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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
12月
142/200

速人・オークションの罠④消耗品

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

今日も大島サイクル前に配送のトラックが来た。

「え~っと、バイク部品ですね」

「ほい。認印。ご苦労さんです」


速人のエンジンの為の消耗品が来た。ガスケットキット・ローラー類。

クローワッシャにOリング。普段は使わない社外品だ。


社外品のガスケットは色が違う。使うと雰囲気が変わるので

今まで使わなかったが、純正より安いので今回は使う事にした。

品質テストの意味合いもあるが、悪いレビューもないし、大丈夫だと思う。


K社のが亜助っ人セットはピストンピンのクリップが付いているのは良いと思う。

一応75㏄用を買った。ヘッドガスケットを交換すれば他の排気量にも使える。


クランクシャフトはカブの50・70・90の中古・新品が在る。

シリンダーも各種在庫有り。それに対応したクラッチもある。


マニュアルクラッチにする部品も一応ある。これは中古。

大石サイクル時代からの不良在庫だ。ずっとある。


不良在庫とは言え助けられた事もある。


店が傾きかけた時に大石の爺さんが溜め込んでいたOHV・6Vのエンジンが

プレミア価格で売れた。古いカブの部品や外装もマニアが高値で買った。

おかげで金融屋に現金一括で返済出来た。


店を継いだときに「お前が困った時はこれを売れば良い」と言われたが、

まさかの高値で売れた。そんな事が有ったから古い部品が捨てられない。


部品は揃ったから後は組み付けるだけだが、クランクケース洗浄と

ベアリング交換がある。カブのベアリングは1か所面倒な所がある。

ベアリングの穴が貫通しておらず、裏から叩き抜く事が出来ないのが1個。

特殊なベアリングプーラーで外すが、昔はアンカーボルトで抜いていた。


特殊な工具が手軽に買えるようになったのは不景気になってから。

昔はプロ御用達の専門店でしか買えなかった工具が素人でも買える。

良い時代になったものだ。


工具店にとっては受難の時代かもしれない。訳が解っていない一般人を相手の商売。

そこまでしなければ商売が成り立たないと言う事だろう。


ベアリングを抜いて洗浄したクランクケースはヒーターで温めておく。

ベアリングは冷蔵庫で冷やしておく。ベアリングは鉄?ステンレス?どちらでも良いが

なるべく縮ませる。クランクケースの穴は温まって広がっているから

クリアランスが広がって挿入しやすく、ケースへのダメージも減る・・・気がする。


ホカホカのケースにベアリングを挿入。ソケットレンチのコマを当てて

ベアリングの外周を軽く叩けば挿入完了。


『しっかり暖める・滑りを良くする・優しく・・。女性の扱いと一緒や』

大石の爺さんが言ってたけど、今思うと下ネタでもあるな。


ご近所と話をしたりしている間に夕暮れ。田舎の日暮れは早い。

シャッターを閉めて磯部さんの帰りを待つ。


夕食の献立はカブのエンジンを組み立てる以上に難しい。


味噌汁・肉野菜炒め・冷凍庫から出したひじき煮物・・・若干手抜きな感がある。

ご飯をワカメご飯にして・・・あまり変わらないか。


引き肉を辛めの味付けで炒めて、切れ目を入れた厚揚げに詰めてオーブンで焼く。

こんがり焼けば酒の肴の出来上がり。料理名?知らん。


そもそも男の一人暮らしやったからレパートリーがない。

下宿人に1週間3食カレーって訳にも行かんしなぁ。


ボイラーとストーブのタンクへ灯油を入れたり、お風呂を入れていると

あっという間に時間が過ぎる。


「ただいま~。あ~寒いっ」一升瓶を抱えて磯部さんが帰って来た。


「お酒にする?それとも風呂?ご飯?」俺は奥さんか?


「お風呂!寒いっ。お風呂のあとで熱燗!」

抱えている一升ビンは菱のラベルが貼られた渋い銘柄だ。


お風呂から上がった磯部さんは厚揚げを摘みながら熱燗を飲んでいる。

「暖かい家でご飯とお風呂が待ってる。最高ね」

「夕食の献立で悩むけど、何か食べたいもの有りますか?」


「特に思いつかない。満ち足りてるもん」

それが一番困るけど、わかる。あれが食べたいとか思うのは食べてないからだ。

料理が出来ず、ろくな食生活をしていなかった彼女に考えさせるのは無理か。


食事をしながら食事の話をするのもどうかと思うが、お互い食べるのは好き。

母親の料理の話や好物の話は尽きない。


「あ、あれが食べたい。オムライス!」

ふむ。チキンライスと卵でササッと出来るな。

「・・・・やってみよう」


「あとね、ハンバーク。手作りの大きなハンバーグ!」

これは少し手間がかかる。きれいな手でないと出来ないから日曜だな。

玉ねぎも飴色になるまで炒めんと美味しくないから時間が掛かる。

「手間がかかるから日曜やな」


食後は二人で片付け。俺が洗った皿を磯部さんが拭いていく。

娘が無事に生まれていたらこんな感じだったのだろうか。

スッピンの磯部さんを見ているとそんな気持ちになる。


夕食後、居間で俺は帳簿、磯部さんは持ち帰りの仕事を片付ける。


「中さん、店は儲かってるの?お家賃は今のままで良いの?」

「大儲けはしてないよ~。ちょっとだけ貯金する程度」


「磯部さんは忙しいの?持ち帰りって珍しいな」

「バイク通学の審査がね・・・大型二輪持ってるから押し付けられて」


「ウチの仕事に影響はあるんかな?ちょっと心配なんや」

「安曇河・高嶋方面は問題なし。蒔野・真旭の一部は若干影響あり」


「じゃあ、ウチの商売には影響無しやな」

「成績・素行不良の子が弾かれる位ね」


「今都は?」

「今都は殆ど不許可。成績・素行に問題あり。近所なら歩いて来いってね」


仕事が終わったらしく、磯部さんは俺の背中に覆いかぶさって来た。


彼女が耳元で囁く

「お願い・・・今夜・・・して」


(やれやれ・・・1回した途端にこれだ)

大島は帳簿を閉じ、御姫様抱っこでリツコを布団へ運んだ。


その夜、リツコは意識を失うまで大島に揉まれ、突かれた。

「ん・・・ふぅ・・・あぁ・・・」


前回、大声を出してご近所を誤解させたリツコは声を堪えた。

悩ましい声を出しているがエッチな事など全くしていない。


大島の手はリツコの肩・腰・背すじ・・・こった筋肉をほぐしてゆく。

磯部リツコ30歳。若く見えるが歳には勝てない。



大島は思うのだった。

「この()の甘え方は間違っている」と。


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