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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
がんばれ!転生者対策課!

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27/39

基本的に転生者ってそうそういないし

 例のブライトナイトの一件から1週間と六日、昼休憩も終わった転生者対策課は本格的に暇を持て余していた。これまでは転生者を積極的に探したり、偶然にも転生者と邂逅したりと色々あったのだが、基本的にこの部署は転生者が騒ぎを起こしたときに動く部署である。

 つまり転生者絡みな事件事故が起こらない限り、転生者対策課は動くことがないのだ。


「こうも暇だと、オレの腕が鈍っちまうよ」


 机に突っ伏したノレンが顔も上げずに独り()ちる。何か言い返してやろうと思った正一郎であったが、特に何も言えることがなかったためスマホでソシャゲを立ち上げた。バレンタインイベントも完走し、本格的に手持ち無沙汰になった正一郎はデイリークエストを消化して、次は何をしようかと目を閉じる。


 由美は今日何回目かもわからないお茶くみに精を出していた。やることがないなりに、自分がここにいる意義を見つけようとしているのだ。お茶の温度、蒸らす時間、急須での入れ方、全てを自己流でより良いものにするべく模索しているのだ。これが何の役に立つかは正直由美自身にも分かっていないが、とにかく何かしていないと暇で死にそうになるのだ。


 今現在話に出てこない太陽は、本日休暇である。なんでも友達と遊びに行くとかで、公務員になったことを大いに自慢するのだと息巻いていた。正直自慢する事でもないよなと正一郎とノレンは思ったが、本人が誇りに思っているのならとやかく言ってやらんでもいいだろうと放置した。


 時計の音が、いやに大きく聞こえる。沈黙が部屋の中を支配する中、不意に正一郎が声を上げた。


「ノレンよぉ、なんでお前は戦闘技術がそうも高いんだ?」


 ここまで暇であれば、ノレンも本当のことを言うんじゃないかという正一郎の浅はかな考えである。ノレンはその話する?と言わんばかりに顔を上げ、面倒くさそうに伸びをした後、こう語り始めた。


「アレは、今日みたいな寒い日の午後だったなぁ。今から八年前、オレはまだ学生だった。ふと気が付くと、オレは雪山の中にいた。どこだかわからないうちに、オレは足元にフキノトウを見つけたんだ。不思議と怖い気持ちはなかった。思い切ってそいつを食べたんだ。しばらくするとふつふつと力が湧いてくる。こうしてオレは、誰にも負けない無敵の力を手に入れたってわけだ。お分かり?」


 明らかな、出まかせであった。正一郎は自身の間違いを実感し、由美から受け取ったお茶をすすりながら


「おう、悪いな」


 とだけ言って、パソコンを立ち上げた。ノレンのいい加減な発言に、返って興味を引かれたのだ。どこまでが本当なのか確かめてやろうじゃないかとその場でノレンの前歴を検索したが強固なブロックが掛かっていたため、そのままハッキングへと移ったのだ。実行箇所は己が職場。前の部署でバックドアを作っていたので容易に侵入出来た。


「おいおいおいおい!話したろオレ!なんで無言でパソコンに向かい始めた!おい、やめ、その手を止めろ!」


 正一郎がやっていることを悟ったノレンが引っぺがしにかかるが、残念なことにノレンの力はその辺の女の子より弱い。拳銃なしでは正一郎の行動を阻害するに至らなかったのだ。ノレンの妨害とも言えない妨害を受けながらも、正一郎はハッキングを続ける。前歴がやっとわかったが、どうやら警察本部からの転勤でこちらに来ているらしい。飛ばされた理由はなんとなく理解できるが、まだその強さの理由に納得のいっていない正一郎は更に深みへと潜っていく。


「おい後輩!コイツをパソコンから引っぺがせ!お前のブラのサイズこの場で叫ぶぞ!」


 なりふり構っていられないノレンは羞恥を人質に由美を動かそうとする。流石に思い人に自分の胸のサイズを知られたくない由美は仕方なしに正一郎を拘束にかかるが、それよりも早く正一郎が正解にたどり着いた。


「ノレン、お前特殊部隊でハニトラの」

「わーわーわーわーわー!!!」

「お前なんでそれで処zy」

「ぎゃーわーぎゃーぎゃーぎゃー!」


 正一郎の言葉をかき消すように、ノレンが叫ぶ。何かあったのかと由美は首をかしげるが、ノレンはそれどころではなかった。


「お前マジで、マジでその詮索癖どうにかしたほうがいいぞ……!」

「大丈夫だよ。この程度誰にも気づかれん」


 そういうことじゃねぇんだよとノレンが頭を掻きむしる。セットされた髪の毛がぐしゃぐしゃになるが、当の本人(ノレン)はそれどころではないのだ。


「そうだ!あの女!あの、変態野郎!結局なんかつかめたのか!?」


 無理やり話題を変えるため、ノレンが話を切り出した。吉田祥子、事情聴取で聞き出した女の動機は、インターネットで書き込まれた悪口をそのまま行動に移したようなものであった。曰く、クソな世界に鉄槌を下すという、大きいんだか小さいんだかわからない大義名分のもとにそういうことをしたのだったなぁと正一郎は思い返すが、結局のところやったことは犯罪だ。誰かにそそのかされたとか、裏に大きな犯罪組織が絡んでいたとか、そういうことは全くない。


「なにもねぇよ。てかノレン、お前結構な要職についてたのによくもここまで階級落とせたな」


 どちらかと言えば正一郎は、ほぼ二週間前の事件よりノレンの経歴の方が面白かった。一度は警部まで上がって第一線で活躍していた女が、ここまで地位を落とすことなど普通あり得ないからだ。それでも虎視眈々と上に上がろうとする当たり、エリート街道をまだ狙っているのは見え見えなのだが。


「まっばっ、てめ、マジでよぉ……!」


 顔を真っ赤にしながら殴りかかるノレン。しかしその攻撃は正一郎にとって痛みなど全くなく、むしろマッサージをされているくらいの心地であった。それほどまでに、ノレンは非力なのだ。結局この日はノレンいじりで一日がつぶれ、それでも借りのあるノレンからすれば何もできないのが歯がゆいものとなった。

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