表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

魔界な人々

魔王の兄な僕とエリート軍人な彼女

魔界な人々最新作第二弾ですヽ(=´▽`=)ノ

ライ……なんで私を避けるんだ。

真名を教えてくれるほど愛し合った仲なのに。


魔界軍の詰め所に足を運んだ。

この間までここにいるなんて気が付かなかった。


「申し訳ございません、アムリントは特殊任務にてこちらにいません」

吸血鬼族らしい赤い目の軍服の男が頭を下げた。

丁寧に対応されてるけど値踏みされているのがわかる。


あの狼獣人エレールとやりあってるうちに逃げられて以来まったく会えてない愛しい恋人を想ってため息をついた。


僕はイレギオン、翠家の次代当主だけどそれより魔王(イルギス)の兄のほうが有名だろう。


上級人型魔族なのに強大な力を持つイルギス()より数段落ちると言われて育った僕にある日現れた可愛い戦士が恋人のライラリーンなのに……


たしかに翠本家(スイほんけ)次代当主だ。

だけど何の計算もなくぼくを好きになってくれたのは彼女だけだ。


「大罪人オストロフィス……」

最近遭遇した虎耳の恐ろしい男を思い出した。


恐ろしくて僕は戦うライラリーンに何も支援できなかった。

魔力を練ることさえできなかった。


そんななか彼女は美しく闘って………本当になんの役にも立たない。


単なる種馬に彼女はふさわしくない。

それはわかってるけど……諦めきれない。


僕は優秀な次代魔王と言われていた現魔王の弟イルギスより格段落ちる魔力しかない跡取りとして生まれた。


だからあの魔王代替わり戦争の時は翠本家(スイホンケ)の女性の園奥苑(オクゾノ)から出ないように現当主(母上)から言われてた。


僕とほぼ同じ歳の異父弟のイルギスは魔王候補として前線に立ってるのにと反発して表に出た。


そして案の定、イルギスへの人質にしようと襲われて美しい姫戦士に助け出された。


まさか自分の護衛のハーフ竜人のヤファルードの娘だと思わなかったけどね。


「若、娘を追っかけまわすのはやめたほうが……」

護衛のヤファルードが僕を見た。

今朝、翠本家からおってきて若が勝手に抜け出したせいでライに会えなかった〜と騒いだヘタレ竜人と思えないほど鋭い眼差しだ。

「何でだ」

「身分違いです」

俺は娘がかわいいんですとヤファルードが視線を泳がせた。


奥苑の連中の取り巻きがなんか言ったか?


「奥苑の……」

「ご当主様が超乗り気でかえって怖いんです」

若の顔ご当主様そっくりで怖いとヤファルードが廊下の壁に張り付いた。


お前、護衛じゃなかったか? 

本当にこのヘタレ竜人、強いくせになんて弱腰なんだ。


「イルギスのほうが似てるぞ」

「魔王様なんて恐れ多い……」

ブルブルふるえる中年竜人に少しイラッと来た。

ライにそっくりなくせにふるえるな。


その点ライはいつでも凛々しくて素敵だ。


そういえばそのイルギスが帰る前に顔をだせと言ってたな。

別に帰る予定は無いが……ライが我が君と言ってる以上筋を通さないと何か言ってきそうだ。


「魔王陛下に拝謁賜れるが確認してくれ」

「ええ~お会いになるんですかぁ」

ヤファルードがふるえながら聞いたので睨みつけるとはい聞いてきます〜と泣きながらかけていった。


どこに確認をとりにいくつもりなんだ?



あの最強な弟は……いつでも楽しそうに敵を残虐に滅していた。


麗しき魔界の帝王が……


「美味いか? ミゼル」

「お、美味しいです」

麗しき魔王がブルブルふるえる小柄な人型魔族を膝の上の横抱きにして口移しでぶどうを食べさせてる。

「ミゼル様がふるえてますわ」

美しいオレンジ色の髪と金の目の美女が紅茶を飲んだ。


この二人に含めてライに我が君と呼ばれて……何様だ?


魔王様か、羨ましすぎる。

僕だってライを膝の上に抱っこして可愛がりたい。


ふっとイルギスが笑って僕を見た。


「兄上、我が狂竜戦士に逃げられたそうだな」

「逃げられてないよ」

からかうように言われて面白くない僕は紅茶にそえられてたレモンをティースプーンで突っ込んだ。

「軍部には敵意を持たれてるらしいしな」

狂竜戦士を想う面白いやつとか慕う後輩とかになとミゼル魔王妃の頬をなでた。

ライを慕う? 想う?


魔界軍、全滅したいみたいだな。

弱い僕でもそのくらい可能だ。


まず、天才と名高い白家の軍師をこちらに取り込んで……


ジャバジャバとレモンと一緒にティースプーンで紅茶をかき混ぜながら暗い笑みを浮かべた。


ヤファルード、何怯えている?

殺気がだだもれか?


「魔王兄様、ミゼル様が怯えてますわ」

オレンジの髪の美女がさっと扇を前に出した。

そのまま魔王妃のみに最上級のシールドをかけた。


「アールセイル! 」

「魔王様の瘴気もミゼル様に悪いですわ」

アールセイル? がそのまま浮かせてブルブルふるえる魔王妃を自分の座るソファーの横に座らせた。


怖かったですわねミゼル様と魔王妃の頭を撫でる。


どういうことだ? イルギスの側室ではないのか?


そう言えば橙本家(とうほんけ)の令嬢が魔王(イルギス)並の力を持ってると聞いたな。


イルギス、油断しすぎだろう。


「ミゼルは俺の女だ! 」

「ミゼル様は私の大事なお友達ですわ」

イルギスが放った衝撃波を軽くいなしてアールセイル嬢が咲き誇る花のように微笑んだ。


避けられた衝撃波が壁にあたってくぼんでパラパラと壁材が落ちる。


ひいっとヤファルードが壁に張り付いてふるえた。


「この駄竜人」

僕はさげすんだ目でヤファルードを見た。

本当は強いくせに妙に弱腰なのは変わらないか。


だからライがヤファルードの娘って聞いた時すごく驚いた。


あの凛々しくて可愛いライがヘタレなヤファルードの娘なんて信じられない。


繰り広げられる争いを横目に冷めかけてレモン果汁たっぷりのお茶を飲んだ。


がれきになる前に聞いてみるか。


「イルギス、ライは今どこにいるの? 」

飛んできた石をティースプーンで砕いた。

「……紅地方(コウちほう)だ」

相変わらず空気を読まないと青筋たてながらイルギスが答えた。


ティースプーンって武器だったんですね〜

若はなんでも武器にしちゃうんでございます

ブルブルとふるえるミゼルに駄竜人が話してるのをムッとした。


「帰るぞ」

駄竜人の尻尾をつかんでイルギスに礼をするととうなづかれたのでそのまま引きずって部屋を出た。


若〜痛いです〜と涙を浮かべる駄竜人を本気で滅したくなったけど一応ライの父親だから思いとどまった。


紅地方か……たしか淫魔の一族の本拠地だな。

そういえば最近、加虐の貴公子とかいう紅本家の息子が駄蜥蜴と結婚したと赤本家の令嬢が翠本家の奥苑の『私の正妻(次代当主)』候補とやらの面倒くさい令嬢(クソ)と話てたな。


あの赤本家令嬢、チラチラ見てたが……僕はあんなケバい女は好みじゃないよ。



紅地方は歓楽街が立ち並ぶ退廃的な雰囲気の所だ。

黄地方の隣だからか獣人もかなり来てるみたいだ。


もっとも今は昼間で火が消えたみたいに静かだ。


「紅本家に挨拶しておくべきか……」

「さようでございますね」

ヤファルードが眠そうにゆったり歩くほぼ半裸の美女? に目を奪われながら答えた。


奥方にいいつけてやろうか?

奥方はたしか奥苑に入れる分家の末席に位置する出身で最初は僕に遠慮してたくせにいつの間にか母上と仲良くしてた、いい性格の上級人型魔族だ。


ライの強さは奥方由来か?


「魔亀スープって本当に精力剤なんですかね」

ヤファルードが今度は屋台を見てる。

いつか滅してやろう。


紅本家の塔が連なった建物に視線をうつしておもった。


挨拶したい事を告げると赤い薄絹の下がった寝椅子のある居間に案内された。


大事なところだけ隠した半裸の美女がしどけなく座っていたのを立ち上がって出迎えた。


「今日は千客万来ね」

美味しそうな蜥蜴ちゃんに凛々しい半竜軍人さんに麗しい魔王兄様なんて……

チロリとピンクの舌で唇をなめて紅本家の女当主が蠱惑の笑みを浮かべた。


スケスケエロエロな格好にヤファルードがなんか股を押さえた。


色気の塊といえるが……好みではない。

凛々しい半竜軍人はライとして……美味しそうな蜥蜴ちゃんってなんだ?


「蜥蜴ちゃん……」

「蜥蜴ちゃんってなんですかね? 」

僕とヤファルードは顔を見合わせた。


うふふと紅本家当主が笑った、次の瞬間轟音が鳴り響いた。


カミナリ……カミナリか?


大きな窓から街の屋台街のあたりがなぜが広場のように魔族のいない空間ができていて中心に虎の獣人がパチパチする大きな雷球を掲げているのが見える。


「あらあら、何事かしら」

紅家当主が蠱惑的(コワクテキ)な笑みを浮かべた。


雷球に恐ろしい魔力が帯びているのが見えた。


その雷球に赤い炎がぶつかった。

地面に近い所から出ているようだ。


小さい小さい何かだ。

落とされそうになる雷球に必死で吹く炎の火力が上がり蒼くなって雷球を包んでいる。


あそこに何か超上級炎系魔族がいる。


「若〜怖いから覗くのやめましょうよ〜」

ヘタレ半竜人(ヤファルード)が薄絹がさがる居間の柱の影で振るえた。


それを冷たい眼差しでいちべつした後、視線を戻すと炎が雷球に押されて下に下がっていくのが見えた。


紅地方の地方軍はどうしてる? すぐに動くべき次代当主は?

僕は拳を握った。


このままでは紅地方は壊滅する。


「失礼しますわ」

紅本家当主の声がして目を向けるとそこに影も形もなかった。


当主は……抑えに行くようだ。


窓の外に目を戻すと雷球に炎が圧倒されそうだ。

さてどうする? この場で私が滅すれば紅地方に禍根が残ることになるが……


たしか大罪人は魔王陛下(イルギス)の魔王争いのときの最大のライバルだったやつの身内だったな。


力は魔王陛下以上とも密かに語られたやつの双子の兄の滅ざまに大罪人が滅してやると捨て台詞を吐いて逃亡……各地の破壊活動か……



窓の外で何か変わったようだ、当主が出たか?


雷球に水鉄砲が直撃して消滅する。


緑の髪の……凛々しい竜人な軍人が屋根から飛び降りる様子が目に映った。


ラ……ライ、ライラリーン。

僕は駆け出した。


「わ、若〜どこに? 」

ヤファルードがさけんだ。

かまっていられないライのところに行かなくては。


滅するならライをこの腕に抱きしめていきたい。


高い塔の部屋を駆け下りる。

ライなら飛び降りるかもしれないけど僕はそこまで身体能力はないし他地方の本家(領主の館)で転移の間以外で転移するほど命知らずじゃない。


若〜とうるさいヤファルードを後ろに従えて慌ただしい紅本家(領主の館)の転移の間についた。


「あの、お客様危のうございます」

転移の間付の魔族をいちべつで睨みつけて黙らせる。

「若〜」

転移の瞬間ヘタレ半竜人がついてきたのに気がついたがかまっていられない。


紅本家の前もざわついていた。


「若、危ないです」

「この状況でどこにいても同じだ」

僕は止めようと肩を掴んで止めようとしたヘタレ半竜人を振り切って足早に逃げる魔族の群れを逆走しだした。


向こうで大鷲と雷獣が争ってるところまで行けばきっと愛しいライにあえる。



地上の土壁に阻まれて大罪人は巨体を動かしづらいらしい。


「ハァ〜ッ」

宙に舞ったライが上段から剣を振り下ろした。

大罪人の前足から血が吹き出る。

水流を操り宙にホバークラフトした水系魔族らしい男軍人がトライデント(三叉槍)で大罪人を突くのは避けられた。

大罪人が爪からカミナリをほとぼらせる。


地上で土壁を立ち上げている軍人たちにあたって一瞬壁が崩壊した。


滅してはいないようでしびれるーと土系魔族の本性を少々出しながら起き上がった。


雷系に対して土系はつよいからな。


「すぐに再構築を!! 」

丸龍軍師が叫んだ。


丸龍軍師の鬼とつぶやきながら土系魔族軍人たちが壁を立ち上げる。

その間に大罪人が上に上がって行く様子があったのを水系魔族と大鷲が攻撃で抑える。


ライは建物の屋根を蹴って剣で尻尾を狙った。


「外したか」

「ライ武官、捕獲です〜」

丸龍軍師が網を早く〜と叫んだ。


「あの状態で捕獲……娘には無理ですよ」

黙っていたヤファルードがギラギラした目で見上げた。


竜人の戦闘狂(バトルジャンキー)の血が疼くらしい。


「お前ならやれるか? 」

「いいえ……娘以上にやばいので……さっさと退避しましょう」

ヤファルードが視線を戦いからそらした。


なるほど……いつものヘタレは戦闘狂を発症させて周りが見られなくなるのを防ぐためか。



土壁が立ち上がり雷獣の動きを封じ込めはじめて暴れた雷獣に壁を崩壊させかけた。


転移陣が地面に展開して見覚えある魔族が現れた。

「防御」

金属で作った上下別れた下着のような鎧と薄絹をまとった紅本家当主が杖を掲げた。


土壁の崩壊が止まる。

土系魔族が当主に気を取られたすきに雷獣が壁から逃れようとする。


「翠の色を持つものよ捕らえよ」

僕は地面に手のひらを向け力を放った。


太い蔦が何本も伸びて大罪人の後ろ足に絡みついた。


ぐぎゃーと大罪人が叫んだ。

テメーって聞こえた。


雷獣が僕に爪を振り上げる。

カミナリが落ちるのがスローモーションに見えた。


これで滅するのか……せめてライを目に焼き付けて……


「往生際が悪い」

緑の鱗がある腕が剣を振るった。


カミナリが打ち返された?


自分の攻撃に当たりひるんだ大罪人に大鷲が網を巻きつけた。

そのまま爪で掴んで連行しだした。


「ぐぎゃーぐぎゃーぐぎゃー」

テメーら良くもやりやがったな〜と大罪人はカミナリを放つも網を通さないようだ。

「絶縁体の網効きましたね」

「さすが、丸龍軍師……鬼だけどよ」

土系魔族の軍人の一人が晴れ晴れと笑う丸龍軍師に答えた。


丸ちゃんは鬼族じゃねぇと水系魔族が水から飛び降りて擁護してる。


僕の目の前には緑のクオーター竜人がびっくりしている。


「イレギオン、なんでここに」

「愛しい君を追って」

僕は満面の笑みを浮かべた。


なんて危ないことをするんだとライが視線をそらした。

後から抱きしめると血の匂いがした。


「僕は君がいないと生きていけない、結婚しよう」

「でも、私は血まみれの軍人で」

ライがふるえたのがわかった。

「君が血まみれでもかまわない、愛してる」

ライの耳を喰むと赤くなった。

「でも……」

「でもはなし」

くるりとまわすとライは涙ぐんでいる、その甘露をなめた。

「ライ、愛してる、結婚してくれるよね」

僕が手のひらに口づけるとライは微かにうなづいた。


後ろでヘタレ半竜人がわーん当主様と親戚怖いーと叫んでるのとか数人の軍人どもからの殺気を感じたけど今の僕には関係ない。


僕はライを抱きしめてキスした。


わーおめでとうございますと言う能天気な丸龍軍師の声を聞きながら翠家の老害どもや正妻候補とやらをどう排除しようかとライ……ライラリーンには見せられない暗い笑みを内心浮かべながら思った。


やっぱり無理ですよとライが言い出す前になんとかしないとね。

そう思いながらライにもう一度口付けた。


ライ、ライラリーン、愛してる……絶対に逃してあげない。

ずっと一緒にいようね。


でもその時僕は気が付かなかった。

ライが魔界軍人をやめられないことを……ほら魔王陛下直属の武官だし。

普段は平武官だけどさ。


遠距離結婚って……遠距離結婚って……イルギス(嫁の上司)のバカ〜。


まあ、生き生き軍人してるライも大好きだから譲歩するけどね。

どんなときでもライラリーン愛してるよ。

読んでいただきありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ