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第六話 魔戦士の伝説

ゴールデンウィーク特別公開です。

第六話お送りします。

お読みください。


(すごい数の本だな……)


 クウヤは図書室の蔵書の数に驚きながら適当な本を物色する。古びた本棚には立派な皮の装丁の本が何冊も並んでおり、さながら私設図書館の趣がある。近在にこれだけの蔵書を保有するところはない。クウヤはいくつかの本棚の間をすり抜け、ある本棚の前に立ち止まる。


「何の本があるのかなぁ……」


 クウヤは独り言を言いながら本棚から手近にあった本をとってみる。手にとった本には何やら難しげなタイトルが付いていたが難してクウヤには読めなかった。仕方なく本を開き、読める単語を拾いはじめた。


「えぇ〜っと。『その者、……力を持ち、邪悪なるものを討ちたり。……魔戦士という……』 あとは難しくて読めないな…。んー……ま、いっか」


 クウヤは手にとった本を元に戻し、ほかの本を物色する。手当たりしだいに目についた本を手に取り読んでみる。どうやらこの本棚には歴史関係の書籍が並べられているようだった。


「クウヤ様はこちらですか?」


 ソティスの声がして、クウヤは返事をする。ソティスは声のした方に歩いていき、クウヤを見つける。


「クウヤ様、こんなところで何を?」


「せっかく鍵を貰ったから、どんな本があるのかちょっと見ておうかと……。ちょうど良かった、聞きたいことがあるんだけど、いい?」


 そういうと、クウヤはソティスに魔戦士のことを尋ねた。ソティスは頷き、静かに語り出した。


――この世界は200年前に一度滅びかけた。突如現れた大魔皇帝と魔族の侵攻によりこの世界に戦乱の嵐が吹き荒れためである。


 魔族たちはその眷属の独立を大義名分に掲げ、他種族、他国による干渉を排除することを求めてはいたが、魔族支配地域周辺国やそこに住む諸種族にとっては迷惑千万なことであった。そのため、この魔族たちの蜂起を鎮圧するため、各国は戦力を供出し対抗した。しかし所詮烏合の衆、団結した魔族たちには対抗し得ず、徐々に支配地域を失っていった。


 世界は絶望に包まれたとき、ひとつの奇跡が降臨した。帝国「蓬莱」出身の名もない戦士が大魔皇帝討伐を掲げ、立ち上がった。その戦士は凄まじい魔力と剣技を持ち、魔族たちを次々と討伐していったため、その戦士をいつしか魔戦士と呼ぶようになった。


 その魔戦士はついに大魔皇帝領に侵攻し、大魔皇帝と対決した。激しい戦いが続いたがついに大魔皇帝は魔戦士に倒された。その知らせは魔戦士の従者によって、世界にもたらされたが件の魔戦士はそのときを境に行方知れずとなった。


 大魔皇帝を失った魔族は戦乱で疲弊した国々と講和し、現在の領域に収まった。それ以来魔族は外界との交渉を断ち、その内部については闇の中となった。世界は戦乱の被害を回復するために一致協力することが決められ、現在の世界が出来上がった――


「……クウヤ様、大丈夫ですか?だいたいのところはこのような感じですが」


 この世界の歴史について、ソティスは一気にクウヤへ語った。クウヤは情報量の膨大さに面くらい、ただひたすら聞くだけであった。その情報を処理するだけでクウヤの頭は手一杯であることがクウヤの呆然とした様子でありありとわかる。クウヤの余りにも呆然とした様子に、ソティスは理解できているか心配になる。


「なんとか……。魔戦士ってそんなにすごい戦士だったの?」


 膨大な情報をなんとか咀嚼したクウヤは、一番興味の惹かれたことをソティスに聞いた。

 

「そうね、出自は一切分からない謎だらけの戦士だったけれど、その魔力は大魔皇帝を凌駕し、剣技は剣を一振りするだけで、山が砕け、海が裂けたって言われてるわ。まぁ伝説だから誇張されいるでしょうけれど……」


「そっか……。すごい戦士なんだぁ……。そんな戦士なれるかな?」


 分かったような分ってないような言い回しでクウヤは感心する。そんなクウヤを見て、ソティスは苦笑いをする。


「きちんと鍛錬を続ければそうなれるかもしれませんよ。クウヤ様次第です」


 ソティスは苦笑しながらも、クウヤを励ましてみる。近頃のクウヤはソティスから見て余りにも多くのものを期待され、その期待に押しつぶされそうになっているように思えたからである。


 クウヤはそう言われると、少しばかり照れたように微笑んだ。


「さて、今日の追加授業はこれでおしまいです。もうすぐ夕食の時間ですし、一度お部屋でお召換えを」


 クウヤはソティスに促され、自室へ戻ることにした。


「でも、そんなすごい戦士がなんで行方知れずのままなんだろう?」


「さぁ? わかりません。大魔皇帝との戦いが激しくて相打ちになったとか、そんなところではないでしょうか?」


 クウヤの問いにソティスはいつものように素っ気なく答える。ただ、答えたあと少し何か考える素振りを見せた。


「……可能性があるとすれば、帰るに帰れなかったのかもしれませんね」


 ソティスのつぶやきに、クウヤは首を傾げる。


「どうして?大魔皇帝を倒した英雄が帰るに帰れないの?」


「あまりに強すぎる力は敵がいなくなれば行き場がないですから……。……クウヤ様、お気になさらずに他愛の無いつぶやきです」


 クウヤには今ひとつ理解しきれず、モヤモヤとした思いが残ったままであった。そんな思いを抱きつつ、クウヤとソティスはクウヤの自室へ歩いていった。

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