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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
12月
145/200

クリスマスイブ

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は架空の存在です

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切関係ありません。

街が賑やかな雰囲気に包まれている。


普段は日曜日が定休日の大島サイクルが本日は営業している。

売り出している物はいつもと少し違う。


(商売とは難しいものだな。こんな物が売れるとは)


冗談のつもりで作ったポスターが人を呼び、

数量限定で売り出したチタン製ペアリングは思いの外売れていた。


削り出して磨いたリング『錆びない誓い』

ガスバーナーで炙って焼き色を付けた『大人の煌めき』


どちらも高校生や若いカップルが買って行く。


理恵と速人がポスターを見ている。

「おっちゃんも悪よのう。2人とも女の子やのに」

「理恵ちゃんも欲しいの?」

「食べ物の方が良いな」


佐藤君と綾ちゃんがリングのサイズを合わせている。

「おっさんも商売上手だよな」

「お揃いだね」

仲睦まじい二人である。


今ポスターの出来が良かった。

店に貼っておいたら欲しがるお客さん居ると思って多目に刷って売り出したところ、

結構売れた。ポスターだけでもかなりの利益だ。


葛城ファンクラブの奥様には葛城さんがスーツ姿で写っている方が好評。

束で買おうとする者も居た。


奥様方だけではない。男性もポスターを買って行く。星空と蒸気機関車を背景にした

ロシア風のコートを着た葛城さんと西部劇のガンマン風コスプレの磯部さんの

ポスターが飛ぶように売れる。


葛城さんだって女の子らしい格好をすれば男性にモテるのだ。


「おっちゃん。ポスターちょうだい」

「ほい。100円」


「錆びない誓いをペアで」

「あいよ~5000円」


「このリングって普段は売ってないんですか?」

「私の手が空いてる時に気まぐれで作るもんで」


「このアキラ様と一緒に写ってる女の子は誰?」

「私の知り合いのお嬢ちゃんですよ。モデルを引き受けてもらいました」


「アキラ様の彼女?」

「晶さんは彼女は作りませんよ~」※葛城は女性。恋愛対象は男性


なかなかの賑わいであった。


そこそこの数量を用意しておいたが、明るいうちに売り切れてしまった。

材料代は端材を安くで引き取って来たから安い。人件費は俺が片手間で作ったから

殆ど有って無い様な物。ポスターと旋盤を動かす諸経費は掛かったけれど…


「結構良い儲けになったな。来年もやろう」


売る物が無くなったので、店終い。注文しておいた物を引取りに行って来た。


フライドチキン・クリスマスケーキ・スパークリングワイン・・など。

今まで一人で過ごしていたから何を用意すればよいのか解らないが

こんなもんだろうと思う物は用意した。


磯部さんも何やら準備しているらしい。葛城さんも夕方には来る。

独身3人のささやかなクリスマスの食事会だ。


「いままで一人暮らしやったからよく解らんのや」

「私も一人だったからよく解んない」


「呑んで楽しめば良いんですよ。それっ!」

葛城さんがポンとスパークリングワインの栓を飛ばして宴が始まった。


「そうそう。クリスマスのプレゼント。はい、2人ともお揃い」


「おじさん。何をくれたの?」

「中さんが選ぶくらいだからバイク絡みでしょ」

磯部さんの言う通り。バイクに乗る時に手が冷たくない様に皮のグローブだ。


「やっぱり」「もうちょっとロマンチックな物を・・・」と聞こえるが気にしない。


「私はこれ」

葛城さんが出したのは何やら大きな箱。

「中身は・・・お?白バイのトップケースやないか」

「私も。無線ケース?」

こんな入手困難な部品・・・ルートが有るんやな。


「レプリカなんですけどね」

悪い手段を使ったと思って心配したけどレプリカですか・・・

こんなのが有るんか。あとで売ってる店を聞いておこう。


「私はこれ。はい、晶ちゃん」

「これは・・・服?」


「晶ちゃんも女の子らしい服を着なきゃ」

よくサイズが有ったもんだ。女性の美に対する意欲は計り知れないものが在る。


「中さんには・・・」


何やらモソモソとリボンを出しているので念の為警告する。


「リボンを巻いて、『わ・た・し♡』には年齢制限が有るで」

「・・・・・駄目?」


「1週間朝夕のご飯を作ってくれる方が良い」

「くっ・・・いっその事殺せっ!」


そんなに嫌がることか?面白そうだから一度磯部さんに作ってもらおう。


この後、3人でケーキを食べた。

甘さ控えめのケーキだったので3人で1ホール食べてしまった。


長い間、一人で過ごしていたクリスマス。

誰かと過ごすのも悪くないと思うのだった。


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