部品整理
閉店したバイク店から買い取ってきた段ボール数箱。
整理を手伝う高校生たちの欲しいものはあるのでしょうか?
廃業したバイク店から買い取って来た部品と工具は段ボール数箱になった。
1人で整頓するのも大変だ。そこでいつもの4人組に手伝いを頼んだ。
ところが、来たのは理恵・速人・轟さんと理恵の友達の女の子だった。
「西川絵里です~。よろしくお願いします~。」
なんだかポワ~っとした娘さんだなぁ。癒し系だな。
ぽっちゃりした可愛らしい女の子だ。
「大島です。みんなからは『おっちゃん』て呼ばれてるから
『おっちゃん』て呼んでくれたらええよ。」
「は~い。」
何だか空気が緩む雰囲気の子だ。
綾ちゃんは佐藤君とデートだそうな。青春だねぇ。
「さて、今回は部品整理を頼む。欲しい部品・工具が在ったら
言ってくれ。バイト代の代わりに持って行って良いか言う。」
「昼ご飯は?」
「カレーは作ってあるけど、カレーで良い?」
4人とも反対はしなかったので昼はカレーだ。
段ボール箱を開けると古い未使用部品がたくさん出て来た。
カブ系だが極端に古いものは無いようだ。
ウチの店の在庫でストックしているのと同じ物が多い。
「おじさん。この工具は貰ってよいですか?」
古びた工具は家でも使っている物と同じ。何個も要る物でない。
「おう。その工具なら持って行け。大事にするんやで。」
「おっちゃん。これ何?」
「これは・・・何の部品かな?解らんから除けておこう。」
「おじさ~ん。バイクは無いんですか~。」
絵里ちゃんはバイク本体が欲しいか。
「午後から倉庫のバイクを見てみようか。何が欲しい?」
「荷物を積めるのが良いです~。」
スクーターかカブかな?ほんわかした娘さんやから
可愛らしいバイクが似合いそうだ。
「あれ?箱?郵便局?」
轟さんが開けたのは郵政カブ用のリヤボックス。
「それは買うと高い奴やな。別においておこう。」
人が多いと片付くのが早いかといえばそうでもない。
「これは何ですか?」「これ貰っていい?」とやっていると
案外作業は進まない。賑やかで楽しいのは良いのだが。
それでも午前中に部品は片付いた。
「絵里はコツコツとやるタイプなんだよね。」
理恵。お前ははコツコツやらないタイプだな。
作業を見ていると5人の性格が良く解る。
速人・轟さん・絵里ちゃんはコツコツと作業に手中する慎重派。
理恵は集中力が続かない。活発だがガサツな面がある。
カレーを食べながら午後の事について話す。
「こんなのんびりした絵里がクラッチが上手いなんて不思議。」
轟さんの意見には同意だな。
「へへ~頑張りました~。お父さんに習ったの。」
親父さんもバイクに乗ってるのかと聞くと、
「ハーレー?大きなバイクに乗ってます~。」
ハーレーと言ってもいろいろあるし、もしかすると別のバイクかもしれない。
詳しくない人はアメリカンタイプのバイクは全部ハーレーって思うからね。
「でも、ハーレーで学校には行けんよね。」
ハーレーは大型だからね。高校の通学に使えるのは125㏄まで。
荷物は片付いたので、午後は絵里ちゃんに合うバイクが無いか
倉庫を見せることにした。
「わ~かわいい~。」
倉庫に案内した絵里ちゃんが最初に見たのはモトコンポ。
これは荷物を積む以前に『荷物として運ばれるバイク』だ。
「何これ?郵便局?」
それはこの前仕入れてきた郵政カブ。
「こっちのカブはでっかいカゴだね。荷台も大きい。」
それもカブだけどプレスカブ。新聞配達用だ。
「モンキーとかゴリラは無いの?」
今は無い。中古部品の相場が上がってるから暫くは作らない。
おのおの好きな事を言っているが、肝心な絵里ちゃんはピンと来ないらしい。
ハーレーに乗ってるくらいならバイクには詳しいだろう。
「予算とかの事もあるし。親父さんに聞いてみたらどうや?」
絵里ちゃんは少し考えて
「お父さんと相談してからまた来ます」と答えた。
今日の部品整理で各自が手に入れた物
速人 工具・モンキーの部品・ゴリラの荷台
理恵 カレーライス(10人前)
轟 カブのフロントキャリア・前カゴセット(新品)
絵里 大島サイクルでバイク購入時に何か部品をサービス
フィクションです。登場する人物・団体等は架空の存在であり
実在するものとは無関係です。