大島・フューエルインジェクションを勉強する
何やら大島が分厚い本を読んでいます。
何を読んでいるのでしょうか?
バイクの排気ガス規制が厳しくなって随分になる。
最初は吹き抜けガスをキャブレターに送る程度だったが
規制は年々厳しくなり、とうとう原付バイクの世界にも
電子制御式燃料噴射が使われる時代となった。
電子制御式燃料噴射装置。通称インジェクション。
シリンダーへ送り込む混合気を吸入空気量・吸気温・スロットル開度
エンジン回転数・排気ガス濃度をセンサーで計測し、
コンピューターで制御するインジェクターからガソリンを噴射して
作り出す装置だ。
電子のelectronicの頭文字から『E車』とも呼ばれることがあるらしい。
「排気ガスをきれいにするには適切な混合気を確実に燃やす事が大事やな。」
現場の最前線で働く者にとって、日々開発される技術が解らないのは恥ずかしい。
勉強が終わる事は無いのだ。だが、勉強すればするほど解らない事がある。
何で適切な混合気で動くE車がキャブ車より燃費が悪いのだろう?
世の中、万事が上手く行くとは限らないのかもしれない。
今のところ、大島サイクルの顧客の中にインジェクションのバイクは無い。
「込み込み10万で」「なるべく安く」「高校に通学するのに使う」
と言われると自然とベースが安い古めのキャブレター車になってしまうのだ。
生産地が中国に変わり、角目となったインジェクションのカブは結局売ることが無かった。
気が付けば新型スーパーカブが発表された。今度は日本製で丸いライトだ。
すぐに飛びつくとマイナートラブルが多いかもしれない。しばらく様子を見よう。
カタログは置いておかないと・・・。
サービスマニュアルを読むのを止めてコーヒーを淹れる。
「こんな小さいバイクの排気ガスを目くじら立てて取り締まらんでもなぁ。」
思わず口に出してしまう。誰に言うわけでもないのに。
インジェクションの勉強は一旦おいておく事にして
先日引き取って来た郵政カブを修理することにする。
手入れはされているが、普段乗るには色は変えた方が良いだろう。
郵政レッドは目立ちすぎるし紛らわしい。
これでコンビニに寄ったり、自販機で飲み物を買っていたら
本職のカブ使いが謂れの無いクレームに対応することになる。
とりあえず分解・・・やっぱり全塗装は大変だ。
「よっしゃ。やるで。」
大島は気合を入れて郵政カブを分解し始めた。
※この作品はフィクションであり、登場する人物・地名・施設・団体等は架空の存在です。
実在する人物・地名・施設・団体等とは一切関係ありません