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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
たどり着け!転生者対策課!

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三十八話 消極的な人間ほどおどおどしているものだし

 正一郎たちが現場に到着するよりも早く、麗たちは酒田の職場へたどり着いていた。さぁ追い詰めようとその場にいた全員が息巻いていた時に、正一郎からの着信が由美に入る。


「あ、皆川くん?今ね、ターゲットの居る職場まで来たよ!」

『ああよかった、まだ接触はしていないんだな?そこで一回止まってくれ。今回のヤマは、もっと慎重になる必要があったみたいだ。近くに太陽とうる……クライアントもいるよな?とにかく、くれぐれも慎重に行動してくれって伝えて欲しい。俺とノレンもすぐにそっちに行く』


 それだけ言うと、正一郎は一方的に電話を切った。訝しむ由美を見て、麗は何かあったのかと由美へ向き直る。


「問題発生?」

「えっと、なんかくれぐれも慎重に行動してくれって皆川君が……」


 由美が麗へ事情を説明している間に、太陽からの合図があった。ターゲットが職場から出てきたらしい。


「無論、慎重に尾行する。名探偵雲類鷲 麗(うるわし れい)にお任せ」


 すっと物陰から尾行を開始した麗に大声で呼びかけることもできず、正一郎が一番言って欲しかった止まってくれを伝えることが出来ないまま由美は麗の後を追った。




 正一郎とノレンが到着したのは、尾行開始から五分後のことであった。現場にいない由美たちに、どうして止まっててくれなかったのかと苛立ちを覚えた正一郎であったが、次善の策に切り替える。


「ノレン、酒田の家って知ってるか?」

「それを調べる前にお前らが突っ走ったんだろ馬鹿が」


 相も変わらず不機嫌なノレンからのつっけんどんな返しに、そうだよなぁと頭をワシワシ掻きながらどうしたものかと考える。ここに全員がいない以上、尾行している可能性が非常に高い。そんな中電話の一本でも入れようものなら、場所によっては命取りになりかねない。その他の方法で彼女らを特定する方法は……と正一郎が悩みながら空を見上げると、小さな点が移動していることに気が付いた。


「あれ、太陽じゃないか?」

「太陽ならずっと空に浮かんでるだろ?考えすぎて遂に脳みそぶっ壊れたか?」

「馬鹿そっちじゃねぇよ」


 ノレンの罵倒をいなしつつ、正一郎は頭を働かせる。恐らく太陽は空から酒田を尾行しているのだろう。つまり太陽の元へたどり着けるなら、ノレンが偶然を装って本人に近づけるかもしれない。万が一ノレンが何か吹き込んで自分のものにしようとしたとしても、その前に麗を利用してこちら側へ引き込めれば万事解決なのではないだろうか。いずれにせよ、ここで考え続ける時間が惜しいと判断した正一郎は、車を発進させつつノレンに作戦を説明する。


「ノレン、偶然を装って酒田に接触したとして、こっちに引き込める可能性はあるか?」

「やってみない事には分からんが、まぁできなくはないだろ。交渉事はオレの得意分野だ」


 ノレンがそういうのだからまず大丈夫と踏んだ正一郎は、太陽の元へたどり着いた。徒歩五分圏内なら車で一分もかからないのだ。




 かくして役者はそろった。正一郎が酒田を見た第一印象は、なんで歩いているだけなのにこんなにおどおどしてるんだろうというものである。まるで何かに怯えるように、周りをきょろきょろ見ながら歩いているのだ。


「あ、これは調子悪い日だな。今日はやめといたほうがいいかもしれん」


 ノレンが友人(酒田)のコンディションをそう評価したのを聞き、正一郎は素直にその場から離れることにした。ちょっと郊外に来ているとはいえまだ町の範囲内。こんなところで暴れられては困るのだ。


 酒田から距離を取ったところに車を止め、更に離れた所から尾行する由美と麗を見つけた正一郎は、ここなら問題ないかと電話を掛ける。


 しかし繋がらない。通話中のようだ。空中にいる太陽を見ると、どうやら地上と空で何か作戦を伝えているようである。これは時間がかかるかもしれないなぁと正一郎が車のエンジンを止めた時、酒田の様子がおかしい事に気が付いた。頭を押さえ、髪を掻きむしっているように見える。


「気づかれたか?」

「いや、アレはいつもの発作だな」


 焦る正一郎とは対照的に、至極冷静にノレンは状況を説明する。


「アイツな、昔連れ去り事件に巻き込まれたことあってな。それ以来パニック障害持ちの人見知りになったんだが、時折それがフラッシュバックするんだと。んで、当時は人目も気にせず走り出すことで解消してたんだが、転生者になったとなると……」


 ノレンが説明し終わるよりも先に、全身を鎧に包んだ酒田が瞬時に消えた。恐らく荒浜の一件で見せた瞬間移動のようなものであろう。


「まぁ、こうなるよな」


 はぁ、と息を吐くノレン。調査はまたフリダシかと目をつぶる正一郎。こうして、剣士改め酒田代美子との接触はまたの機会に持ち越されたのであった。

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