表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

私の【精霊眼】には不正が丸見えなので、淡々と事実陳列させていただきます。〜ザマァは得意ではないので、加減はわかりません〜

作者: 茨木野
掲載日:2026/02/18

【おしらせ】

※2/20(金)


新作、投稿しました!


ぜひ応援していただけますとうれしいです!

URLを貼っておきます!

よろしくお願いいたします!


『過労死した元社畜が悪役令嬢に生まれ変わり、辺境のブラックギルドで仕事をしない「お飾りオーナー」として安眠生活を送るつもりが、なぜか部下から「冷徹なカリスマ」と慕われる最強の支配者に』


https://ncode.syosetu.com/n8259lu/


広告下↓のリンクから飛べます。

 オルコット伯爵家の廊下。

 その突き当たりにある階段下で、令嬢オーリン・オルコットは倒れていた。

 後頭部を強打した鈍い痛みが、脳髄を駆け巡る。

 視界が明滅し、耳鳴りがキーンと響く中で、階段の上から嘲笑うような声が降ってきた。


「あーら、ごめんなさいお姉様。足が滑ってしまったわ」


 そう言いながら、口元を歪めているのは義妹のミランダだ。

 美しい金髪を揺らし、蔑みの籠もった瞳でこちらを見下ろしている。


「でも、お姉様は丈夫だから平気よね? どうせまた、壁に向かってブツブツとわけのわからないことを言うのでしょう? 気味が悪いわ」


 ミランダは鼻で笑うと、倒れたままの義姉を放置して踵を返した。

 遠ざかる足音。

 残されたオーリンは、冷たい床に頬をつけたまま、瞬きを繰り返した。


(痛い。ああ、そうだ。私、突き落とされたのか)


 その瞬間。

 脳裏に、奔流のような記憶が蘇った。

 数字。帳簿。電卓の叩く音。決算期の徹夜。ブラックコーヒーの苦味。そして、過労による突然の死。

 前世、日本という国で「会計士」として働いていた記憶だ。


「なるほど。現状把握、完了」


 オーリンはむくりと起き上がった。

 瞳から、今までのような「膜」が取れ、冷徹で理知的な光が宿る。

 彼女は今まで「知恵遅れ」と蔑まれてきた。


 だが、それは違う。

 彼女の目には、常人には見えない「光の粒」――精霊たちが、あまりにも大量に見えすぎていたのだ。


 彼らの声が常に大音量で響き渡り、こちらの世界の情報処理が追いついていなかっただけに過ぎない。

 しかし今、前世の強固な自我と処理能力が統合されたことで、ノイズはクリアな「情報」へと変換された。


『オーリン! 大丈夫!?』

『痛い? 痛いの? あいつ燃やす?』

『ミランダ、わざと押した! 風の僕が見てた!』


 周囲を飛び交う、赤や緑、青の光たち。

 オーリンは頭を振り、衣服の乱れを整えながら、冷静に彼らに語りかけた。


「ええ、大丈夫よ。ありがとう、みんな。それより、今の『わざと押した』という証言、詳しく聞かせてもらえるかしら?」


『うん! あとね、ミランダは昨日、オーリンの婚約者のバートとキスしてたよ!』

『お父様、書斎の隠し金庫に、金貨いっぱい隠してる! 土の僕が数えた!』

『お母様、若い商人と浮気してる!』


 次々と飛び込んでくる、伯爵家のドス黒い秘密たち。

 精霊は嘘をつかない。そして精霊は、壁も床もすり抜け、この世界のどこにでも存在する。


 つまり、オーリンは覚醒した瞬間に、世界最強の諜報ネットワークを手に入れたのだ。

 オーリンは眼鏡を押し上げる仕草(今は裸眼だが)をし、冷ややかな笑みを浮かべた。


「不正の臭いがプンプンしますね。会計監査が必要です」


 ザマァだの復讐だの、そんな感情的なことはどうでもいい。

 ただ、貸借対照表が合わないのは気持ちが悪い。

 自分という資産を不当に毀損し、商会という公器を私物化する害悪(不良債権)は、速やかに処理(断罪)しなければならない。


「みんな、協力してくれる?」


『やるー!』

『オーリンのためなら何でもする!』

『証拠? いっぱいあるよ! 持ってくる!』


「ふふ。頼もしいわね。では、業務を開始します」


          ◇


 一週間後。

 王都のホテルで開催された夜会。

 主催は、オーリンの婚約者であるバート子爵だ。

 彼はオルコット商会の次期当主の座を狙い、入り婿としてオーリンと婚約していた。


 煌びやかなシャンデリアの下、着飾った貴族たちが談笑する中、突然音楽が止んだ。

 壇上に上がったバートが、高らかに声を張り上げたのだ。


「皆様、聞いていただきたい! 私は本日をもって、オーリン・オルコットとの婚約を破棄する!」


 会場がどよめきに包まれる。

 バートの横には、勝ち誇った顔の義妹ミランダが寄り添っていた。

 さらに、オーリンの父であるオルコット伯爵も、腕を組んで頷いている。


「オーリン! 君のような、壁としか会話ができない知恵遅れの木偶を、これ以上私の妻にするわけにはいかない! 商会の未来のためにも、私は真実の愛を見つけたミランダと結婚する!」


「そ、そうですわ! お姉様のような欠陥品に、オルコット商会は任せられません! 修道院で一生、壁とお話ししていればいいのです!」


 嘲笑。

 侮蔑。

 会場の視線が、壁際に立っていたオーリンに集中する。

 誰もが、彼女が泣き崩れるか、あるいは意味不明な奇声を上げて発狂すると思っていた。

 だが。


「異議はありません」


 凛とした声が、ホールに響き渡った。

 オーリンは静かに歩み出た。

 その背筋は定規のように伸び、瞳には知性の光が宿っている。

 かつての「知恵遅れ」の面影など微塵もない。

 バートが怯んだように後ずさる。


「な、なんだその態度は! 自分が捨てられたと理解しているのか!?」


「ええ、理解しています。婚約破棄、喜んでお受けいたします。つきましては」


 オーリンは手元に持っていた分厚いファイルを、バサリとテーブルの上に広げた。


「こちらの『精算』をお願いいたします」


「せ、精算だと?」


「はい。まずはバート様。貴方は過去三年間で、オルコット商会の機密費から、合計で金貨八百枚を私的に流用していますね? 使途は主に、賭博と、そこの義妹ミランダへのプレゼント代」


「は、はぁ!? な、何を言いがかりを!」


「証拠ならここに」


 オーリンが指を鳴らす。

 瞬間、ヒュオッ! と風が吹き抜け、一枚の書類がバートの顔面に張り付いた。

 それは、彼が裏帳簿として隠していたはずの、賭博場の借用書と、宝石店への支払い明細だった。


「な、なぜこれがここに!? 燃やしたはずだ!」


「火の精霊が、燃えカスになる前の情報を『固定』してくれましたの。便利な世の中でしょう?」


 オーリンは淡々と続ける。


「次に義妹ミランダ。貴女、お父様の執務室から、商会の重要顧客リストを持ち出し、ライバル商会に横流ししましたね? その対価として受け取った裏金が、貴女のクローゼットの二重底の下にあります」


「う、嘘よ! そんなの誰も見てないわ!」


「風の精霊が見ていました。あと、その裏金、今ここに届きましたわ」


 ドスン!

 何もない虚空から、重厚な革袋が落下した。

 袋の口が開き、大量の金貨と、ライバル商会からの感謝状が床に散らばる。

 土の精霊と風の精霊による、華麗なる連携プレーだ。


「ひっ……!」


「そしてお父様」


 オーリンの視線が、青ざめた父に向く。


「貴方は国庫に納めるべき税金を誤魔化し、過去十年で金貨五千枚を脱税していますね。その金塊は、庭の噴水の下、地下三メートルの隠し金庫にあります」


「ば、馬鹿な! あそこは誰にも……!」


「土の精霊なら、土の中は庭のようなものですから。ああ、ちなみに」


 オーリンは、会場の隅に控えていた衛兵たちに目配せをした。


「先ほど、王国の国税局と監査局に、これらの証拠の写しを提出済みです。今頃、お父様の隠し金庫は掘り返されている頃かと」


 その言葉と同時に、会場の扉が開いた。

 雪崩れ込んできたのは、王国の騎士団だ。


「オルコット伯爵、ならびにバート子爵! 横領および脱税の容疑で同行を願う!」


「ま、待て! 誤解だ! これはその娘の妄想で……!」


「往生際が悪いですね」


 オーリンは冷たく言い放つ。

 彼女の周りには、今や常人にもうっすらと見えるほどの濃密なマナ――精霊たちが集まり、怒りの形相で彼らを睨みつけていた。


『いじめっ子!』

『泥棒!』

『オーリンを返せ!』


 精霊たちの声が、物理的な圧力となって彼らに降り注ぐ。

 父も、バートも、ミランダも、腰を抜かして震えることしかできない。


「復讐だとか、ザマァだとか、そんな高尚なことは言いません。私はただ、数字と事実を並べただけです。さあ、連れて行ってください。私の視界が汚れます」


 オーリンが手を振ると、罪人たちはズルズルと引きずられていった。

 静まり返る会場。

 誰もが、かつて「知恵遅れ」と侮っていた少女の、あまりに鮮やかで容赦のない手腕に戦慄していた。

 オーリンは「ふぅ」と息を吐き、眼鏡(伊達)の位置を直す。


「やれやれ。これでようやく、商会の膿が出せました。明日からは忙しくなりますね」


「素晴らしい」


 その時、感嘆の声と共に、拍手が聞こえた。

 人垣が割れ、一人の長身の男性が歩み出てくる。

 銀髪に、氷のような青い瞳。

 「氷の公爵」リヒター・ヴァン・アークライドだ。


「君のその手腕、そして精霊を使役する圧倒的な情報収集能力。実に素晴らしい」


「恐縮です、閣下。何か不備がございましたか?」


「いや、完璧だ。完璧すぎて惚れ惚れする。どうだ、君のその目、私のビジネスのために貸してくれないか?」


 リヒターは、オーリンの手を取り、恭しく口付けを落とした。

 その瞳は、有能な人材を見つけた歓喜と、それ以上の熱っぽい感情で揺れている。

 彼は不敵な笑みを浮かべ、爆弾発言を投下した。


「知っているだろうか。私が、国内最大手『銀鳳商会』のマスターであることを」


「なんと。あの大商会の主でいらっしゃいましたか」


 オーリンが目を丸くする。

 銀鳳商会といえば、この国の流通の七割を牛耳ると言われる怪物企業だ。


「単刀直入に言おう。膿を出し切ったオルコット商会と、私の銀鳳商会を統合したい。二つを合わせれば、国境を超えた巨大な経済圏を作ることができる」


 リヒターは熱く語りかける。

 それは愛の告白というより、巨大プロジェクトのプレゼンテーションだった。


「私の妻となり、統合された新商会の『総帥』として、この国の経済を支配するのも悪くないと思わないか?」


「それは」


 オーリンは少し考え込み、そしてニヤリと笑った。

 それは、会計士が巨大な利益を見つけた時の顔だった。


「条件次第では、前向きに検討させていただきます」


 最強の監査役と、商才溢れる冷徹公爵。

 二人が手を組み、世界最大のコングロマリットが誕生した瞬間だった。

 王国の悪人たちだけでなく、ライバル商人たちも一斉に震え上がったという。

 だがそれは、また別の話だ。



【おしらせ】

※2/20(金)


新作、投稿しました!


ぜひ応援していただけますとうれしいです!

URLを貼っておきます!

よろしくお願いいたします!


『過労死した元社畜が悪役令嬢に生まれ変わり、辺境のブラックギルドで仕事をしない「お飾りオーナー」として安眠生活を送るつもりが、なぜか部下から「冷徹なカリスマ」と慕われる最強の支配者に』


https://ncode.syosetu.com/n8259lu/


広告下↓のリンクから飛べます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ