真っ白な部屋で
肉がげっそりと削り落ちた頬、ぼさぼさに乱れた髪。体力的にも、精神的にも限界が近い。こうなったのは全て、この部屋のせいだ。
体育館を四等分したほどの真っ白n部屋。出入り口である茶色の扉以外は全て白で統一されている。そんな部屋の中心に、男と女は立っていた。この部屋に閉じ込められてから三日くらいは経っただろうか、もう死んでもおかしくないのかもしれない。食事も睡眠も、肩の力を抜くことさえ危険な状態だ。この部屋がいつ、自分たちに牙を向くのかわからないのだから。
男は夢も希望もないような顔をして、天井を見上げる。無意味だというのに男はそれを止めない。まるで、ネジが切れた人形のように。
それに対し、女はまだ脱出を諦めていない。必ず何かがある、絶対にこの部屋からでられると信じて壁をぺたぺたと触っていた。
全く逆の行動、思考をしている二人には今の状態からは想像できないような特別な関係がある。出会って共に時間を過ごし、永遠の愛を約束した。そして新たな生命の誕生。抱きかかえてやると自分たちの顔を見てキャッキャと笑うその生命はこの世界で一番大切なものだった。
しかしこの部屋で常に死と隣合わせの今、一番大切なものは自分の命のみ。それまでの生活では当たり前だったことが全て変わってしまった。
「春子……」
相変わらず目を天井に向けたまま、男は掠れた声で小さく言う。春子と呼ばれた女は見開いた目で男の顔を振り向いた。だが、その恐ろしい目を見ても男は眉一つ動かさない。もう、慣れてしまったのである。
「もう……諦めないか?」
諦める、それは自分たちの死を認めるということなのだろう。まだ諦めきれない春子は力なく、ゆっくりと首を左右に振った。早く振ると頭に響いて激痛が走ってくる。眠気はあるが、一度眠ってしまうと二度と目を開けられなくなってしまいそうで目を閉じることすらできない。
「なぁもうい……」
言い切ろうとした瞬間、室内にズシンという鈍い音が響き渡った。それに少し遅れて軽く部屋全体が揺れる。何事か、と振り向いた男の目にはとんでもないものが映っていた。
「おい……どうしたんだこれ……!」
目に映っていたのはこの部屋と同じく真っ白な壁。それによって、部屋が半分に割られてしまっている。隙間も、穴も全く無い。男は壁の向こう側にいるはずであろう春子の存在を確かめるため、わなわなと震えた声を壁に向かって発した。
「春……子?」
だが、数秒待っても返答は無い。すぐに死亡を察した男は、ゆっくりと首を横に振りながら後ずさる。いったいどうなっているんだ、春子が何故殺されなければいけないんだ、という言葉だけが頭の中をぐるぐると泳ぎ回っていた。そして、悲しみが怒りに変わる。
「この部屋を作ったのはだれだ……!」
春子が向こうにいるはずの壁に額をぴったりとつけ、怒りの混じった声で呟く。数秒後、それに答えるかのように背後から聞こえるはずのない声が聞こえた。背筋に、首に、顔にまで冷や汗が走る。その姿を見てすらいないと言うのに。
「俺だよ」
振り返ろうとした瞬間、室内に乾いた銃声が響き渡った。
少し文がおかしいですね……すいません。
ハイテンションになって書いてたもんで……orz