プロローグ
「さーて今日も国民のご機嫌取りだ」
一人の男が画面に向かって呟く。
自分の名は霧島陽という。自分のやるゲームは、元首となって国を引っ張るゲーム。
と言っても最近は同じ作業ゲーとなっている。なぜなら、国王3代で安定した国となり、これで工業力と軍事力が整えば大国の一角は確定である。
だが、王国の東部、そこに隣接する国と共同で開発して、どんどん豊かになっていく国を見ていくのは楽しいものであり、自分の理想の形となっていく。
だが、そんな慢心がいけなかった。
[隣国が連合を作り戦争を仕掛けました!戦闘準備してくだい]
「?!!!」
見慣れないテロップ。それは間違いなく戦争の開始の合図。しかも敵は・・・
「なんで大陸全部だ?!」
大陸東部全域が連合軍で襲ってきた。目的はもちろん熟達した工業地帯、ここは自分たちの生命線であり、絶対必要なもの、しかし軍事力がない・・・
「おいおいおい・・・ウソだろ」
嘘ではない現実、そしてこのゲームはリセットもロードも効かない。自動セーブで、その一つのデータしか作れない。
「おい・・・やめろ」
[東部で戦闘が起きてます]
「やめろって」
[戦死者が出ています、国民感情が悪化しています]
「どうすりゃいいんだよっ!!」
[デルリン工業地帯が陥落しました]
[第4歩兵師団が壊滅しました]
[王国領土20%陥落しました]
[降伏以外道はありません]
[降伏します]
[国王に対して不信感から政治モードに移行できません]
[経済が停滞しています]
[敗戦賠償により、デルリン工業地帯以下211万平方㎞割譲しました]
[あなたの負けです]
霧島が気付いた時には朝になっていた・・・そして国は・・・ゲーム時間160年、リアル3年かけた国は崩壊した・・・。わずか一夜で・・・
「あ・・・ああ・・あああ」
自分の中で何かが蠢く、それはゲームに対しても起きる負の感情・・・
「ああ・・・ふふ・・・ふふふ・・・そうか、そうか、そんなに痛い目見たいか、そうか、てめえら」
自分の中で何かが壊れた。連合に対しての復讐という、それ以上の狂気を、現実で起こしてならない全てをぶつけたい思いが・・・破裂する。
「まとめて、ぶっ潰す」
その一言で彼はキーボードをたたきだす。
彼がやるのは、国の元首の最後にして禁断の合法チート、「独裁」
そして彼は偶然が重なり、そのチートが開放される。
だが彼は知らない、このゲームは、別の世界に繋がっているのを・・・。