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魔戦士クウヤ〜やり直しの魔戦士〜  作者: ふくろうのすけ
第四章 魔導学園国編
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第五十六話 エヴァンの交渉

 魔力供給所の見学を許可してもらうため、学園長のもとを訪れるクウヤたち。学園長は不在で許可がもらえなかった。その時エヴァンが思わぬ才能を示す。お読みください。

 クウヤたちは中心棟へむかって歩いていた。


(面倒だな……。そうそう学園長に面会できるものじゃないだろうしなぁ……)


 クウヤはぼやきつつも、歩き続けた。そんなクウヤを見ていたルーが何かに耐え切れないかのようにクウヤに声をかける。


「……何かあまり乗り気ではないようですね、クウヤ」

「ん? まぁ、なんというか……学園長に会えるかどうかわからんぞ」


 クウヤはルーたちの希望を無碍むげに断ることもできず、かと言ってこの国の国家元首に簡単に会えるとも思っておらず、予防線を張り出した。


「そうですよね……。学園長はお忙しい方ですからいきなり訪問しても、会えるとは限りませんよね……」


 一番の常識人の少女がクウヤの言わんとする事を察する。そんなヒルデに余計すまない気分になるクウヤであった。


「会えなきゃ会えないで、そんときゃ勝手に見に行けばいいじゃん!」

「どあほっ!」

「はうっ……」


 一番の非常識人がクウヤの感情を逆撫でする。エヴァンは自信たっぷりに拳を握り、胸の前で突き上げた。しかしクウヤは大きく振りかぶりツッコミを入れる。彼は大きくのけぞり、ふっとんだ。


「……アホは放っておくとして、学園長に許可をとったほうが良いのは良いわね。とりあえず、中心棟の事務方で相談しては?」

「アホって言うなぁ!」


 ルーの提案とは関係なく、エヴァンが抗議の声を上げるが誰も取り合わない。彼の周りだけ空気が違っていた。


「……そうだな。そうしようか」

「そうしましょう。そのほうがいろいろ問題を起こさなくていいかも」


 ルーの提案に乗ることにしたクウヤ。ヒルデも賛同した。


「……おーい。無視しないでぇ……」


 約一名を置いてきぼりにしてルーの提案にクウヤたちの話はまとまった。


「……でもさぁ、真面目な話、なんで勝手に見に行っちゃダメなんだい? 子供が勝手に見に行っても大したこと無いじゃない……」


 置いてきぼりの少年がボヤくように尋ねる。他の三人は頭を抱え、エヴァンを見る。とくにクウヤは彼を見つめ、首を振る。


「……ま、俺たちが普通の生徒ならエヴァンのいう通りさ」

「だろ? 俺の考えは間違ってないよな?」

「……しかし、俺たちは違うんだ。学園長にいろいろ言われたろう。あの時点でもう普通の生徒のように振る舞えないんだ」

「ふむ……」


 エヴァンは珍しく、熟考し始めたかに見えた。クウヤはそんなエヴァンの様子にちょっと安心しかけた。

 しかし、エヴァンは数秒後に考えることを放棄した。


「……よくわからんが、何か余計なおまけがついたのか?」

「そう思っててくれ。俺たちはいろいろ気を配らないといけないんだ」

「……もう一つよくわからんが、お前がそう言うなら、そうなんだろうな」


 エヴァンは何をわかったのか、一人アゴに手を当て、頷いていた。クウヤはガックリと肩を落とし、恨めしげにエヴァンを見つめる。


 エヴァンの考えは極端ではあったが的外れなものでもなかった。彼らがごく普通の生徒であったならば……。

 魔力供給所はマグナラクシアにとって生命線とも言うべき施設であり、そんな施設に諜報員候補生と言うべきクウヤたちが無断で忍びこむ――そのこと自体がこのマグナラクシアにとって脅威となることだった。エヴァン以外はそのことを理解していた。

 もっともその理解力自体も周囲の大人を驚愕させ、警戒させるのには充分なものではあったが……。


 ガックリと肩を落とすクウヤをルーが彼女らしい言葉で慰める。


「……アホに理解させるなんてことは困難極まり無いことです」

「アホ、アホいうなぁっつぅの!」


 傍から見れば、話している内容はともかく中の良い四人組が戯れているように見えた。うららかな午後の日差しの中、学園の他愛のない日常が繰り広げられていた。


――――☆――――☆――――


「……学園長との面会は出来ませんが、その件はお伝えしておきます」

「……そうですか。お願いします」


 クウヤはそういうと事務の女性に礼を言い、その場を離れた。


「やっぱりダメか……」

「学園長は不在だったの?」

「ん? あぁ……」

「今日のところは帰りましょ。その内、何か連絡があるでしょう」


 クウヤと女性陣二人はあきらめモードでその場を立ち去ろうとしたが、一人エヴァンだけが違った。


「しかし……。待つのがめんどい……。何とか頼み込めないかな?」

「何を考えているのです、エヴァン? アホが考えても無駄だと思うのですが……」

「アホいうなっつぅの! 交渉の余地はないか考えていたんだろうがっ!」


 相変わらず毒のある言葉でエヴァンをいじるルー。それでもこの時のエヴァンは少し違った。いつもなら考えることはさっさと放棄するのに珍しく考えこんでいる。その姿にルーは呆れ顔をする。


「……何を考えているのか知りませんが、時間の浪費はやめたほうが望ましいと思います」

「時間の浪費じゃない! それに呼び出されるのを待っている方が時間の浪費でしょうが」

「まともなことも考えているのね。エヴァンなのに」

「……そうだな、エヴァンなのにまともだな」

「そうよねぇ」

「エヴァンなのにってなんだよ! みんな揃ってなんだよぉ……」


 クウヤとルーがエヴァンに追い打ちをかけ、彼は情けない顔になる。

 しかし心優しいヒルデがエヴァンに助け舟を出す。


「まぁまぁ。エヴァンくんも二人も。エヴァンくんは何かいい考えがあるの?」


 エヴァンはいつになく真面目な顔で語り始めた。


「……ちょっといって交渉してくる。話せば分かるさ」


 エヴァンは得意気に拳を胸の前で突き上げる。

 クウヤは呆れ顔で彼を見つめる。


「……。学園長は不在だぞ。交渉って誰とするんだよ?」

「まぁいいから、いいから」


 そうするとエヴァンは意気揚々と受付嬢に立ち向かっていった。


――――☆――――☆――――


 エヴァンが意気揚々と交渉に行って、小一時間彼が戻ってきた。行きと同じように堂々と胸を張って帰ってきたため、クウヤたちはいい結果を思わず期待した。


「……。んで首尾は?」

「全力で取り組んだんだ! 若い時は全力で取り組むことが大事なんだ!」

「……それで?」


 エヴァンは無意味に胸を張るが、クウヤとルーは額にシワを寄せ彼を見つめる。


「学園長から直接許可をもらうことはできませんでした……」

「それみろ。何をしに行ったんだよ、一体……」

面目めんぼくねぇ。しかし、朗報もある!」

「見学できるぞ!」

「えっ? どうやった?」 


 得意気に胸を張るエヴァンに対し、他の三人は驚きを隠せなかった。


「ま、蛇の道はヘビっていうだろ。ガキんころから親父に仕込まれて交渉ごとは嫌いじゃないんでね」

「それで、どんなふうに頼んだんだい?」

「それはだな、まず受付のおねーちゃんに学園長に会えないかもう一度聞いたんだ」


 クウヤたちはエヴァンの説明に聞き入る。


「当然、無理だって言われるから次は授業を組んでいる担当の人を教えてもらったんだ。それから――」


 ――エヴァンは説明によると、その担当に人に適当な先生の引率付きで、授業の一環として魔力供給所を見学させてほしいからなんとかしてもらいたいと交渉した。最初は難色を示したが、粘って粘って彼の案を認めさせた――


「――ということだ。いやー、結構手ごわかったが結果は出したぞ」


 エヴァンは汗を拭う仕草をして自らの努力を強調するが、クウヤたちはもうひとつ反応が鈍い。その反応にエヴァンがむっとする。


「なんだよ、せっかく見学できるようにしたってのによ」

「……結局待たないといけないことは変わらないですね」

「んでも、確実に行けるとわかって待つのとそうじゃないのとでは大分違うだろ」

「そうかもしれませんが……。何かスッキリしませんね」


 エヴァンの成果にルーが疑問を持つがそのことが彼にとっては気に入らなかった。ルーもエヴァンの成果を認めないわけではないものの、満足の行くものではなかった。

 最高責任者のお墨付きが貰えれば、気兼ねなくいろいろ見学できると考えていたルーにとっては物足りなかった。その心情が思わず表に出た瞬間だった。


 なにか微妙な雰囲気なったため、クウヤたちにはやや重い雰囲気の中にいた。クウヤはその雰囲気を変えるため、真っ先に口火を切る。


「ま、エヴァンにしてはよくやったな」

「そうですね、エヴァンにしてはよくやりました」

「なんだよぉ、『エヴァンにしては』って!?」

「まぁまぁ、クウヤくんもるーちゃんも。とりあえずお疲れ様、エヴァンくん。ありがとう」

「……ヒルデ」


 あまりにも投げやりなクウヤのやり方にエヴァンが抗議する。ルーも便乗するが、心優しき少女はエヴァンの苦労をねぎらう。

 その一言にエヴァンの苦労が報われたようだ。


 いかがだったでしょうか?

 さて、諸般の事情により今後の更新を不定期とさせていただきます。読者の皆様にはおまたせして申し訳ありませんがよろしくお願いします。

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