△とウインカーブザー①
スーパーカブ50と90って素人には見分けがつきませんよね。
よく見るとテールランプが違うんです。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません
「なぁオッチャン。△って要るん?」
ウインカーブザーの取り付けにやってきた理恵が尋ねた。
今日は一人で来た。速人はバイトだ。
(△?・・・原付2種のマークの事か?)
「義務ではないから表示無しでも大丈夫。何かあったんか?」
※自治体によって違いがあるそうです
「白バイに止められた。」
理恵のゴリラは排気量アップしてある。国道で怖い思いをする事は無いが、
スピード違反で捕まるほど速い訳じゃない。
「何で?一時停止無視でもしたんか?」
「31km/hオーバーで検挙される所やった。2台の白バイに追いかけられた。」
理恵の話から察するに新人研修だろう。先輩とコンビで研修中に
かっ飛んでいく原付を見つけたと思って追いかけたのだろう。
制服姿の小柄な女の子が乗る原付・・・練習にはもってこいだろう。
「練習で捕まえやすいと思ったんやろうな。逃げてもすぐ追いつくし
暴れても二人いれば取り押さえられるもんな。」
ウインカーブザーを取り付けながら答えた。
正確にはオーディプルパイロットと呼ぶらしい。カチカチ鳴るやつだ。
「原付と間違って停めたら2種だった。ナンバーを見て慌てたんやろう。」
署に苦情でも入れたら笑われ者になるな。で、付添いの先輩は叱られる・・と。
ステーを加工してネジで固定。速度警告ユニットのビス穴が空いているのでそこに付ける。
ライトを取り付けて作動確認。ウインカーの点滅回数正常。ブザーの作動正常。
スーパーカブと同じ音が工場に響いた。
「ほい、出来た。2000円や。」ブザーは中古の在庫品だが、
分岐ハーネスとステーは作った。妥当な値段だろう。
「何か片方が『紛らわしい!』って怒りだして怖かった。」
「じゃあ次は△が付く様にするか。今のままやと付けるところが無いしな~。」
理恵の様子がおかしい。
「もう一人が・・・。」
整備不良で違反とでも言い出したのだろう。
しかし、理恵は予想外の事を言い出した。
「イケメンやった・・・また会いたいな。」
顔が赤い。風邪ではなさそうだ。
小猿の様にチョカチョカ落ち着かない理恵だと思っていたが
成長しているようだ。
「違反して会うと免許が汚れるしな~会わん方が良いやろうな。」
代金を支払い理恵は家へ帰った。
理恵は大島サイクルのお得意さん。補助輪を付けていた頃から知っている。
「あの理恵がねぇ・・・。」
コンプレッサーの電源を落とし、エアーと水を抜く。
何か取り残されたような気持になりつつ店を閉めた。
速人はバイトに行っています。
ホームセンターの商品陳列(品出し)をしています。