第四話 そして第一の事件<2>
とうとう事件がおきます。
次の日、僕は六時十五分に起きた。六時半に起床なので何とか時間は過ぎなかったらしい。安心してドアのほうを見ると、
やけに静かだ。僕の隣で真太のいびきが聞こえるので、
わざとけりながらドアのほうへ向かった。途中で
「うわっ、なっなんだ。」
という声が聞こえたけど無視して上履きを確認する。すると、僕と真太の上履きしか置いてない。
事件だ!僕は直感的にそう思った。真太も後から
「どうしたんだよ、おい健次!あれ、上履きの数がおかしくないか?それにみんなは?」
さすが真太だ。よく分かった。たぶん事件かもと思っているんだろう。
「まさか全員誘拐したのか?でも、なんで僕たちは誘拐しないんだ―――――――?」
と自問自答している。僕は真太と僕の上履きをそろえると
「よし、ワトソン君事件を確かめにいくぞ!」
と腕をつかんで引っ張った。しょうがなく、行く気になったらしい。
靴を履いてドアを開けた。ドアを開けると女の部屋のほうから声が聞こえてくる。僕は
「なんだよ。なんで僕がワトソンになるんだよ。ブツブツ―――――――。」
と言っている、真太をそのまま引っ張って声が聞こえる場所へ行く。
人ごみの中に次郎と角田と正太郎がいたので話しかける。
「おい!何が起こったんだ?」
「なんでも十八号室で人がいなくなったらしいんだ。」
そう次郎が答えてくれた。同じ班の人がいなくなったから怖がっているのか顔が青い。よく見ると角田も顔が青い。僕は
――――――――まさか京子ちゃんじゃないよな。
という不安を胸にしながら十八号室に向かう。人ごみがざわめいている。
――――――――小島京子ちゃんて言う子がいなくなったんだって。
という声がざわめきから聞こえてくる。僕の不安が当たってしまった。
僕はその場に倒れそうになる。そこをちょうどワトソン君(ああ真太だった)が支えてくれた。
とりあえず、間を通って前に進んでいく。
こういうときチビだと便利だ。途中で真太を残して十八号室の中へ向かう。
中では京子ちゃんと仲のよかった、班の子が泣いている。その隣で先生があやしながら、
話を聞いている。その隣で先生たちが話している。
「おかしいなぁ、入り口は先生が見張っていたし裏口もないしトイレの窓もとてもじゃないけど通れないし
手も届かないよなぁ。」
「もしかしたら、天井裏を通ったのかもよ。あそこは開くようになっているし、
布団の上に乗ればチビでも届くよ。それに、あの子なら天井裏を通れると思うし。」
と、布団の上の天井を指差している。だけどほかの先生がだめだしをする。
「第一、なんで人目を避けてわざわざ天井裏を通ってまで、外に行く必要があるの。」
確かにそのとおりだ。いったいなんで人目をさけていたんだ?その時さっき真太が言っていた言葉が思い浮かんだ。
「まさか全員誘拐されたのか?」
まさか、本当に京子ちゃんが誘拐されたのか?と考えながらみんなのところに戻る。
戻ると、角田と次郎と真太と正太郎が待っていた。
四人に今見てきたことを話し、今思っていたことをみんなに話す。みんなさまざまな反応をした。次郎は
「まさか・・・・ありえないよ。」
顔が青いので、おびえながら離しているように見える。角田も同じように
「そうだよ・・・・次郎の言うとおりだ。」
といってきた。正太郎も
「そうだ!絶対に誘拐なんてありえるはずないだろ。先生が言ったとおり誘拐されたってどうやって逃げるんだよ。
まさか幽霊がやったなんていうわけじゃないだろ。」
『幽霊』という言葉が出たとき、角田と次郎がぴくっと震えた・・・・ような気がした。
でも、真太のこの言葉を聴いて、それも忘れてしまった。
「誘拐って言うのは冗談だよ。ワトソン君。」
「何言ってんだよ!お前がワトソンだろうが。」
「そんなわけねぇだろ。おれのがパズルもできるし、観察力もあるだろうが!」
「俺のがホームズの性格に合ってるんだよ。」
「でも、ホームズといったら推理じゃないか。俺のがひらめき力があるじゃないか。」
「ひらめきと推理は関係ねーだろーが。お父さんが新聞記者なんだから、俺のが社会の知識がいっぱいあるんだよ。」
「俺だって、次郎からお父さんの話を聞いて社会の知識があるんだよ――――――。」
という僕たちの口げんかを止めたのは正太郎だった。
「はいはい分かった。どうせなら二人でホームズやってな。」
正太郎は力も強いので抑えられたら手も足も出ない。しょうがなく今日は朝食を食べることにした。
その時僕の近くの電話が鳴った。
プルルルルー プルルルルー―――――ガチャ
僕は、怖がりながら受話器をとった。
そこから低い声が聞こえた。
さて、電話の人の正体は?
さらに京子ちゃんは誘拐なのか。