『 フリーデン地下攻略の裏で 』
クラン〈女子高〉メンバーは、まず手榴弾を店内へ投げ込み、反応を窺いながら慎重に店内へ進み制圧していた。だが、〔ドラゴンロアー〕を構えたムサシは、撃鉄を起こし、移動しながら射撃を行なうのに適したウィーバー・スタンスで、音もなく植物が繁茂する店内を進んで行く。
その様子を後ろから見詰めているのは『もえたん』こと『鳴沢 萌』率いる鳴沢小隊の面々。
もえたんは、一応両手に2丁の機関拳銃を保持していているものの手出しをするつもりは皆無らしく、他の全てを意識から排除してムサシの一挙手一投足を見逃さないよう注視している。
もえたんの弟子で、隊長を『コーチ』と呼ぶ鳴沢小隊の副長『稲森 美穂』は、ブルマ着用の体操服姿。両手に保持しているの2丁の自動式拳銃。
同じくもえたんの弟子で隊長を『コーチ』と呼ぶ『宮司 友里』は、スパッツ着用の体操服姿で、得物は2丁の短機関銃。
学園指定の競泳用水着に二の腕まであるグローブ、オーバーニーソックス、両手足にプロテクター、胸にアーチェリー用の胸当てを装備している『清水 忍』の姿はくノ一を彷彿とさせ、矢筒を背負い、小型ながら強力な機械弓に矢を番えている。
制服のブラウスとロングスカートに、カウボーイハット、ウエスタンブーツ、腰には回転弾倉式拳銃が納められたガンベルトと西部劇に登場しそうな風体の『轟 響子』は、いつでも早抜きからの射撃ができる体勢を維持している。
夏服はまだ良いとしても、この熱帯雨林のような湿度の中で、円錐形のつば広帽子を被り、内側に多種多様の手榴弾を無数に隠しているマントを脱ごうとしない魔女っ子爆弾魔『花菱 可奈』は、熱中症が懸念される真っ赤な顔でフラフラしている。
この個性的なメンバーと共にいると、夏服の上にマガジン・ポーチなどを取り付けたタクティカル・ロードベアリング・ベスト、両手足にプロテクターという標準的な装備で多目的突撃銃を構えている通信要員の『加藤 優希』が浮いて見えた。
「…………」
ムサシは右手で〔ドラゴンロアー〕を構えたまま左手を挙げ、そんな背後の見学者達に戦闘を開始する旨を知らせた。そして、【気功】によって精神を集中させつつ意識を拡散させる事で【心眼】の知覚範囲を拡大し、捉えた気配に向かって銃口を向け、引金を絞る。
――ゴォオォンッ!!!!
凄まじい銃声が轟き、衝撃波が波紋状に広がり、フラフラしていた花菱可奈が突き飛ばされたかのように尻餅をついた。他の面々も、ひっ、と思わず悲鳴を漏らして躰を強張らせ、怯えたように腰が引けている。
まぁ、無理もない。何故なら、〔ドラゴンロアー〕の銃声には、ドラゴンの咆吼と同じく【威圧】の効果があり、一定範囲内の敵味方を問わず萎縮――状態異常【恐怖】に陥れて数秒間行動不能にさせるからだ。
スッ、と銃口を次の標的に向けて発砲、スッ、と銃口を次の標的に向けて発砲、スッ、と銃口を次の標的に向けて発砲……6発の弾薬を撃ち尽くすと、迅速にシリンダーを振り出して排莢、空の薬莢は腰の前に回した道具鞄の中の闇に消え、〔クイックローダー〕を用いて再装填。また、スッ、と銃口を次の標的に向けて発砲、スッ、と銃口を次の標的に向けて発砲……特に奇抜な行動をするでもなく、ただただ淡々と洗練された基本動作を繰り返した。
発射され音速超過した13ミリ通常弾が、店内に散在するかつてテーブルだったもの、シートだったもの、繁茂する植物、間仕切りの壁などを薄紙のように貫通し、その奥に身を潜めていたモンスターを確実に仕留めていく。
そして、ムサシはこれまで通り瞬時にリロードし、しかし、発砲しなかった。故に、後ろで見学していた鳴沢小隊の面々は終わったのだと思った――が、
「――キィイィッ!」
物陰から、カンガルーネズミのように発達した後ろ足と額の鋭い一本角が特徴の大型鼠――『ホーンラット』が飛び出してきた。
バレーボール大の毛玉がバウンドするように跳ね回り、日本代表選手男子が繰り出したジャンプサーブのような速度でムサシに突撃する。
ムサシはそれを、ふらり、とよろめくように左へ躱しつつ銃を横に寝かせ――ホーンラットが通過する軌道上に、銃把から伸びる鉈の如き肉厚の刀身に鋭利な刃を備えた優美な曲線を持つ両刃のファイティングナイフを残す。
結果、ホーンラットは自ら〝気〟を通された〔ドラゴンロアー〕のブレードに飛び込む形となり、ムサシが振り抜くまでもなく、自らの突進力のみで上下に両断された。
〔ドラゴンロアー〕の説明欄にはこうある。
『暴龍の猛威が宿る銃。咆吼に臆さず、牙から逃れたとしても、尾が容赦なく薙ぎ払う』と。
ブレードは、爪ではなく尾らしい。つまり、銃口や照星の辺りが頭で銃身が首、シリンダーが胴で、台尻から伸びるブレードを尾に見立てているのだろう。
――それはさておき。
「ねぇねぇお兄ちゃん! 何でそこにモンスターがいるって分かったの?」
戦闘終了を告げた後、気配だけではなく目視でモンスターの撃破を確認して回っていると、もえたんが普段通り身振り手振りを交えながらも、瞳に真剣な光を宿して訊いてきた。
「いわゆるシステム外スキルだ」
簡潔に応えて確認作業に戻ると、もっと詳しくぅ~っ、ともえたんが陣羽織を引っ張ってねだるので、
「俺はこの3年間の修行で、武の一つの到達点である心眼を開き、みんなも内に秘めているMP――〝気〟を操る術を会得した。この【心眼】と【気功】を併用し、精神を集中して俺という個を維持しつつ意識を拡散させれば、拡散させた意識の内側に存在する全を把握する事ができる」
それに、【ステータス】の補正なしに〔ドラゴンロアー〕を撃てるのは、【気功】で身体を強化し、【重気功】で加重しているからだ。そうでなければ、このクソ重い銃を小太刀のように振るうなど不可能であり、射撃の反動にも耐えられない。
その話に興味を持ったのはもえたんだけではなく、ムサシはまるでカルガモの親子のように鳴沢小隊の面々を引き連れて確認作業を続けつつ、子ガモ達の質問に回答した。
店舗内に存在した全モンスターの撃破を確認すると店の外へ。ちなみに、着弾と貫通の衝撃で対象は見るも無残に砕け散っていたため何も剥ぎ取る事ができず、戦利品は一つも得られなかった。
まだ質問があるという鳴沢小隊の面々に、また後で、と約束し、2番目の風見小隊を引き連れて次の店へ。その次は久遠小隊。その次は佐々木小隊。
ムサシの戦い振りを見た小隊はどこも似た様な反応をして同じ様な質問をし、ムサシは鳴沢小隊の面々としたのと同じ約束を彼女達とも交わした。
そして、一通り見学が終了し、通路で集合すると、待ってましたと言わんばかりに質問がある〈女子高〉の生徒達がムサシの許に押し寄せ――
「『また後で』っていうのは、『このエリアを制圧した後で』って事だ」
指南役がしれっとそんな事を言うと、生徒達から盛大に不服の声が上がった。が、ムサシは全く気にせず、
「じゃあ、みんなは見学してて良いぞ」
〈女子高〉一同は、そう言って〔ドラゴンロアー〕を携え、本当に一人でこのエリアを制圧してしまいそうな様子のムサシを慌てて引き止めた。
ムサシの戦い方は、頭に超が付く高レベルで行なわれていたというだけで基本に忠実。故に、【体内霊力制御】を会得しておらず、【心眼】を開いていない〈女子高〉メンバーにとってあまり参考にはならなかった。
しかし、遥かな高みにあるムサシの姿を、目指すべき場所を見た彼女達は、各々が、いずれ私も必ず……ッ! と奮起し、それに伴って全体としての士気も高揚した。
その良い状態を維持したまま戦闘と休憩を繰り返した結果、予定していたよりも早くこのエリアの制圧が完了したので本日はここまでとし、中指に嵌めていた指環〔アタックリング・聖〕をはずして〔ドラゴンロアー〕と共に道具鞄にしまい、約束通り質問を受け付ける。
そして、皆に〔光石〕を配り、【体内霊力制御】を会得するための修行方法を伝授していると、
『ムぅ~~サぁ~~シぃ~~さぁ~~~~んッ!!』
トンネル攻略を担当していた〈エルミタージュ武術館〉の主要メンバーが、ドドドドド……ッ!! と土石流のような勢いで押し寄せ、〈女子高〉メンバーを押し退けるようにしてムサシを取り囲んだ。
「何でミアさんあんなに強いのッ!?」「あの子達メチャクチャ強くなってるんですけどッ!?」「修行って何やったらたった一日であんなに強くなれるんですかッ!?」「私も弟子にして下さいッ!!」「私はお嫁さんにして下さいッ!!」「あんたどさくさに紛れて何言ってんのッ!?」……などなど。
そこへ、ちょっと邪魔しないでよッ!! と修行方法を伝授してもらっていた〈女子高〉メンバーが加わって壮絶な言い争いに発展し……
――パァアァンッ!!
強烈な快音が喧騒を切り裂くように響き渡り、ビクンッ、と躰を竦ませて言葉を飲み込んだ乙女らの視線が、音源――拍手したまま合掌しているムサシに集まった。
「俺は、今、大切な話をしていたんだ。――聴かせてくれ、邪魔をした理由を」
不思議なほどよく徹る抑揚なく紡がれた穏やかな声音に、押し寄せた〈エルミタージュ武術館〉メンバーは恐れ慄き、〈女子高〉メンバーも震え上がった。
そこへ、ミア、巴、静、レナが遅れてやってきて、怯えている一同を見て状況を察し、ムサシに事情を説明する。
それによると、トンネル攻略を進めていたところ、エレフセーリア~フリーデン間のトンネルにも出現した自律式汎用作業列車と遭遇した。以前は、万端に準備を整えた二つのクランの主力が協力して辛くも倒したが、今回は他が随行するメタルの相手をしている間に、ほぼミア、巴、静の3人だけで倒してしまった。そして、自律式汎用作業列車がいるならラードーンもいる可能性があるからとすぐにトンネルから退避し、安全が確保されているエリアまで戻った所で、何故そんなに強くなっているのかと問われ、巴が自慢げに、ムサシ殿に鍛えて頂いたからですッ! と答えた。その結果が、今の騒動らしい。
「なんだ。こちでも今ちょうど修行方法の伝授をしてたところだったんだ」
ムサシの雰囲気が元に戻った事で、一同は意図せず一斉に安堵の息をつき、そんな周りの様子に気付いて見回し、目が合った相手と共に苦笑する。その場の全員に妙な一体感が生まれていた。
――それはさておき。
〈エルミタージュ武術館〉メンバーに〔光石〕を配った後、そちらはミアと姉妹に任せ、ムサシは〈女子高〉メンバーとしていた話を再開する。
内容はミア達にしたのとほぼ同じ。だが、〔仙丹〕は使わず、その存在を秘匿し、別の方法を教える。
それは何故かというと、ミアにそうしたほうがいいと勧められたからだった。
服用するだけで〝気〟を知覚し操れるようになると知れば、間違いなく全ての聖痕持ちが欲しがる。いや、大金を出してでも手に入れようとする者がいると知れば、それ以外の者達も求めるはずだ。
〔仙丹〕の存在を知り、しかも、作れるのがムサシだけだとなれば、欲する者が大挙して押し寄せるであろう事は火を見るより明らかであり、その中には目的のためなら手段を選ばない性質の悪い輩もいる事だろう。
つまり、もの凄く面倒臭い事になる。
始めは特に隠そうとは思っていなかったムサシだったが、ミアの話を聞いて考えを改めた。
それに、能力【調査】・技術【鑑定】をアイテムに使うと、その情報と同時に売値・買値の相場も表示される。だが、〔仙丹〕を【鑑定】すると、売値・買値が表示されない。それはつまり、《エターナル・スフィア》であれば、売買や譲渡が不可のアイテムであるという事。そして、この世界でもそうであるべきアイテムだという事なのだろう。
――何はともあれ。
一通りの事を伝え終えると、後はそれぞれの努力次第だ、と一言添えて解散し、万屋〈七宝〉でミアと夕食をとった後には〔壺公の壺〕の中の工房へと足を運び、今日消費した分の弾薬を製作し補充するなどして明日に備えた。
そして、翌日。
昨日と同じ時間と場所で、パーティメンバーの巴、静、レナと合流すると、
「冒険者ギルドからの伝言?」
「はい。わざわざちゃんと書状をムサシ殿に渡したかどうかを確認にきて」
「ちゃんと渡したと伝えると、絶対にフリーデンから出ないでほしい、と伝えるよう頼まれました」
「あっ、〈女子高〉もです。それで、応対した人が『しばらくは地下の攻略にかかりきりになると思います』って言ったらしいんですけど、それを聞いたギルドの人は安心したように胸を撫で下ろしてた、って言ってました」
ムサシは、なんだそりゃ? と首を傾げ……まぁいいか、と気にしない事にした。
応対した〈女子高〉メンバーの予想よりも攻略は遥かに進んでおり、駅構内の制圧はほぼ完了している。あとは、ゲーム時代の工場や研究所などのような敵が出現する射出口はないか、天井裏や床下の空間の有無、それらや通風孔に危険な生物が潜んでいないか、他の危険はないか、と徹底的に調査したり、例のエリアに繁茂する植物を除去したりといった大掃除や点検、補修を残すのみ。
そんな訳で、後は皆に任せ、本日のムサシはミア達パーティメンバーと、トンネル攻略を任されている〈エルミタージュ武術館〉メンバーに同行しているのだが……
(ん~……、どうにも居心地が悪いな)
女の中に男一人という状況は昨日と変わらないのだが、今日特にそう感じるのは、肌色が多かったり、露骨なまでに躰の線が強調されていたりするからだろう。
《エターナル・スフィア》での場合、【ステータス】の耐久値は、キャラクター自身の防御力を示すものではなく、最初から修得済みの技術【守護障壁】の耐久力を表し、防具の性能と【ステータス】の耐久値、その合計がキャラクターの防御力となる。
ビキニアーマーやボンデージなど、一見防御力などなさそうな装備は、その見た目通り防御性能は低い。だが、『CON+500』や『CON+30%』などの能力が付与されているため、合計値である防御力は全身鎧に劣らない。
それを装備しているという事は、相応の実力を有している証――とは言え、〈エルミタージュ武術館〉が揃いも揃ってビキニアーマーやボンデージを装備しているのには何か訳がありそうな気がする。だが、
(……まぁいいか)
それは今考えるべき事ではない。
ムサシ、ミア、レナを加え、食客である巴と静を含む〈エルミタージュ武術館〉一行はトンネルを進む。
想定外の事態が発生した場合に備えてムサシ達は即応できるよう中程に就き、先頭を行くのは、実力のみならずルックスとスタイルもまた群を抜いている個性豊かな8人。
パーティリーダーの『ライア』は妖魅の獅子族。物干し竿の先にドラム缶を付けたような巨大な戦鎚を肩に担ぎ、ビキニアーマー装備でパレオのように獅子の皮を巻いている。
長剣と大盾を装備した真人族の上級職【聖騎師】で翠眼金髪縦ロールの美少女、『シャルルロッテ』の装備一式は、金属装甲が多用されていて比較的露出が少なく、ビキニアーマー、指先から二の腕までを覆う籠手、爪先から太腿までを包む脚甲は、純白を基調として黄金で美麗に彩られている。
メイス型の短杖を手にしている精霊族ウンディーネの名は『ラフィール』。彼女のビキニアーマーを含む装備一式は、回復役らしく神官を彷彿とさせるものの、それを貫頭衣と呼んで良いのか、前後に垂れた布の幅が短いためエロさを際立たせているだけで服としての役目を果たしていない。
魔獣の素材を用いていると思しき大型の弓を手にした精霊族スキア、黒髪紫瞳の『刃心の蘭』が装備しているベルトを多用したボンデージは、くの一を彷彿とさせるデザインで、肌の露出こそ少ないものの躰の線が露わになっている。
この4人が、巴、静と共にラードーンを足止めして仲間を逃がし、その後に救出された生還したメンバー。
〈女子高〉では基本的にパーティメンバーは固定だったが、〈エルミタージュ武術館〉では状況に応じてクラン内での入れ替えは珍しくないようで、抜けた御前姉妹の替わりに通信要員を含む4名が加わっている。
爪で引き裂くタイプではなく殴打するするタイプの甲拳とビキニアーマーを装備している妖魅の豹族のリタと、ボンデージ装備で刺突・斬撃共に有効な大型の穂先を持つ槍を携えている妖魅の狼族のサローネは、既にムサシと顔見知り。
双剣を操る真人族の上級職【魔剣師】、銀髪碧眼の『キルシェ』は、黒い極薄のアンダーアーマーの上に白銀のビキニアーマーを装着し、攻撃を受け流すために洗練された形状の甲拳と、薄く装甲が施されたロングブーツを装備している。
真人族の上級職【魔女】、紫の髪と瞳の『アラディア』は、ランジェリーのようなボンデージ、ロンググローブ、ロングブーツ、円錐形のつば広帽子とマントを身に付け、指揮杖を手にしている。
彼女達が際立っているというだけで、〈エルミタージュ武術館〉に所属しているメンバーは、美女・美少女と呼んで差し支えない人材が多い。そして、攻略の最前線にいる彼女達は当然、相応の実力を備えた者達で、皆が皆、揃いも揃ってビキニアーマーやボンデージなど、優秀だが羞恥心が邪魔をして敬遠しがちな装備を身に纏っている。
そんな女性達に囲まれているムサシは、
(なんか……有難味がないな)
この状況に慣れ、見慣れてもきて、流石に興奮が醒めていくのを感じていた。
だがしかし、それでも見飽きる事がないのは、やはり男だからなのか……
ビキニアーマーやボンデージは、激しく動いた際におっぱいがぶるんぶるん揺れる事で生じる胸の痛みや内出血、靭帯断裂を防ぐため、しっかり固定して綺麗な形を維持するようにできている。故に、大きくても小さくても揺れない。
そんな動きがないものよりも動きがあるものに目が引き寄せられてしまうのは必然で……
「――先輩ッ! どこ見てるんですかッ!?」
ムサシを睨み、周りに気付かれないよう声を潜めるという配慮をしつつも鋭く叱責するミア。それは、前を行く女性達の交互に前後する、むちっ、とした太腿や、連動してふりふりと揺れる、ぷりんっ、としたお尻をマジマジと見詰めるという破廉恥な行為を責めるものだったのだが、
「しっぽ」
平然とそう返されたミアは意表を衝かれて言葉に詰まり、前を行く妖魅族達のフサフサやもふもふの尻尾を眺めて……
「あらぬ誤解を招く恐れがあるので、程々にして下さい」
ついつい自分もその動きを目で追ってしまったミアは溜飲を下げ、そう注意をされたムサシは、うん、と素直に頷く。そして、内心で、ほっ、と胸を撫で下ろした。
もちろん、それは嘘じゃない。尻尾を見ていると一緒に魅力的なお尻や太腿が視界に入ってしまうのは不可抗力だ。
――何はともあれ。
トンネル攻略の進み具合が遅々としていたのは、自律式汎用作業列車やラードーンのようなボス級の敵の出現に備え、慎重に慎重を重ねて進んでいたから。
だが、前者は既に撃破した上、今はラードーンを鎧袖一触で完封したムサシが共にいる。何が出てきても怖くない。という事で、緊張感は維持しつつ、一定の間隔で存在している緊急避難スペースの調査もさっさと済ませてガンガン進み……結果、その日の昼頃にはリベルタースの駅に到着した。
リベルタースにも都市結界が存在するため、その影響下に入った所からまずムサシが単独で先行し、【気功】を駆使した索敵と高速移動で駅構内を縦横無尽に駆け巡り、見敵必殺、モンスターを掃討する。はっきり言ってムサシ一人のほうが制圧速度は圧倒的に速く、一行が追いついた時には既に終わっていた。
そして、一行はぞろぞろと地上を目指す。
そこで想像を絶する事態が待ち構えていようとは思いもせずに……




