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  作者: 火鳥 らひす
1章;柚
11/45

10、どうしょうもない不安。

ジルが帰ると、ロージアも仕事を進めたいと、仕事部屋へ戻っていった。

柚は、お昼の後片付けが終わっても、家の外に簡易で置いた、組み立て式のテーブルから離れることができなかった。


―――聞くの忘れちゃった。 空から落ちてきたお姫さま。異世界人だとしたら、元の世界に帰れたの?―――

柚はそう思ったが、それを確認するのは怖かった。


「私、帰れるのかなあ?」

その言葉を、口に出して言ってみると、それが柚の胸に、小さな棘のカケラになって残った。



「ユズ。  ―――泣いてるの?」

どれぐらいここでこうしていたのか? 柚が気づくと、空はすっかり夕焼け色だった。

見上げたロージアの顔は、柚を心配してくれていた。

「うんん。」

そう言って、首を横に振った柚の頬を、ロージアが親指で拭った。

知らないうちに泣いていた。


「ごめんねユズ。気づいてあげられなくて。 知らない世界にひとりで落ちて、不安でいっぱいのはずなのに。」

柚は椅子に座ったまま、そう言ったロージアの胸に抱きしめられた。

トクントクンと、ロージアの心音が柚に心地良く伝わった。

その心音が、ひとりではないのだと訴えているようだった。

それを強く確かめるために、柚もロージアの背中に腕を回した。その瞬間にロージアの心音が、ほんのわずか、スピードを増したことを柚は気づかなかった。

けれど柚は、その存在を抱きしめることで、自分がひとりでないと強く確かめることができた。


この時はまだ、それが柚の一方的な安心だと思っていた。



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