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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
11月
120/200

葛城・アンチリフトフォーク移植

フィクションです。登場する人物・団体等は架空の存在です。

実在する人物・団体等とは無関係です。

大島サイクルに軽トラが止まった。

「お~い。フロントフォークだけ先に出来たぞ~」

高村ボデーの社長である。

「社長、おおきに」


「気楽に塗ったもんに限ってキレイに塗れるわ。伝票はまた後でな」

バタバタと帰ってしまった。


フロントフォークからレースを外して新しい物に替える。

あとはバラバラの部品を組むだけだ。難しい事は無い。

トルクロッドのボルト・ナットを荷重のかかった状態で締めるくらいだ。


組み立てが出来たので試乗してみる。

ブレーキをかけてもフロントは浮き上がらず沈む。

普通のバイクなら当たり前の自然な動きだが、カブ乗りにとっては違う。

カブ50カスタムに採用されているアンチリフト機構である。


さて、葛城カブが完成した所で作戦決行だ。

『カブの修理が出来ました。ついでに今夜ご飯でも食べませんか?』

・・・メール送信。


すぐにメールが返ってきた。

『行きます。お肉を食べたいです』


今度は磯部さんにメール送信。

『葛城さんとアポ取れました。今夜ご飯を食べます』


こちらもすぐに返信が来た

『よろしくお願いします。で、どこで呑むの?』


     ◆     ◆     ◆


「ゆっくりできて良いんだけどさ・・・」

「仕方ないやろ。急に貸し切りになったんやから」


焼肉屋へ予約の電話を入れたら急な貸し切りが入ったとかで断られてしまった。


「まぁ、店で食べるより安いし、良いお肉を食べられるから良いけど」

「用意しとくからお風呂に入ってらっしゃい。湯上りに呑むんでしょ?」


「もちろん!じゃ、お風呂いただきま~す♪」

やれやれ。


ガスコンロや皿やらを用意しておく。

野菜は・・・キャベツ・玉ねぎ・さつま芋・・等々。女性が2人なので少し多めに。

・・・実は俺の為。最近、肉ばかりは辛いのだ。歳かなぁ?


ピンポ~ン♪お?葛城さんだな。

「こんばんは~。今日はお休みですか?」

「いや。ご飯を食べるから早仕舞い。カブは出来てますよ」


「ご飯は何処で食べるんですか?焼肉屋さん?」

「いや。ウチで焼き肉。焼肉屋さんの予約が取れませんでした」


「もしかすると二人っきりですか?」

そら男と二人っきりで飯なんて何されるかわからんよね。警戒するのは当然だ。


「もう一人居るから安心してください。先にカブを見ますか?」

「はい。」


「フロントはカスタム50のフォークに交換・塗装。ステムベアリング交換。

タイヤは中のコードが切れてたんでチューブと一緒に交換です」


「これでフロントが浮かなくなるんですね?」

「そうですね。上手い事出来てますよ」


「さて、説明はこの辺で終いにしてご飯にしますか」

「もう一人の人は来てるんですか?」


「そろそろお風呂から上がって来る頃ですよ」

「お風呂?」


「そう。お風呂。明日は休みだから泊まって行くって」

「おじさんの恋人ですか?お邪魔して大丈夫?」

「いや、近所の子供みたいなもんや」


葛城さんを連れて居間へ行くと、湯上りの磯部さんが呑んでた。

ビールに・・・焼こうと用意しておいたキャベツに塩をかけて食ってる。

高校生みたいな外見なのにおっさんみたいな呑み方をするなぁ。


「あなた、何歳?」

ああ、スッピンの磯部さんを観るのは初めてか。『磯部さんですよ』と教える間も無く


「干支を教えてくれるかな?何年生まれ?」

職務質問?補導?どっちか解らんけど仕事モードだ。目が怖い。


「1987年生まれの30歳。干支は(うさぎ)。葛城さん、年上の女は嫌い?」

「え・・・?」


「磯部さんですよ。スッピンだと解らんでしょ?」

「へ?」

磯部さんがニシシと笑う。悪戯っ子だな。


さぁてと・・・飯にするか。


コンロに火をつけて鉄板を熱する。先ずは塩タンからだろう。

「それにしても・・・本当に磯部さん?」

「そうよ。教育実習の時に童顔で馬鹿にされたから勉強したのよ」


女の人って化粧で化けるんやなぁ。怖い怖い。

「高校生が呑んでると勘違いして・・・ごめんなさい」

「こっちこそ。男の人と間違えてごめんなさい」


2人とも酒が入って気楽になったのかな。楽しそうだ。

「焼けるで~」

「えっと、レモンは?」

「はい。レモンと塩コショウ」


「次は何を焼こう?」

「ホルモン~!」

「私は内蔵系はちょっと・・・」


バラとホルモン。ついでにロースを焼く。

葛城さんは梅酒のソーダ割りをチビチビと、磯部さんはビールを豪快に呑む。

「お化粧の仕方が解んない~リツコちゃん教えて~」

「晶ちゃんは顔立ちは良いのよね・・・」


葛城さんはお酒が弱いんやなぁ。磯部さんは・・・呑み過ぎじゃないか?

「私はね・・・モテるのよ・・・女子に・・『お姉さま』って」

「私なんか男の人と間違えられて女子に告白されます~」


2人ともよいペースで呑むな~。肉も焼く傍から食っていく。良い喰いっぷりだ。

「リツコちゃんは~どうしておじさんと仲良くなったの~」

葛城さんはだいぶ酔っぱらって来たな。大丈夫か?


「晶ちゃんに~振られた時に一夜を共にしたのよ~」

おい。紛らわしい言い方するんじゃない。酔ったアンタを介抱しただけや。


「抱かれたの?」

・・・悪夢のような暴れ方やったで。あんな大トラ抱けません。


「次の日はシーツが血だらけで~太腿も血だらけで~」

その血は俺の血や・・・頼むから誤解を生む事は言わないで。


「や~ん。おじさんケダモノ~猛獣~」

猛獣は酔った磯部さんや。俺は被害者や。


「それから・・・・」磯部さんは酔いつぶれた。

「寝ちゃった~つまんな~い・・・」続いて葛城さんも酔いつぶれた。


起こさない様に2人を布団へ運んだ。やれやれ。賑やかな夕食だった。


2人の蟠りが解決できて良かったと、宴の片付けをしながら思うのだった。



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