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ピアノを習う

 五年生になったとき、クラスの中に渡瀬佳代さんという女の子がいました。その女の子は歌がとても上手でした。仲良しになったとき、Kちゃんもピアノを習わない?と誘われました。


 前に小林さんのお母さんから、私の母にバレーを習わせませんかとのお誘いがありましたが、母はお金が要るので躊躇していました。ピアノならいいだろうということで、習うことになりました。


 渡瀬さんの家は甲子園口からチンチン電車で数駅先の上甲子園にありました。渡瀬さんの家からは、歩いてピアノの先生の家に行ったように思います。田んぼの真ん中に、いくつもの小さな白い建物が建っていて、その中の一軒がピアノの先生の家でした。


 家に入ると白い朝鮮服を着た先生のお母さんが出てきて、部屋で待つように言われました。

 しばらく待っていると、ピアノの先生が帰ってきて、ピアノを教えてくれました。先生の優しい面影は、かすかな記憶の中に残っています。


 ピアノもオルガンもない私は、家で練習をすることはなく、ちっとも上達はしませんでしたが、渡瀬さんと通うレッスンは楽しいことでした。


 渡瀬さんは竹屋の一人娘だったようで、家に行くと、両親がとても可愛いがっているふうで、渡瀬さんばかりを見て、洋服を買ってきたよ、と着せて喜んだりしているのを、私は傍で眺めていました。


 学校では、私は級長、副級長より少しランクの下の風紀係を命じられて、クラスの皆の態度を点検しなさいと杉本先生に言われていました。

 級長の子の他に、二人の男の子が私をとても気に入っているようでした。その他にスラム街に住んでいたらしき女の子達も私を支えてくれていたように思います。

 とびっきり金持ちでもなく、成績が一番でもないというのは、友達から温かい友情をもらって過ごせるのだなあと、その時意識はしなかったけれど、田舎に帰ってからの学校生活で辛い思いをしたとき、鳴尾小学校でのことが懐かしく思い出されました。


 




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