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魔戦士クウヤ〜やり直しの魔戦士〜  作者: ふくろうのすけ
第四章 魔導学園国編
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第四十七話 震撼する提案

 実技試験を終えたクウヤたちは面接試験に挑む。面接は順調に進み、クウヤの番となった。クウヤの面接も順調に進んでいたが、学園長より衝撃の提案が! お読みください。

 実技試験を終え、クウヤたち4人は待合室で面接の順番を待っていた。順番は実技試験と同じく、エヴァンからだった。


「エヴァン・マーチャン、面接会場へお願いします」

「はいっ!」


 呼ばれた声に元気よく返事したまでは良かったが、エヴァンは手と足を同時に前後に振りながら面接に向かった。


(大丈夫かよ……)


 クウヤはエヴァンを見送りながら、頼りなさげな彼を心配する。


「……あの、クウヤ様。エヴァン様は大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫……かな? 大丈夫だと思うよ……たぶん」


 ヒルデの質問に自信なくクウヤが答える。ルーは興味なさそうに二人の会話を聞き流した。


 面接の順番を待つ間、クウヤは何をするでもなくぼんやりと物思いに耽っているとヒルデが恐る恐る話しかけてきた。


「……あ、あのぉちょっと良いですか?」

「ん? 何だい?」

「どうして受験されたんですか?」

「ん~。ちょっと思うところがあってね」

「……思うところですか。もう少し詳しく聞いてもいいですか? 思うところって、一体……」


 ヒルデは小首を傾げ、ためらいながらもさらにクウヤに質問する。ルーもなぜだか興味ないふりをして、聞き耳を立てる。クウヤも少しためらいながらも、訥訥と答える。


「ん。……友達が死んだんだ、魔法が原因でね。だから何かできなかったのかなと思ったら、受験という結論になった……というところかな」

「そうなんですか……。ごめんなさい、変なこと聞いて」

「いや、かまわないよ」


 なんとなく気まずい雰囲気に二人は押し黙る。その二人ともう一人の少女の間に重々しい沈黙が漂う。しばらく三人はそのままだったがその沈黙に耐えられられなかった高慢な美少女が口を開き、重々しい沈黙を打ち破る。


「……あたしはもっと上を目指すの。学園の卒業資格があれば信用も絶大、いずれは一国を動かせる……」


 柄にもなく力説したまでは良かったが、その場の空気を全く読んでいなかった。結局その少女はその場で浮いただけだった。冷ややかな視線が彼女を射抜き、彼女は僅かに赤面し押し黙ってしまった。


「……ぷっ。ははっ」

「あによぉっ! なんで笑うのよ」


 クウヤが突然吹き出す。ルーは赤面しながら彼に対し抗議の声を上げる。彼はなぜだかわからなかったがそんな彼女が可笑しくて可笑しくてしょうがなかった。


「いやいや、なかなか可愛いとこあるじゃん」

「なによっ! ふん!」


 クウヤの不意にはなった言葉がルーをさらに赤面させる。二人のやり取りを苦労人の少女は少しの驚きとともに二人を見つめている。


(めずらしい。る~ちゃんがこんなに初対面の人に感情を表すなんて……)


 幼い頃からルーを見てきたヒルデには驚きであった。鉄面皮少女の親友が初対面の少年にあっさりその仮面を剥がされたことに彼女はクウヤとルーの運命を感じずにはいられなかった。


(これが運命の出会いってこと? いやん)


 ヒルデは独り妄想の世界に入り込み、クウヤたち二人を現実世界に置き去りにした。


 三人がそれぞれの思いを胸に時間を潰していると、エヴァンが帰ってきた。次の二人も順調に面接をこなしていった。そしてクウヤの番になった。


 クウヤは試験室に入った。試験室には実技試験の時に見た高齢の職員と二人ほど職員が両隣に座っていた。彼は試験官たちに挨拶し、席に座る。


「それでは面接試験を始めたいと思うが、どうかの?」


 高齢の職員はそうクウヤに尋ねる。クウヤはおかしな質問の仕方だと思いながら、返事をした。それからおざなりの質問を繰り返し、面接は淡々と進んでいった。


「……それでは、学園長何か他にはありますか?」


 クウヤはその発言を聞いて目の前の高齢の職員が学園長だと知る。学園長はその発言を受けてクウヤに単刀直入に問う。


「クロシマ君も試験で疲れたろう。じゃから、単刀直入に聞こうかの。君は転生者じゃね?」


 クウヤは神経を張り詰め最大限の警戒感を示しながら学園長を見据える。警戒するクウヤに対し、学園長は飄々とした態度を取り続ける。


「心配しなくていい。きみの秘密は守られる。我々は君の味方だ」


 クウヤは沈黙し、学園長を見据え続ける。学園長は彼の頑なな態度に苦笑しながら彼に事の子細を説明し始める。


「警戒するのは無理もない。ただ、我々は敵意があってのことではないのじゃ。帝国に良からぬ動きありという情報を得ての、やむを得ず我々はずっと帝国や君のことを監視しておったのじゃよ。しばしば、追尾する気配を感じたことはなかったかの? あれは我々の手のものじゃ。昨晩も誰かに追跡されたじゃろ、あれもそうじゃ」


 クウヤは昨晩のことを思い出し、ふと気づく。昨晩の追手は付かず離れずの距離を保っていた。しかも、ある一定の方向に追い立てるように追跡してきた。そこから導き出される結論は――


「もしかして、僕はあなたと会うために誘導されたんですか?」

「正解じゃ、我々の手のものがあそこへ君を誘導した」


 その答えを聞いてクウヤはわずかながら拳を握りしめ、体を固くする。彼は絞りだすように発言する。


「あなた達は一体何者なんです?」

「我が国は世界の平和と調和をまもるため存在する国マグナラクシアじゃ、昨晩言うたとおりな。そしてその実行部隊、マグナラクシア諜報部隊通称『火種と火消し』じゃよ」

「『火種と火消し』……?」

「そうじゃ、世界の紛争の芽を刈り取るために存在する我が国の諜報組織じゃ」


 飄々と学園長はクウヤに答える。彼に『火種と火消し』について説明し、帝国の動向も調べあげていた事を明かす。もちろん彼自身のことも。彼は沈黙し、ただひたすらその言葉を聞いていた。


「入学後、我々としてはいろいろと君に協力して貰いたい」

「合格確定なんですね。どんな操作を?」

「……操作なぞせんでも、君の成績ならば大丈夫じゃ。その辺は心配せずとも良い」


 あまりの疑りぶりに学園長は腕組みし、頭を捻る。彼にしてみればクウヤはかなり手強い説得相手なのだろう。とはいえ、彼にはどうしても説得しなければならない理由があるらしく、努めて冷静に続ける。


「我々としては、帝国の動向を抑える手伝いをしてもらえればと期待しておる。頼めるかの?」

「随分一方的な提案ですね。諜報活動となるとそれなりにこちらにも見返りか安全の保証がないと乗れません。危ない橋はできるだけ渡りたくないんで。それにある意味、帝国を裏切れと言っているようなものですよ、その提案は。こちらはかなりのリスクを背負うのに見返りはなしですか?」

「じゃろうの。我々としてもタダ働きさせる気はない。それなりの報酬を用意しよう。それから、身の安全も保証しよう」


 それでも、クウヤはあまり乗ってくるような雰囲気はなかった。それでも学園長は彼を粘り強く説得する。


「どうだろう、報酬だけでなく普通なら知り得ないような事を教えるということも追加しよう」

「普通なら知り得ないこと? どういうことを教えてもらえますか?」


 クウヤはわずかながら関心を示し始めた。その様子を感じた学園長はここぞとばかりにさらに続ける。


「転生についての真実ではどうかね?」

「転生についての?」

「そうじゃ。知りたくはないかね。なぜ転生させられたか、なぜ君の世界が選ばれ、そしてなぜ君が選ばれたか……」

「さぁ……」


 クウヤは学園長の提案に関心を示さず、警戒を解こうとはしなかった。それでも学園長はさらに続け、なんとか彼の関心を引こうとする。


「あまり興味がないようじゃな。では、魔力を強制注入された人間の治療法のヒントを加えてならば、どうじゃ?」


 クウヤはその提案に反応する。クウヤには拒否しがたい提案だった。彼はその提案に腕を組み、眉をひそめながら大いに悩む。悩みに悩み、かなりの間沈黙し長考する。そして彼は決断し、苦渋の表情で学園長に答える。


「……軽々には回答しかねます。回答は合格後ということにしてもらえないでしょうか?」

「……よかろう。良い返事を期待している。よし、これで面接は終わりということでええじゃろ」


 学園長の一言にクウヤはフッと一息吐き、一瞬気を緩める。しかし、学園長の一言で彼は背筋に寒いものが走る。


「ただし、この件は我々と君との秘密としたい。他の誰にも話してはいけない、よいかな? 万が一のことがあれば君の安全を保証できないだけでなく、君の家族や友達に筆舌に尽くし難い災難が降りかかる可能性があることを努々忘れないようにな」


 脅しとも取れる、学園長の最後の言葉にクウヤは言葉が出なかった。帝国の裏の活動をかじった彼にだからこそ利く脅し文句とも言える。何も言えず、彼は一礼し面接会場を出て行く以外にできることはなかった。


 待合室にもどったクウヤは努めて明るくしようとした。もちろん、面接のときの話を悟られないためである。


「よっ! おつかれ。終わった、終わった」

「あら随分明るい顔ね。よっぽどうまくいったんでしょうね」

「ならよかった。これで一応、みんな試験は終わりだね」


 クウヤと美少女二人は試験が終わった開放感から、和気あいあいとした雰囲気の中、談笑する。ただ、勘のいい彼だけは違った。


「……クウヤお前。なんかあったな」

「……なんにもないよ。あったらこんなふうには話はできないよ」


(妙に勘が鋭いんだよなぁ、こいつは……。弱ったな) 


 クウヤはエヴァンの感の鋭さに改めて驚きながらなんとか誤魔化す方法がないか、頭をフル回転する。


「クウヤお前、試験中に何かやらかしただろ! そうに違いない!」


 その答えにクウヤはホッとした。同時に笑いが込みあげた。確かにエヴァンはクウヤの変化には気づいたがその内容はまるで見当違いの答えを出したからだ。――つまりはクウヤの偽装は結果的に成功した。


「何笑ってんだよ! こっちは本気で心配してるんだぞ」

「……いやいや、ありがとう。心配しなくても大丈夫だよ。試験はうまくいったよ。実はここだけの話、合格はまず間違いだろうとは言われているんでね」

「……なんだよそれ。心配して損した」


 エヴァンは一気に脱力し、がっくりと肩を落としうなだれた。クウヤはそんな彼の様子を見て苦笑する。美少女二人たちも、クウヤと同じように苦笑した。


「これで後はみんな合格通知を待つだけですね」

「私は大丈夫だけど、エヴァン君は大丈夫?」

「……うるへぇ。なんとかなるさ」

「まぁ、みんなうまくいくさ。今度会う時は入学式だな」


 ヒルデが感慨深げにつぶやき、ルーはエヴァンに嫌味をいいからかう。

 最後のクウヤのつぶやきに全員納得しうなづく。

 荷物をまとめ、港に向かう4人。水晶の摩天楼群を背に海へ向かって歩いていった。

いかがだったでしょうか? 面接の場で衝撃の提案を受けたクウヤはどうなる? 次回お楽しみに。

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