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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
2018年 1月
163/200

葛城・近江今都なんて大嫌いっ!

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

「…という訳で、知らなかったと言ってるんだが、そんな訳無いよな」

「常識です。知らないでは通用しません」


葛城は上司に呼び出されていた。どうやら年末の取り締まりの件でクレームが来たらしい。


「今都は何でも『知らん』で逃れようとするからなぁ」

「昨年の不正登録の件でもそうでした。自分には信じられませんが」


「まぁ、それは良いとして、服装の件だが…」

「私は女性ですが、問題が在るのでしたら改めます」


『私は女性です』何度言っても署内で皆が振り向き驚いた表情をする。

スカートを履いて出勤しただけ・歩いていただけでクレームの電話が来た。


「男装して通勤します…」

「すまんな」


     ◆     ◆     ◆


「も~!腹が立つ!毎回毎回!男じゃないもん!」

「まぁまぁ、落ち着いて」

「そうよ。晶ちゃんは(男前だけど)女よ」


大島宅へ夕食に訪れた晶はとても怒っていた。激オコである。


「私だってスカート履きたいもん!オシャレしたいもん!」

「スカートで通勤しただけなのに苦情の電話って酷いよね~」


今都は事あるごとに苦情の電話・メールをしてくる。

議員を使って市役所を動かす事もある。忖度でもしているのだろうか?


「私だって甘えたいもん!よしよしとかギュ~ッとかされたいもん!」

いつの間にか話が別の方向へ進んでいる。


長身の晶をナデナデしたり抱きしめたりするのは難しい。


「背が185センチくらい無いと難しいな」

「いっその事小さな可愛い彼氏の方が良いんじゃない?」

「ギュ~っとかされたいの!する方じゃない!」


レモン酒・ミカン酒・梅酒の瓶が次々と空になる。


「晶ちゃん。それって度数は高いから気を付けないと酔っちゃうよ?」

「葛城さん。お水飲もうか?ね?」


「私だって!私だって!…あ…」


立とうとして崩れ落ちた。甘くて呑み易いとはいえアルコール度数は4.3度。

ビール並みに強い果実のお酒に晶は負けたのだった。


「やれやれ…布団に運ぼうか。磯部さん、手伝って」

「じゃあ布団を用意しておくね。まったく…酒に飲まれるなんて」


(磯部さん、あんたが言ったらアカン)


リツコが敷いた布団に晶を寝かせ、再び二人で晩酌を続ける。


「おんぶすると女の人やなって思うんやけどな」

「あ~中さんのエッチ。そんなにエッチな事したいなら…しよっか♡」


リツコは服を脱ぎ、大島に覆いかぶさった。


「今夜こそ私の物になりなさい…」


     ◆     ◆     ◆


チュン…チュン…カタン…ガチャコン・プロロロロ…


朝日と小鳥のさえずりでリツコは目を覚ました。

腕枕をされて体は一糸まとわぬ生まれたままの姿だ。

酔った勢いで大島へ覆いかぶさった所まではうろ覚えながらも記憶が在る。


(そっか、とうとう結ばれたんだ)


これは俗に言う『朝チュン』まさに男女が夜の営みを終えた状況に間違い無い。

あの社長と平社員が釣りをする映画で『合体』と表現される行為だ。


(何だか思ってたよりあっけなかったな…上手く出来たのかしら?)


痛みや異物感は無い。リツコは目の前の手に指を絡ませる。


(中さんは優しいもんね。丁寧にしてくれたから痛くないのかな?)


キッチンからコーヒーの香りと味噌汁に入れるネギを刻む音が聞こえた。


(これじゃお嫁さんと旦那さんの役目が逆じゃない…ん?)


トントンと包丁で何かを切る音が聞こえる。味噌汁の匂いがするから

葱でも刻んでいるのだろう。


(じゃあ、この腕枕は誰?お料理してるのは晶ちゃん?)


視線の先にある掌は心なしか細くて華奢な気がする。


(中さんの手…違う!)


体の向きを変え、リツコは腕枕をしている人物を確認した。


白い肌、細いが鍛えられた体、そして柔らかな膨らみと整った顔立ち。


「晶ちゃん?!」

「ほへ?」


磯部と一緒に寝ていたのは葛城だった。


「何で一緒に寝てるの?」

「あれ?リツコちゃん…何で裸なの…私も裸?服は…?」


「お~い。朝ごはんが出来たで~」

大島の声が聞こえる。2人はいそいそと服を着てキッチンへ向かった。


     ◆     ◆     ◆


「今夜こそ私の物になりなさい…」

大島の体に覆いかぶさったリツコはキスをしようとした。その途端


「グゥ…」


電池が切れたように眠ってしまったのだ。


「女の子同士で仲良う寝たらと思って葛城さんの横に寝させたんや」


酔うと服を脱ぐ癖のあるリツコはこの晩、晶の服も脱がせてしまったようだ。


「何かゴソゴソチュッチュ音はしてたけど覗くわけに行かんしなぁ」

「チュッチュって…あっ!晶ちゃんの首元!キスマークが在る!」

「え?ちょっと鏡見てくる」


洗面台から戻って来た葛城さんはべそをかいていた。


「胸にもある…噛んだ跡もある…もうお嫁に行けない…」

真っ赤になった顔を両手で覆ってモジモジしている。女の子みたいだ。


一瞬の判断ミスが思いもよらぬ結果を産んでしまった。


「磯部さん。新年会で『私、泥酔しないので』って言ってたな?」

「昨日は牛乳を飲んでなかったから…晶ちゃん、ごめんね」


「ゴメンで済んだら警察は要らない~!わ~ん!」

「女の子同士のじゃれ合いじゃない。ノーカウントよノーカン」


泣き止ませるのに30分かかった。


色々有って少し遅めの朝ごはんになってしまった。

女性二人は何事も無かったかのようにモリモリと食べる。


「ふ~ん。知らん事にしたらOKと思ってるんやなぁ」

「そうですよ。自分たちが全部正しいと思ってるんだから」

「うちでも今都の生徒はそんな傾向が在るよ」


葛城さんはトーストと目玉焼き。サラダと炒めたウインナー、そして味噌汁。

磯部さんは卵かけごはんと味噌汁。葛城さんのウインナーを摘んだりしている。

俺も味噌汁とご飯。そこへ沢庵。


「速度制限の標識が無いからってバイパスを時速130㎞で走ったりとか、

バイクで免停になったけど自動車なら乗っても良いと思っていたとか、

今都のくたばり損ない共だけならまだしもガキ共まで自転車で暴走族よ!」


「だからウチでは今都はお断りなんや。『お金を払うなんて知らな~い』って

 言いかねん連中やからな」


「今回は深夜に14歳が自転車で道路のど真ん中で大騒ぎ。

 親は『深夜に出歩いて何が悪い』ってクレームよ」


捜査上とか仕事上の事は言わない方が良いんじゃないかな?


「親が親なら子も子よ。ウチなんかその今都の底辺が来るんだから」

「俺の頃から変わらんのやな」


昔も今も今都の気質は変わらないらしい。


「ところで、前から興味があったんだけど、倉庫の主って本当におじさんと

リツコちゃん以外だとエンジンが掛からないの?」


『倉庫の主』とはうちの倉庫に在るホンダゴリラだ。今まで欲しがる者は居たが

エンジンが掛からず、冗談で磯部さんに『エンジンをが掛かったら下宿OK』と言ったら…


「そうよ。私と中さんでないと掛からないんだから」


エッヘンとでも言いたげに磯部さんは胸を張って言う。彼女は

乙女の願いだか祈りでエンジンを掛けてしまったのだ。今でも納得できない。


「私も挑戦してみようかな?」

「万が一かかっても、もう空き部屋が無いから下宿は駄目」


「下宿はしないけど興味はあるの。おじさん、良いかな?」

「まあ、挑戦するだけやったら何とでも」


昼食後、葛城さんの挑戦が始まった。






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