14、小さな岐路。
どうすればいいのだろう? なんて答えれば……。
カーボンは確かに、柚にとって必要なのだ。
けれど。
柚は元の世界で、自分の意見をはっきり言えない子だった。
それがきっかけで胸の奥底に刺さった小さな棘は、今も柚の胸の奥底に、小さいけれど、大きな傷跡と共に残っている。
ロージアには出会ったばかりで、まだ自分の気持ちとかも良くわかっていない。
けれど、ここで別れてしまうことが、また同じことの繰り返しの様な気がしてならない。
とは思う一方、ロージアもジルも、違う世界の住人で、柚自身が、いつか元の世界に戻るかもしれない。
戻れるなら戻りたいと思っていて、そうしたら、きっと今悩んでることなんて無意味なこと。
正直、どうしたらいいのか、よくわからなかった。
柚は、ジルを真っ直ぐ見つめると、首を大きく、何度も横に振った。
「カーボンは、いらない。 私、助けてくれたロージアに、まだお礼できてない。まったくの他人の私に、ロージアは本当に親身になって話を聞いてくれたし、相談にも乗って、意見をくれた。だから、ここにいたいの。 ……それに、王都に行けば、カーボンの代わりになるものもあるかもしれないし、私ゆっくり探すから。」
柚のその気持ちを聞いて、ジルはククッと笑った。横目で確かめたロージアの顔がほっとしている気がして、なんだか胸の奥がこそばゆい。
「わかったよ、ユズちゃん。」
目の前の柚は、泣きそうだった。
「カーボンは、分けてあげる。」
ジルはそう言うと、にっこり笑った。