わては今都のバイク売り
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は全て架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは無関係です。
ホンダモンキーの生産終了以降、中古部品や車体は高値安定。
最終生産車がオークションで50万円~70万円と言う原付と思えない高値が付けられる。
それに目を付けた男が居た。今都のセレブリティ―バイカーズTataniである。
「海外製の同じバイクの外見を弄れば高値で売れる!」
実際は見る者が見れば同じバイクではない。だが、投機が目的の連中に違いは分からない。
セレブリティ―バイカーズTataniに海外製のキットバイクが展示された。
ホンダ純正ジェネレーターカバーを付けた
『モンキー型バイク ¥400000 2017年製』
ホンダのモンキーに乗りたいのではなく、「よく解らんけど、この形のバイクが売れる」
とモンキーに疎い投資目的で買う連中には飛ぶように売れた。
少しバイクに詳しい者が見れば「2017年製で何でキャブ?」となるが、
まさかこの値段で偽物を掴まされるとは思わなかったのだろう。
価値が下がらない様に登録することも乗る事も無い連中故に
フレームナンバーを確認することなどしない。偽物である事に気が付かない。
『欲に目が眩む』とはこの事だろう。何台も買って丁寧に保管する者まで現れた。
未登録新車状態で保管されているのだから故障もせず修理にも入って来ない。
新車で買っても10万円で御釣りがくるコピーバイク。ジェネレーターカバーを換えても
1台辺りの利益は約25万円。セレブリティ―バイカーズTataniは今日も大儲けだ。
「やっぱりバイクは馬鹿が買うんや。あ~儲かる!あ~楽しい!」
セレブリティ―バイカーズTataniの代表、他谷 信成は笑いが止まらなかった。
今夜も儲けた金で飯を食いに行く。
ズルッ!チュルチュルチュルッ!ガフガフガフッ!クッチャクッチャ・・ゲフ~
「おかみさん、あのお客さん・・・なんちゅう喰い方ですか?」
「他のお客さんが皆、帰ってしもたなぁ」
賑やかな音を立てて食事をすすりこむ他谷。周りの客は
「今日は止めておくよ」「静かに食べたいから持ち帰りで・・・」
と帰ってしまった。
「それにしても不思議ですねぇ」
「ほんま。不思議やねぇ」
チュルチュルッ!シュルシュルシュルシュルッ!ガフガフガフガフッ!
クッチャクッチャクッチャ・・・ゴックン!・・・ゲフ~
持参したマヨネーズをこれでもかと搾り、食事にかける他谷。
左手には焼酎の入ったグラス、右手に箸。両手がふさがっている。
マヨネーズでヌルヌルになった食事だから箸でつまめない。
皿へ覆いかぶさるように、パン粒1つ逃さない様に吸い込みながら食べている。
空気と一緒に食べるのだからゲップを何回もするのは当然だろう。
新品だった業務用サイズのマヨネーズはほぼ空になっている。
「何でトンカツをすすって食べはるんやろ?」
「ほとんどマヨネーズを呑んでますよね」
「営業妨害レベルの食べ方ですね。出入り禁止にしますか?」
「来るなら要予約・貸し切りにして貰おか」
安曇河の料理屋『かねだ』では従業員たちが嫌悪の眼で他谷を眺めていた。
舞台が関西なので『馬鹿』としています。
関東で言う『アホ』と同じニュアンスです。