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大島サイクル営業中 2017年度  作者: 京丁椎
11月
110/200

磯部・失恋する

フィクションです。登場する人物・団体・地名・施設等は架空の存在です。

実在する人物・団体・地名・施設等とは一切無関係です。

「葛城さん。年上の女は嫌い?」


友人になったと思っていた磯部さんが交際を申し込んで来た。


やっぱり男と間違えられていたんだ・・・。


今思えば、始まりは大島さんからのメールだ。

友人になりたいらしいと磯部さんメルアドが送られて来た。

大人の女性。しかもバイク女子同士。友達になってくれると思っていた。

ご飯を食べに行ったり、ツーリングに行ったり・・・。

いつも頬が赤かった気がする。流行のメイクだと思っていたのに

赤くなっていただけ?自分を恋愛対象として見ていたのか?


もしかすると女性だけど女性が恋愛対象の方かもしれない。

これは非常にデリケートな問題だ。


どうしよう?逃げようか?いや、逃げちゃ駄目だ。

仕事柄、追いかけるのは慣れている。でも、逃げた事は無い。


「お願い。私と付き合って。」

困る。私も女の子です。恋愛対象は男の人です。


「確認しておきたいのですが、からかっているのですか?」

何を言ってるんだ私は!だとしたらどうなる?


「酷い・・・そんないい加減な気持ちじゃないです。」

磯部さんが涙を浮かべて見つめて来る。


ミスだ!解答は不正解!どうする!

「私の心はあなたが盗んでいきました。お願い・・・」


心なんか盗んだつもりはない!どこの三代目ですか?

「と・と・ととりあえず落ち着きましょう!」


涙を流す女性を連れて何処へ行けばよい?

そうだ!家だ。ゆっくりお茶でも飲みながら話そう。

「うちでゆっくりお話ししましょう。」


葛城は磯部を連れて帰ることにした。


葛城が困り果てている一方で磯部は有頂天だった。

今まで言い寄ってきた男を酔い潰したことは数知れず。

一夜の恋を求める男は数多く居た。


葛城さんは私の体を求めて来た事は無い。そのそぶりも無い。

こんなに私を(よこしま)な目では無く、純な目で見る男性は初めてだ。

この男を逃せばチャンスは二度と無い。


「と・・・とりあえず(うち)へ・・・。」

「はい。」


線路沿いの葛城の住むアパート。

テレビとちゃぶ台のある和室に磯部は通された。


「まず、お話しなければいけないのですが・・・」

葛城は皮ジャンを脱ぎ、ハンガーにかけた。


「私は女性を恋愛対象として見る事が出来ません。」


磯部さんはボロボロと泣き始めた。

心は痛むが仕方ない。せめて痛みが少ない様に一刀両断する。


「私は女性なので恋愛対象は男性です。」


「心が女性と言う事ですか?」


「心も体も女性です。兄のお下がりの服ばかり着ていますから

良く間違えられますけど女性です・・・・。」


信じてもらおうと葛城はトレーナーを脱いだ。

Tシャツの下には女性らしい膨らみが在る。


「そう・・・フフフッ・・・ハハハ・・・」

ふらりと立ち上がった磯部は部屋を後にした。


磯部のダメージは大きかったが、葛城の心にも強烈なダメージが。


「また男と間違えられた・・・。」


その晩、葛城は枕を濡らしたのであった。



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