葛城とスーパーカブ①
大島サイクルではスーパーカブの4速化を承っております。
※要予約
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
葛城晶は悩んでいた。愛車のカブの事である。
学生時代に購入して使い続けているスーパーカブ。
維持費が安くて置き場に困らないのが良い。
クラッチ操作が不要なのにギヤ付なのが良い。
キビキビとした走りとイージードライブの両立だ。
だが、引っ越してきた高嶋市は50ccのカブでは辛い。
面積だけは広く、上り下りが多いだけでなく幹線道路の流れが速すぎる。
法定速度を守って走る晶にとっては恐怖であった。
我慢して乗っていたある日、エンジンが息継ぎをするようになった。
機械に弱い晶は途方に暮れた。この田舎町にバイクショップなんて無いのだ。
ダメ元で近所の自転車店を覗いてみたらバイクも直しているようだ。
「・・・と言った感じですね」と葛城さんは今までのいきさつを語った。
「そうですか。確かにアップダウンは多いし、国道でも70~80km/hくらい
平気で出しますからね。そもそも161号線は信号もないから暴走放題ですね。」
タペット調整しながら対応する。タペットキャップのOリングも交換しておく。
ヘッド内のオイル焼けが少ない。オイル管理が良いのだろう。
タペット調整とオイル交換を終えエンジンを始動する。
最初に来店した時より静かになった。
「今は50のままで原付2種登録が出来ませんからね~以前は黄色ナンバー
にして乗れましたけど、今は停められてシリンダー刻印を確認されて49ccやったら
アウトです。おまけに書類の偽装で御縄ですよ。」
「大島さんでもやってたんですか?」
「いや。高嶋高校は125㏄まで通学に使えるし、排気量アップしてますよ。
山道を通う生徒は50ccやと辛い言うてます」
「高嶋市で乗るならボアアップですかね?改造車はまずいかなぁ・・・」
改造と言ってもきちんと申請した物だから堂々と乗れば良いと思う。
だが、世の目は厳しい。そんなもんである。
「いっその事、別のバイクに乗り換えるってのも手段ですけどね」
新車が売れたら御の字だ。商売の話を逃す手は無い。
「クラッチが面倒なんですよね。結局はカブですかね?」
葛城さんはカタログを見ているがこれと言った物は無いらしい。
「カワサキのKSR110も遠心ですけど新車は無いし、中古も少ないですね。」
『漢カワサキ』だっけ?葛城さんのイメージじゃないな。
「どうしようかな・・・少し考えてみます。」
数冊のカタログを持って葛城さんは帰った。
葛城は甘党である。カブに乗って甘い物を求め出掛ける。
今日は道の駅安曇河へカブを走らせる。
(安曇河町内なら今のままで充分なのに)
ソフトクリームを食べながら思うのであった。
蕎麦屋が配達に使える様にクラッチを自動にしたと言われるカブ。
燃費とイージードライブを上手にバランスしたシステムと言えます。
平地では不満は無いかもしれませんが、起伏に富む高嶋市では
少し乗りにくいそうです。
葛城のスーパーカブは3速ミッションです。長い坂道で
3速では力不足で失速・2速ではエンジンが回り過ぎなのが不満です。
排気量アップしてパワーで乗り切るのも一つの手段です。