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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
暴け!転生者対策課!

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四十四話 のめり込むほど周りは見えなくなるもんだし

ネットが治ったー!この数日書けなかった分たくさん書いていきます!

 転生者対策課は、今日も今日とて暇を持て余していた。仙台の三月はまだ寒く、外にある倉庫に対して暖房はダルマストーブ一つだけ。その彼らの生命線は、石油不足という深刻な問題に直面していた。


「……おい、このままだと死人が出るぞ」


 たまらずノレンが正一郎に直訴する。彼女の服の内には多数のカイロが張り付けられていたが、それでも倉庫の隙間から吹く寒風は確実にノレンの体力を奪っている。


「仕方ねぇだろ。特に業績も上げられてないどころか、問題ばかり起こす金食い虫に使う予算はねぇんだと」


 ただでさえ転生者への対処という実績がブライトナイト以降乏しい上に、田中キネさんの所在は不明、ノレンの目論見(ペンションゲット)は不発、頼みの綱の新規職員獲得(酒田の勧誘)も失敗に終わり、しかし弾代だけは異様にかかっている現状のせいで、いよいよ転生者対策課は佳境を迎えていた。


「どこかで悪い奴が暴れてくれたりしませんかね……」


 (おおよ)そ正義の執行者ならざる愚痴を吐く太陽の息もまた白く染まっている辺り、切羽詰まっているのが垣間見える。


「みなさーん、お茶が入りましたよー」


 今現在転生者対策課の命を繋いでいるのは、由美の淹れるお茶である。茶葉をノレンが口八丁で他の部署からせしめ、これだけは何としても死守しているのが今の現状であった。


「ああ、助かる……はぁ、あったけぇ……」


 今日何杯目になるかもわからないアツアツのお茶をすすりながら、かじかむ手を温める正一郎。そんな最中(さなか)、正一郎のスマホにメールが入った。差出人は麗、件名は『業務提携について』。


 遂に提携解消の流れになるかと覚悟を決めて正一郎が薄目で内容を確認すると、以下の内容が書き綴られていた。


『息子が宗教にハマったからどうにかしてほしいという依頼。場所とサイトを送るからハッキングよろしく』


 簡潔な文章と共にURLが張られていたので、業務提携のよしみで正一郎はパソコンを(はし)らせる。前回の失敗も踏まえ各国のサーバーを経由して慎重に調べると、予想外の事実が判明した。


「おいおい、転生者案件じゃねぇか!」


 正一郎の言葉に、にわかに対策室が湧く。辛い現状を変えるためにも、ピッタリの話だったからだ。正一郎は話を続ける。


「雲類鷲さんからのお仕事の依頼だ。宗教の調査って話だが、今確認したところ教祖が転生者っぽいんだよ。曰く『教祖の目を見ただけで真理が見える』だの『本当の自分を見つけた』だのレビューが臭くてな、ちょっと探りを入れたらコイツの経歴が……こうだ」


 正一郎は嬉々としてパソコンの画面に教祖の情報を羅列する。名前は『極際(ごくさい)みんと』。二年前にいきなり現れ、聖網教(せいもうきょう)の教祖となった。そのまま各都道府県に支部を置き、今や信徒は五千人を超す一大宗教となっているとか。


「つまりコイツを捕まえれば、あったかライフが待っているってことだな!?」


 寒さに弱いのか、カイロを全身につけてなお震えるノレンが声を上げる。その目は純粋に、現状を脱したいという欲望に染まっていた。


「まぁ待て、捕まえるのは色々手順があるんだよ。まずは罪状をどうするかからだ」


 寒さで正常な判断が出来ていないのか、正一郎も(よこしま)な感情が先走る。宗教が相手となると、理由は危険物準備集合罪か外患誘致罪かと歪に口角を上げる正一郎に、比較的寒さに強い転生者組が待ったをかける。


「ちょっと待ってよ皆川くん!ノレンさんも!その、雲類鷲さんからの依頼って宗教にハマった息子さんをどうにかしてほしいって話でしょ?いきなり教祖に罪状を掛けようとしても、どうにもならないって」

「そうですよ!いくら実績が欲しくても、でっち上げには賛成できません!」


 仮にも世界を救うために奔走した経歴があるからか、こういう時ばかり正義の側に立つなぁと正一郎はちょっと不服に思ったが、確かに冷静に考えて逮捕までこぎつけるのは中々骨の折れる作業である。今回は宗教の実体を麗に送るだけになるかと落胆する正一郎に対して


「おいおい、お前らそれでいいのか?何の罪もない無辜(むこ)の民が、今まさに宗教という箱の中で食い物にされてんだぞ?お前らの正義はそんなもんか?」


 大噓吐き(ノレン)はやる気満々であった。現状を変えるためなら仲間でさえ口車に乗せることに躊躇がない彼女の精神力を褒めるべきか(たしな)めるべきか正一郎が悩んでいるうちに、ノレンは更に畳みかける。


「オレは悲しいぜ。かつて別の世界を救った、文字通りの救世主が目の前の悪を見過ごすなんてさ。お前らがどう考えて動くかは勝手だが、オレは行くぜ。好みを犠牲にしても、罪なき人々を救うためなら惜しくないさ」


 ノレンの言いくるめは転生者たちにクリティカルヒットしたらしく、ハッとした彼ら立ちの反応を見るからにこの案件に首を突っ込む気らしい。それを感じ取った正一郎は、こりゃもう止まらないなと制止をあきらめ麗にこのような文面を返した。


『調べた内容からして転生者案件の可能性があるから、俺たちも手を貸すよ』

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