写真立て
フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は架空の存在です。
実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。
久しぶりのお鍋。久しぶりの家庭料理の夕食。そしてお酒。
お腹一杯になった私は行儀が悪いけれど寝ころんだ。
写真立てが有る。女の人と写った大島さんは今より髪がフサフサだ。
「ああ、それは・・・・婚約者やった人と赤ちゃん」
そう言われると女の人はふっくらしている様に見える。
婚約者?赤ちゃん?聞こうとしたけれど
「お湯が冷める前に入っといで。」
大島さんに促されたのでお風呂に入る事にした。
『婚約者やった』って事は結婚はしていないのかな?子供はどうしたのかな?
お酒のせいだろうか、考えがまとまらない。
脱衣場の鏡に映った自分に問いかける。
聞いて良い事なのか、そっとしておいた方が良いのか。どっち?
言いたくない事を無理に聞くのは良くないか・・・そっとしておこう。
「お先にお風呂戴きました」
大島さんは普通にしている・・・いや、ちょっと元気が無い。
「そっちの部屋に布団を引いておいたから眠かったら先に寝てや~」
お風呂に行ってしまった。
写真に写る大島さんは幸せそうな笑顔だ。婚約者?名前は知らないけれど
やはり幸せそうな顔をしている。
大島さんはお風呂から出てこない。ついでに風呂掃除もしているみたい。
『男やもめに蛆が湧く』なんてお祖母ちゃんは言ってたけど、皆がそうでもないらしい。
「洗濯物が有ったらついでに洗うで~」
と言われたけど、さすがにそこまでは甘えられない。パンツまで洗ってもらうのは
ちょっと恥ずかしいので遠慮した。大島さんは本当にマメな人だなぁ。
「ありゃ?待ってってくれたんか?」洗濯機を回した大島さんが部屋に戻って来た。
「うん。まだ眠れないかな」
「もう少し呑みますか?」
「ええ。少しだけ」
その後は少しだけビールを呑んで話をした。他愛のない話だったと思う。
お互いに一人暮らしで話し相手が欲しかったからだろう。
バイクの事・仕事の事・・・よく喋ったと思う。
写真の事は聞けなかった。
本日2話更新です。