていとも簡単にエンジンを掛けてしまう。

キックどころかストンと足を踏み下ろすだけなのにいとも簡単にエンジンが掛かる。

冬の暖房の無い倉庫。晶が汗が噴き出るほど頑張ってもエンジンは掛からない。


「駄目だね。嫌われてるのかな?」

「ね、駄目でしょ?休憩しよっ」


コーヒーとココアを淹れていたら中さんが何かを持って来た。

お正月の鏡餅をお汁粉にしてくれたのだ。栗入りの粒餡だ。芸が細かい。


「熱心やね。プロでも掛からないかな?」

「無理。これは絶対何かのおまじないが掛かってる」


「これは俺が作ったんじゃなくってな…」

中さんはこのホンダゴリラが店に来た経緯を私達に話してくれた。

あるお客さんがストレス解消の気分転換に組んでいて、ストレスに負けて病気になり痩せ細った事。

力が出ずにフライホイールのナットを緩められなかったこと、完成直後

自分の弱った体の絶望して自ら命を絶った事。そして両親が大島に引き取りを依頼した事。


「…という訳でうちの倉庫に在るわけや」

「それっておまじないじゃ無くてのろいじゃないの?」


「おじさんもリツコちゃんも何をのほほんと話してお汁粉食べてるのよ…」

晶ちゃんが青い顔でこっちを見ている。声が震えている気がする。


「完璧にいわく付きよ!おじさんとリツコちゃんは憑りつかれてるのよ!」

「あれ?晶ちゃん、この手の話は駄目な人?」


「違います!非現実的な話が嫌いなだけです!だいたい何よ!2人で…」

「あ・晶ちゃんの後に白い」


ガバッ!


晶ちゃんが中さんにしがみ付いた。あ、中さんちょっと嬉しそう。このスケベ。

しがみ付いて欲しいならいくらでも私が…


「わ…私…この手の話駄目なんです!」


     ◆     ◆     ◆


「晶ちゃん…帰っちゃったね」

「ハンバーグ作ったのになぁ。明日のお弁当に入れよっか?」


せっかくチーズ入りハンバーグを作ったのに葛城さんは帰ってしまった。


「チーズ入りとは…中さんはお料理が上手ね」

「家庭料理で良かったら何ぼでも作るで」


「もしかしたら、私たちは呪われたのかもしれないね。ずっとこの家に住む呪いが。

倉庫の主が『お前たち二人で我に仕えよ』とか呪いをかけてたりして」


(だとすると、磯部さんもこの家に住み続けることになる)


「磯部さんは、いつか素敵な彼氏を見つけてお嫁さんになる。子宝に恵まれて

幸せな家庭を築くからそんな呪いには掛からんよ」


「どう言う意味?」


「俺がお父さんの代わりになってどんな男か見極めるから、彼氏が出来たら…」


ガッ!


磯部さんがグラスを叩き付けた。何か不味い事を言ったのだろうか。


「…考え方が古い」


この後しばらく、磯部さんは口をきいてくれなかった。


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