15、行動。
「えっ?」
それは、柚とロージア、2人同時だっただろうか?
「まあ。 ただ、条件があるけどね。」
それを聞いたロージアは、なんだ。と、ややうんざりした顔をした。
柚は柚で、また不安を顔に張り付けている。
そんな2人を見ると、ジルは苦笑して、
「ユズちゃんに今から家に来てもらいたいだけ。」
ジルがそう言うと、ロージアが怖い形相で、
「またかっ! 結局それなんだなっ。」
「まあ、落ち着け落ち着けって。 まだ話には続きがある。 さっきユズちゃんが言っていた加工を確認してもらいたいだけだよ。 さすがにここでは加工できないから、家で確認してもらいたいだけだ。 ……ちゃんと、暗くなる前にオレが家に帰れるようにユズちゃんをここに送り届けるからさあ。」
そう言って、ジルがロージアの顔を見ると、なんだかまだ言いたそうにもじもじとしている。
「ねえロージ。 オレってそんなに信用ならなかったか?」
ジルのその言葉に、ロージアもさすがに申し訳なく感じたのか、
「……いや。 ユズは、どうする?」
振られた柚は、2人の顔を確認すると、
「うん。 ……行ってくる。」
その返事に、ロージアの表情には、少しの陰りが帯びた。
よしっ。そう言って、ジルはポンと、手を叩くと、
「それじゃあすぐに行動だ。 時間ないし、ユズちゃん。今から家へ行くよ。 ロージ。ロージは仕事しなくちゃいけないだろ? 悪いけどランチはひとりでね。」
そうは問う物の、それは、ロージアに口を挟む隙を与えてはくれなかった。
ジルは、広げたカーボンをすべて荷物に戻すと、それをふたたび担いだ。
「さあ、行こっか、ユズちゃん。」
そう言って、ジルは柚に片手を差し出した。
柚がその手を繋ぐと、
「うん。」
そうして、ロージアを振り返ると、
「行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。」
騒がしいジルは、嵐のように去って行ってしまった。
今は少し遠くに、長い髪を揺らしながら、背の高いジルと、小柄で、遠くから見てもそのかわいらしさがわかるユズが、楽しそうに遠ざかっていくのを、見つめることしかロージアには出来なかった。