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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
12月
143/200

速人・オークションの罠⑤組み立て開始

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは無関係です。

プレスカブのエンジンを改造するのに必要な部品が揃った。

消耗品以外の流用部品は一通りそろえてある。


「さて、何を組み合わせるかが問題や。どうする?」

「今のエンジンと同じでギヤだけ変えてみたいです」


「社外の80㏄とか88㏄。クランクを交換して100㏄オーバーも出来るぞ」

俺の提案にどう答えるか。少し興味がある。


「いえ。今と同じでギヤだけ変えてみたいです。」

「せっかくケースを開けたのにか?」


「排気量まで換えると何を換えて良くなったか解らないのでギヤだけで。

キャブもそのまま使えて耐久性の問題も無し。維持も楽かなって思います」


なるほど。地に足の着いた間違いのない選択だ。

良い部分はそのままで、その中で変化を求めるのか。悪くない。


「じゃ、作業を始めるか」

「はい」


クランクケースのベアリングは交換してあるのでミッションとクランクを組み込む。

「まずは、4速用のシフトドラムにプレスカブのニュートラルスイッチローターや」

「新品ですか?プレスカブのドラムについてるのを再使用したらダメですか?」


「新品や。分解をせんと外せん場所やから安全策やな」


カブのニュートラルスイッチのこの部分は長年改良されなかった部分だ。

200円もしない部品が不良でエンジン全分解なんて馬鹿馬鹿しいから新品を使う。


「ミッションは海外製やけどローが90と一緒のギヤ比。発進加速が伸びるで」

「坂道は大丈夫ですか?」


カブの1速は積載状態で急坂を走る為の超ローギヤードな設定。

「ボアアップして1人乗りのモンキーやったら大丈夫・・・と思う」

「何か珍しく不安な返事ですね」


「Dax70の1速よりは低いから大丈夫やろう」

Dax70の1速は2.4かそこらだったと思う。今回のギヤは約2.8。大丈夫だろう。


オイルポンプの駆動ギヤ・スピンドルをケースに組み込む。

「細いスピンドルを使うんですね。軽量化ですか?」

「いや、90のオイルポンプを使うから」


ベアリングにオイルを垂らしながら組み込む。

速人は経験済みなので作業は比較的スムースだ。


シフト関係はギヤ以外を中古部品で揃えた。オークションを見ていると

ミッション・シフトドラムはセットで売ってもギヤシフトアームは

別で売ってることが多い。案外高価だから出物が在ると仕入れている。


出来れば部品は新品が良いけどね。


社外品ミッションの4速ギヤだけカスタム50の物と交換。90用のミッションだから

スペーサーを入れて使う所だけど、カスタム50の凸ありのギヤを使えば良い。


理恵や速人に組んだミッションで余ってるからという理由でもある。


シフトチェンジの動作を確認してクランクをセットしてからケースを閉じる。

仮止めしてもう一度チェンジが出来るか確認。本締めしてシフト不良だと

ガスケットが無駄になる。社外ガスケットは色がにぎやかだ。


「ちょっとした事で雰囲気が変わりますね」

「そうや。このパチモン感が面白いやろ?」


プライマリーギヤはカスタム50用。少し厚みが薄くフリクションロスが減る。

軽量化と言う意味合いもあるけど気分的な物だろう。


「違いが出ますか?」速人は尋ねてくるが

「わかったらプロになれるわ」としか言えない。


「オイルポンプのブッシュはキチンと入るか気を付けてな」

「はい。きちんと入りますね。これは当たりのケースですね?」


当たりかは解らないけど、ブッシュの収まりの悪いケースはあった。


クラッチはいつもの90用の流用。ワンパターンと言うなかれ。定番だ。

遠心クラッチ周辺・キックスピンドルのスプリングを組んでケースを閉じる。


ここでシフトスピンドルのオイルシールを組む。


「リップの所にシリコングリスを盛る感じで」

「どうしてシリコングリスなんですか?」


「ゴム・樹脂を傷めないのと、熱に強いからや」


スピンドルのスプラインにテープを巻いてから押し込む。

(コンドームを被せるのも悪くないけどな)

ボルトを仮締めして、トルクレンチで本締め。

これでクランクケースの右側は終わり。


今日はここでタイムアップ。

「次は左側とピストンやな。まぁボチボチ行こう」

「はい。週末ですけど大丈夫ですか?」


大丈夫も何も今まで日曜とか来てたのに。

「ん?何を遠慮してるんや?」

「おじさんの彼女は怒りませんか?」


何か勘違いしているらしい。

「おっさんは彼女なんかおらんぞ?」

「平日に料理してるのは何でですか?」


「下宿してる()のご飯やで。おっさんの副収入や」

「下宿?女の人と?」


「そう。女の子が下宿してる。姪っ子みたいな・・」

ヴゥロロロ・・・磯部さんのカブの音だ。


「たっだいま~!晩御飯はなぁ・・・いらっしゃい」

磯部さんの御転婆モードが一瞬で仕事モードに変わった。面白い。

「おかえり。お湯入ってるよ~。先にお風呂に入っておいで~」


「な?女の子が下宿してるだけやろ?」

「磯部先生と一緒に暮らしてるんですか?」


下宿してるんだから一緒に暮らしているに決まってる。変な事を言うやつだ。


「はぁ・・・じゃあ、また来ます」

何だか納得していない様子で速人は帰っていった。


磯部さんがお風呂に入っている間に食事の仕上げをする。

オニオンスープを温めながら卵を溶く。今日はオムライスだ。

仕込んでおいた鶏肉・玉ねぎ・冷や飯をフライパンで炒めてチキンライス。

温まったスープは一旦コンロから降ろしてフライパンをセット。


磯部さんが風呂から上がって来た。

「晩御飯は何?」

「オムライス。卵はどうしよう?流行の柔らかい奴?」


「昔っぽいのが良いな。包んであるやつ」

「OK。冷蔵庫にサラダが在るから出しといてな」


薄焼き卵へチキンライスを乗せてフライパンをトントントン・・・

なぜ包まるかは解らない。昭和の洋食屋で出るオムライスが完成だ。


「はい。オムライス出来上がり。先に食べ始めといてな」

「中さんは?」


こっちは流行のフワフワ卵のオムライス。

盛ったチキンライスの上にオムレツを乗せる。


「これに切れ目を入れると・・・ほーら」

半熟の卵がチキンライスの上に広がり、磯部さんが「わぁ」と驚く。


「ま、味は一緒やけどね」

「見た目は華があるわね」


飯を食いながら週末の事を伝えることにした。


「週末やけど、今日来てた本田君がエンジンを組みに来るんやけど・・・」

「私が居るのは不味い?」


「いや。磯部さんが寛げないかな~って思って」


生徒の顔を見た途端に普段のリラックスムードの顔が引き締まった磯部さん。

生徒の前では教師らしくいなければいけないのだろう。


「大丈夫。私も中さんのバイク触ってる所を見たいし、ゼファーも触りたいし。

でも、ご飯はどうするの?ハンバーグは?」


しまった。作業をすると手が汚れる。オイル臭いハンバーグなんて食いたくないな。


「それはまた今度・・・じゃダメ?」

「・・・・・」


「俺の手作りでなくて良いなら何とか・・・」

「手作りじゃなきゃイヤ」


困ったお嬢さんやなぁ。仕方が無い。何とかしよう。

明日はジェネレーター側から始めてシリンダー組み付けだ。


ハンバーグはどうしたものか?


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