大島のお勧めエンジン
農家のお年寄りが大型自動二輪免許を持っている事が有ります。
自動2輪免許が大型・普通・小型と分けられる前に免許を取った人です。
その頃に免許を取った方だと若くても60歳以上でしょうか。
そんな方がカブの70.90に乗っている事が有ります。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
「理恵ちゃんから良いエンジンが在ると聞いてきました。」
シャッターを閉めようとしたところに速人が来た。
とりあえず速人を店の中に入れてシャッターを閉めた。
「エンジンを買うためにバイトしてると聞いてな。
70の出物が在ったから理恵に言うといたんや。」
程よいパワーのカブ70エンジンは・・・あまり人気が無い。
税金が安くなる訳でなく、燃費は良いと言っても微々たるもの。
維持費が殆ど変わらないならパワーのあるカブ90を買う。
「若干違うけどカブを買ってボアアップした物よりバランスは良い。
吸排気のバルブが大きい他に各部が強化されている。」
といってエンジンを見せた。
「・・・・・。」明らかにがっかりしている。
驚くのは仕方ない。オイルまみれなのだ。
各部のオイルシールから漏れた油に泥が混じって汚泥と化している。
「ボロいですね・・・。」
そう見えても仕方ない。積んであった社外製エンジンより
汚いポンコツに見える。
「一見汚い。だが、走行距離は少ない。田の見回りに使っていただけで
オイルシールが経年劣化してオイル漏れしていたエンジンや。」
オイル漏れしているエンジンは錆が少ない。
漏れたオイルでコーティングされているのだろう。
さらに説明を続ける。
「これの汚れを洗い油で落としてからオイルシールを交換する。
クランクケースカバーを開けてクラッチを掃除すればOKやと思う。」
「いくらなんですか?」
「自分で直すなら5000円でどうかな?」
「買います!」速人は即決で買ってくれた。
整備して売り出すなら1万円は欲しいエンジンだ。
オークションでは未整備で倍近い値段になるだろう。
エンジンのオーバーホールは日曜日にすることになった。
定休日なら作業に専念できる。
初めてエンジンを触る初心者を相手するのだ。
付きっきりで見ている方が良いだろう。
「じゃ、今度の日曜日に。」
速人を見送って一日が終わった。
速人の買ったエンジンは近所のお年寄りが乗っていたカブから降ろしました。
農家の爺さんが田の見回りに使っていたカブ70.爺さんが亡くなって
農機具小屋に有ったのを家族が発見。乗ろうにも家族・親戚の誰も
自動2輪免許が無かったので大島サイクルに処分を依頼した・・・
と言う設定です。
泥まみれの車体は掃除して大島サイクル倉庫に保管中。
「気が向いたら直して売る。」らしい。