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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
がんばれ!転生者対策課!

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三十二話 同僚の前で下手できないし

「そうかいそうかい、そいつはようござんした」


 ここに来てノレンは、目の前の対象を殺すことにした。硝煙反応?銃痕?知ったことか。とりあえず目の前にいる障害を排除してから考えることだ。正直言って雲類鷲はノレンの天敵になりかねない。探偵という職業上、どこでバッティングするかもわからない。ならばこの機会にやっておかないと、後々が怖い。


 ノレンが引き金に力を込めた時、屋根がぶち抜かれて何者かが下りてきた。


「ノレンさん!大丈夫ですか!入るなって言われてたけど、心配で来ちゃいました!」


 太陽である。よりにもよってこのタイミングで突入してきたのだ。この野郎とノレンは心の中で舌打ちし、拳銃を降ろした。


「終わったよ。オレの腕の中にいるのがガイシャだ。とりあえずコイツ連れてけ」

「駄目、その人も私が連れてく」


 ノレンの言葉に雲類鷲が割って入ってきた。ノレンが太陽に言い訳を始める前に、雲類鷲は言葉を紡ぐ。


「アナタも正義の味方なら、私の言葉を聞くべき」


 正義の味方という言葉にときめいた太陽が、雲類鷲の近くに降り立った。この場は全て雲類鷲が支配していると言っても過言ではない。どうにかして主導権を取り戻さなければいけないと感じ取ったノレンは、太陽にどんどん話しかけることにした。


「おい太陽。お前オレの仲間だろ?そんなぽっと出の女になびく必要はねぇ。オレの方を見ろ、見、おい、見ろって。なぁ」

「でも僕は、正義の味方なので……」


 あ゛ーもう融通の利かない奴だなコイツ。ノレンは太陽を撃ち殺したい気分になったが、仮にも有用な人間なので我慢した。ぶっちゃけ有用な人間じゃなかったらこの場にいる全員をぶっ殺して全部なかったことにしたい気持ちであった。しかしそれを実行するほどノレンは壊れた人間ではない。代わりにノレンは太陽を自分側に付かせるよう言葉を浴びせかける事にした。ノレンが分析した太陽の関心は正義、自尊心、そしてこの前のブライトナイトの時に見つけた女性の体である。


「……なぁ太陽、お前、童貞だろ?」

「はわっわわわぁ!?ノレンさん!いきなりなんてことを、お、女の子がそういうこと言っちゃあいけないですって!」


 あからさまに動揺した太陽に、ノレンは確信した。コイツは使えると。ノレンは余裕を崩さず、あくまでこっちが主人だと言わんばかりに太陽へとすり寄る。


「オレに付いたら、そうだな、ほっぺにチューくらいしてやるぞ?」

「ちゅ、チュウ!?」


 ノレンは、これは勝ったと思った。オレのようなナイスバディがこんなことをしたら、そりゃあ太陽も腰砕けになるだろうとそれはもう勝ち誇った。


「なら、私は口にチューする」


 しかし上には上がいる。雲類鷲は表情一つ変えずにそう言ってのけたのだ。ノレンと太陽にとって青天の霹靂と言っても過言ではない。そしてノレンは、決して乗ってはいけないチキンレースに載ってしまったのだ。


「じゃ、じゃあ!オレは舌入れちゃうし!」

「ぎゅーもする」

「オレはパンツ見せる!」

「私はブラも見せる」


 こうなったら、先に降りた方が負けである。終わらない痴女たちの言動に、ピュアな心を持つ太陽は顔を真っ赤にし、目を回し始めた。


「は、はわ、わぁ……」

「さあ太陽!」

「どっちを選ぶ?」


 加えて言っておくが、曲がりなりにもこの痴女たちの顔はとてもいい。女性経験が転生前、転生中、転生後の全てにおいてない太陽は、臨界点を迎える。


「……きゅう」


 果てない美女たちのアプローチに、太陽の脳みそはオーバーヒート。その場に倒れこんでしまった。からかい過ぎたなぁとノレンが反省する一方、雲類鷲はじっと太陽を見つめていた。


「弁論でも、誘惑でも互角。なら俺たちの決着は戦いで決まることになるよなぁ」


 ノレンは太陽をじっと見ている雲類鷲に、改めて拳銃を向ける。しかし雲類鷲は、そんなこと関係ないとばかりに太陽を抱きかかえた。


「人質」


 そうして太陽の首に自らの腕を回し、次の瞬間にはへし折れる体制へと移行したのだ。それは流石に想定外のノレンがあっけに取られているうちに、雲類鷲は次の言葉を発する。


「その子と交換。貴女も仲間を失うのはまずいと思う」


 雲類鷲の目線の先には、那由他が転がっていた。確かに雲類鷲の言う通りではある。ここで太陽を失えば正一郎に一泡吹かせるどころではなくなる。ノレンの転生者対策課での立場は地に落ちるであろう。それは避けたい、何としても避けたい。


「……チッ、分かったよ。今回はお前に譲る。だが次はねぇぞ。これは貸しだからな」


 なんだか貸しばかり作っているなとノレンは釈然としない面持ちで那由他のそばから離れた。


「ん、わかった」


 それだけ言うと、雲類鷲は那由他を引きずり階段を降りて、次いでと言わんばかりに何か叫び散らかす中年を気絶させるとどこかへ電話し始めた。ノレンは非力であるために、太陽を背負うこともできず、仕方がないので引きずって外に出た。ノレンの曇った心とは裏腹に天気は悲しいほど快晴であったのである。

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