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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
第一章 結成!転生者対策課!

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四話 同級生は変わり果ててるし

 皆川正一郎は、各種書類、主に始末書の作成に追われていた。


 理由は至極単純で、転生者対策課始まって初の仕事でノレン(バカ)がとんでもないことをやらかしたからである。


「でもよぉ、ぶっちゃけ武装の強化は必要だぜ?仮に転生者が全員あの硬さだったら制圧どころじゃねぇもん」


 始末書の束に埋まりながらノレンが自己正当化を始める。保護した男曰く”転生者は全員身体強化がデフォルトで使えるからニューナンブ程度の口径では殴られた程度にしか感じない”とのことだったので、確かにその必要はあるとは思いつつも、正一郎はぼさぼさの髪をワシワシ掻く。


「だとしても最初から使うのは駄目だろ。ちゃんと段階踏まねぇとこうなるんだよ」


 ひとしきり始末書を片付けた正一郎は、書き終わった紙束を強めに叩きながら立ち上がった。


「はぁ、コンビニ行ってくる」


 聞き取りや始末書の作成等に時間を取られたせいで昼食はおろか夕食すら取れていない正一郎は、退勤して結構しっかり食べようかとも思ったが、初日から部下にだけ残業させるのもなぁと思いとどまりコンビニに頼ることにしたのだ。


「オレはロイヤルミルクティーでいいぞー」


 まったく終わっていない始末書でショットガンシャッフルを始めたノレンのたわごとを聞き流し、外へと歩みを進める正一郎。


 仙台の都心に位置する宮城県警の周りには結構な数のコンビニがある。これからの事を歩きながら考えたかった正一郎は一番近いコンビニではなく、アーケードのはずれにあるちょっと遠めのコンビニへ足を運んだ。いい感じに気の抜けた店員の声を聴きながら入店し、自分用のブラックコーヒーとサンドイッチ、買わずに帰ったら多分面倒なことになるのでロイヤルミルクティーを手に持ち、レジに並ぶ。

 アーケードのはずれは飲み屋街ということもあり、夜もいい時間になっているので水やスポーツジュース、たばこを買いに来た大学生やおやじ達からは酒の匂いが漂ってきた。多少は飲めるものの付き合い程度でしか飲まない正一郎は少し顔をしかめる。その時レジで声をかけられた。


「あの、もしかして皆川くん?」


 少し驚いた正一郎がレジに目をやると、地味目な女性が少しおどおどしながら立っていた。


「えっと……」


 正一郎は言葉を濁しながら、目の前の人が誰だったか考える。大学、高校、中学、小学校、それ以上さかのぼることはできないが、少なくともこんなにおどおどした人間ならなんとなく覚えているはずである。いや、別のクラス、学年で自分の事をひそかに思っていましたなどとのたまわれた日には、知らんがなと自信をもって答えることが出来るのだが。


「わ、わかんないよね今のコレだと。ウチだよ、宝来由美(ほうらいゆみ)


 などと言って自嘲気味に笑う女性の名前を、正一郎は知っている。荒れていた中学校で女子カースト最上位にいた、バチバチ紫髪でステゴロ上等の、最終的に学校から存在自体を消されたと噂されていたあの女子である。


「お、おお。久しぶり。なんかその、変わったな」


 中学時代はまじめにパソコン部に取り組んでいた正一郎にとって、(かかわ)りが全くないなりにひねり出した言葉である。認識されていたのも驚いたが、14年という歳月は人をここまで変えるものなのかということに一番驚いていた。


「あの、この後時間あるかな、ウチもう少しでシフト上がりなんだけど」


 そんな宝来からの突然の声掛けである。生まれてこの方彼女などいない正一郎は一瞬浮ついたが、元が元なだけにすぐ我に返った。


「いや、まだ仕事中なんだわ。部下待たせてるし」


 ここまで言って立ち去ろうとしたが、しかし警察官という立場上、困っていそうな人間をそのまま放置してよいものかという良心が正一郎の足を止める。しばしの逡巡の後、正一郎は自らの携帯電話を取り出した。


「……よかったら、連絡先交換しとくか?」

「え?う、うん!いいよ!」


 飛び上がりそうな宝来を見て、これは近いうちになんか相談とか来るかなと感じる正一郎であった。


 寒空に重いビニール袋を持ちながら正一郎は中学の日々を思い出し、あることを思い出した。


「そういやあいつ、なんで存在抹消されたって話になったんだっけ」


 宝来の悪行は漫画レベルのそれであり、警察が学校に来たり、窓ガラスが全部割れたり、椅子が窓を突き破って降ってきたり、バイクが校内を走り回ったりとそれはもう散々な悪行をしてきていたのを覚えている。それがぱったり止んだのが中学三年の秋だったことも。


「ああ、その頃から宝来が学校に来なくなって、それで学校から存在抹消されたって話になったんだ」


 最終的には卒業写真にも名前すら載っていなかったため、転校したんだろうというのが当時の通説だったのだが、


「あいつ、今まで何してたんだろ」


 今まで考えたことのない同級生のその後が知りたくなった純一郎は、少し早歩きになって転生者対策課に戻った。



宝来由美(29)


中学時代は暴君、と言っても差し支えのない半生を送ってきた。

女子特有の陰湿ないじめをせず、男子のような直接的ないじめをバンバンやっていくタイプの不良。

金属バットでどこぞの歌詞よろしく窓ガラスを壊して回ったり、壊した窓から侵入して片っ端から校舎のカギを盗んだり、配下を率いてコンビニを集団万引きして撤退に追い込んだりと、悪辣非道な人生を謳歌していた。


往々にして、そういったものには意外な天罰がくだったりするものである。

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