三十五話 そろそろ問題には切り込んでいきたいし
麗と業務提携を本格的に結んだ日のうちに、正一郎は転生者対策課の面々へ一つの事案を提示した。
「そろそろ、謎の剣士について本格的に調べるべきだと思うんだ」
「どうした?エイプリルフールはひと月先だぞ」
ノレンはまともに取り合わず、由美からついでもらったお茶をすすっている。正一郎をまともに見ているのは太陽と由美だ。
「剣士……魔王が名乗った別名だよね。うん、ウチも調べるべきだとは思う。あれが何であれ、魔王の見た目を取っている奴がまともなわけないと思うから」
「魔王ですか。僕魔王討伐部隊に編制されてないんで直接は見たことないんですよね。でも、戦うとなれば任せてください!」
二人はどうやらやる気満々のようだ。その意気や良しと言わんばかりに正一郎は詳細を話す。
「俺の見解だが、俺かノレンのどっちかの知り合いの可能性が高いと踏んでいる。まずはそこから洗っていくぞ」
正一郎かノレンの知り合い、というところにノレンはピクリと反応した。お前は乗ってくるよなと正一郎はジト目でノレンを見つつ、話を続けた。
「俺の方はこっちで調べるが、ノレンはどうする?」
俺が調べるか?と正一郎が暗に提示すると、ノレンはこれ以上自分の過去を根掘り葉掘りされるのを嫌ってか、ようやく正一郎の方を見た。
「わーったよ、オレはオレで調べとく」
ノレンの言葉に満足げに頷いた正一郎は、やる気満々の太陽と由美に指示を飛ばす。
「太陽、宝来さん。二人はこれから指示するところに行き、そこで次の指示を待ってくれ」
「お?遂に我らが課長も秘密主義か?」
ノレンにからかわれたが、この女にだけは二人の行き先を告げる訳に行かないので無視する。下手を打つとそれだけで感づかれないからだ。
「という訳で、行動開始。さ、頑張って探すぞ!」
「へーい」
「頑張るね!」
「一生懸命やります!」
正一郎の号令に対して、まちまちな返答をする転生者対策課の面々。肩透かしを食らいつつも、まぁこいつらに協調性を求めるのも酷かと正一郎は思いなおし、改めて業務に入ることにした。
「ん、話は皆川から聞いた。人探し手伝う雲類鷲 麗。よろしく」
太陽と由美がたどり着いた先は、雲類鷲探偵事務所であった。生まれて初めて入る探偵事務所を物珍しそうに見る二人に、麗は机にある分厚いファイルを持ち出しながら話を続ける。
「二人にはこれから、これを読んでもらう」
二人の目の前に麗はその分厚いファイルを置き、それから紅茶を入れ始めた。
「これは一体なんですか?」
「これまでに行方不明になったり、長らく消息を絶っている人物一覧」
得体の知れないファイルの正体を聞いた太陽に、麗は説明を入れつつこれからする二人の仕事内容について説明を入れる。
「事前に皆川から、出身の地元並びに小中高大の情報を聞いた。関連する人間をピックアップしてほしい」
「宮城県だけで、こんなにいるの?ウチ知らなかった」
余りにも膨大な量に引いている由美に、それは違うと麗は首を振る。そうして二人に紅茶を出すと、追加で分厚いファイルを三冊置いて
「全世界。頑張って。私も頑張る」
と言ってから、計四冊に増えたファイルの内一冊を手に取り、ペラペラとページをめくり始めた。通りで分厚いはずだと由美が嘆息する中、太陽は疑問に思ったことを正直に伝えた。
「そんな、世界中から探さなくとも、こう、ネットで地元とか学校とかに関連する人をピックアップして探すとかじゃダメなんですか?」
それを聞いた麗は、ファイルをめくる手を止めて太陽を見る。
「駄目、どこで誰が関わってるかなんてわからないから」
それだけ言って、麗はまたファイルを持ち上げた。そう言われてしまったらもうどうしようもないので、太陽も由美も黙って探すしかないのであった。




