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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
第一章 結成!転生者対策課!

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六話 人一人の人生なんて簡単に変わるし

 指定された場所は、早朝からやっている牛丼屋の前。正一郎は夜中の寒い中一晩中立ってたと思しき宝来を見つけた。


「お待たせ、とりあえず店入ろうぜ」

「うん、あ、でもウチお金ない……」


 申し訳なさそうに正一郎を見る宝来に、コイツ元からたかる気だったのか?と正一郎は少しイラっとしたが、まぁそこは経費で落としてやろうと割り切り店内に入っていった。


「牛丼特盛と……宝来さんはどうする?」

「え、あ、じゃあ朝定食……」


 なんかたかるにしては安いな……と正一郎は(いぶか)しみながら食券を買って着席。話がありそうだったのでカウンターではなくテーブル席に座った。正一郎はさりげなく入り口の方に座り、宝来は対面に座った。


「んで?どうしたんだ?」


 世間話などかったるい事はせず、正一郎は単刀直入に切り込んだ。


「ふぇ!?あ、あの、その……」


 言い出しづらい事なのか、宝来はまごついている。昔の傍若無人な態度は何処に行ってしまったんだろうと正一郎は過去を懐かしみながらも、宝来の発言を待つ。


「あの、ね、お、お金貸してほしいなぁって。ウチ今借りてる部屋の更新料が払えそうになくて、でも借金とかも色々してるからこれ以上借りる当てないから……」


 お金の無心だった。まぁ、うん、藁をも掴む思いなんだろう。そう正一郎は思いなおすことにし、自身が一夜で調べたことに対する答え合わせも同時並行で聞いてやろうと思った。


「分かった、いいよ。いくら?」


 だからこその布石、のための試金石である。あとで経費で落としてやればいいかと思う正一郎。


「え?いいの?本当?五万なんだけど……」


 一方宝来はまさか本当に借りれるとは思っておらず、驚いた顔をしながらも金額を提示する。ぶっちゃけ正一郎のポケットマネーから払える額ではあるが、絶対経費で落としてやると正一郎は心に決めた。


「それくらいなら出すよ」

「ありがとう……助かったぁ」


 宝来さんの心が溶けた。と正一郎は思った。すべてはこの瞬間を作るための前段階である。


「そういえば、宝来さんって三年の秋くらいから学校来てなかったけど、あの時どうしてたの?」


 届いた牛丼を食べながら、さりげなく聞く。すべてはこの答え合わせの為にやったことである。我ながら悪い大人になったなぁと心の中でちょっとだけ罪悪感にかられながら、それ以上に回答へ期待を寄せていた。


「え?あ。えと、その、アレだよ、転校、そう!転校したの!家の事情で!」


 宝来は予想外の質問に慌てながらも、誘導された方向へ逃げる。


「でも引っ越ししてないよね?」


 しかしその逃げ道は塞がれている。昨日の内に正一郎が塞いだからだ。


「あ、あれ?そうだっけ、ちょっと待ってね?」


 宝来は明らかに動揺している。まだ畳みかけるには早い、もう少しだけ泳がそうと正一郎は宝来の動向を見る。


「そう、そうだった、アレだよ、ウチあの頃悪かったじゃん?だから少年院に」

「それも嘘だね、俺警察官になって資料編纂室で働いてたけど宝来さんの記録なかったよ」


 嘘と真実を交えつつ、宝来の逃げ道をどんどん塞いでいく。


「け、警察……あの!今回の話はなしで!ほんとごめんねもう別のバイト行かなきゃいけないから!」


 警察と聞いてから顔の色が明らかに変わった宝来は、席を立ち足早に逃げようとする、しかし


「バイト、嘘だろ。調べはついてる」


 正一郎も同時に立ち上がり逃げ道を塞いだ。もうここに逃げ道はない。最後に特大の嘘をかましたが、その嘘が効いたのか宝来はその場でぺたんと座り込んでしまった。


「そうだよ、ウチは、異世界に転生して、2年前に帰ってきたの」


 座席に座り直し、陰鬱な顔で宝来が話し出す。


「最初の内はさ、むかつく奴だけ倒していけばいい、ボコっていけばそのうち家に帰れるって思ってた」

 でもさ、と宝来は話を続ける。


「あれなんだよ。歳重ねて色んな奴に触れていくうちにさ、親のありがたみとか感じてさ、柄にもなくホームシックになったりして」


 自嘲気味に笑いながらも、宝来の目からは涙が伝っている。


「そんでこっちに帰ってきたら14年たってるし、なんか見たこともないくらい発展してるし、家族からは家の敷居またがせないとか言われるし、仕方ないから住民票とって住むとこと仕事探したけど中卒未満だし、やれることも限られてるし、金は無くなるし、誰も必要としてくれないし、もう、もう死ぬしかないかなって思ってて……」


 そこまで言って、宝来は嗚咽交じりに泣き始めた。こうなると正一郎の心はおろおろしてしまう。泣いている女の子の慰め方など知らないのだ。しかし体は違った。警察官としてやるべきことがしっかり染みついているのだ。次第に思考は体に引っ張られ


「よし、うちの嘱託員になれ」


 男性としてはどうかと思うが、転生者対策課の課長として相応しいものが出てきた。


「……しょ、嘱託員って?」


 泣きながらも興味を示した宝来。正一郎はしめたと思った。興味が出たものを囲うのは訳もない。欲しい言葉も分かってる。あとは実行するだけだ。


「俺の部署では異世界帰りの即戦力を求めていてな、その第一号に相応しい人間ってわけだ」


 乗りに乗った正一郎の舌は止まることを知らず


「俺はお前が欲しい」


 人によっては完全に勘違いする言葉がまろび出た。


「…………ふぇえええええええええ!?」


 そして、宝来は完全に勘違いした。

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