12、ロージアの提案。
落ち込む柚を見ながら、ロージアはしばらく考えていたが、やがて
「ユズ。 それ自分で作ってみたら?」
「えっ?」
自分で作る。
それは、柚にとって、考えも浮かばなかったことだった。
「これさあ、真っ黒だよね。」
ロージアはそう言うと、柚の手から、つけまつ毛を受け取り、部屋の光にかざした。
「ジルのカーボン。 あれ使わせて貰ったらどうだろう? きっとジルも、ユズのお願いなら快く分けてくれると思うんだ。」
「ジルのカーボン?」
そもそもカーボンがどんなものかわからない柚には、それでつけまつ毛を作るなど、微塵もピンとこなかった。
「炭素繊維。ダイヤモンドとかも炭素原子からできてるんだ。元素は同じでも全く違うものだけどね。もっとも、炭素繊維はアルハラン独自に研究し、作り上げたもので、他の国では作れないから知らないかなあ? ユズのいた世界にはあった?」
聞かれても柚にはちんぷんかんぷんだった。
それを見ればわかるのだろうか? それも疑わしい。
柚が困っていると、ロージアは、
「ジルはそれをいろいろなものに加工しているんだよ。前に見せてもらったことがあるんだけど、紐みたいなのも、糸みたいなのも、シート状のもあるんだ。それをまるで錬金術師のようにいろいろなものに変える。たぶん、それを作るには、糸みたいなのが使えると思うんだ。」
そうなのかもしれない。けれど、柚にはロージアの話しが難しくてついていけていなかった。
柚が悩んでいると、柚のまつ毛にロージアは手を伸ばし、くるりとカールしたまつ毛に指先で触れた。
「ユズは、このままでもかわいいと思うけど。」
ただ、そう言ってしまったロージアも無意識で、言われた柚はそれをまともに聞いてしまい、2人してしばらく赤面し固まったのだった。
カーボン(炭素繊維)の説明が簡素です。
地球にあるこの素材を、似たような独自の素材として使用しています。
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