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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
それいけ!転生者対策課!

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二十五話 ヒーローは誰かのためにあるものだし

 ノレンが不良に近づきつつあるブライトナイトの膝を狙撃する瞬間、ぞっとするような殺気を感じ瞬時に前方へ飛んだ。こういう時の直感は彼女にとってよく当たるものであったからだ。直後頭のあった位置へ手が伸びてきた。


「あれ?勘のいい人だな」


 ノレンに手を伸ばしたのは、メガネをかけた小太りの女。年齢にして三十代後半から四十代といったところだろうか、手にはスマホをずっと持っている。


「テメェ、転生者だな?」

「当たりー」


 小太りの女はニヤニヤとノレンを笑う。ノレンは得体の知れない相手に身震いしながらも、後ろにいるブライトナイトに警戒しつつ話を続ける。


「そこにいるブライトナイトはお前のツレか?」


 ここは時間稼ぎが適切だとノレンは警戒対象を二つに増やしながら拳銃を女に向ける。


「ツレなんてとんでもない!彼はアタシの騎士(ナイト)だよ」


 瞬間、ブライトナイトがノレンの両脇を掴む。警戒していたにも関わらず瞬時に拘束された事にノレンは驚きながらも、その目は女に発砲した。脇に手を入れただけなら、至近距離にいる女を撃つことなど容易いと考えていたからだ。


 しかし、ここに来てブライトナイトが増えた。瞬間移動でもしたかのように現れて、ノレンの放った銃弾を受け止めたのだ。女は大げさに驚いた後、胸をなでおろす。


「おおッと危ない危ない。その銃は没収しようね」


 増えたブライトナイトに強引に銃を奪われ、ノレンは悔しそうな顔をした。


「お前みたいなビッチここで殺してもいいんだけどさぁ、どうせなら盛大に辱めてやりたいよね」

「俺は処女だよ馬鹿って何をっ!?」


 ノレンが訂正するよりも早く、ブライトナイトはノレンの上半身の服を破る。下着が露出し羞恥に前を隠そうにも、体を拘束された今の状況では何もできないノレンは顔を赤らめる事しかできなかった。


「ヒュー!じゃあこれが初めてになるんだね。情けないね」


 なれない口笛を吹くように、女はニヤニヤ笑い続ける。自分の初めてを奪うものなんていないだろうとノレンが高を括る中、ノレンを抱えているブライトナイトはクルリと後ろを向き、その場にいた不良少年たちにノレンを向けた。


「おーい、アンタら、この女犯してもいいよ」


 女が笑いながらそう大声を出す。ノレンは血の気がサーっと引くのを感じた。そこにいた少年たちはその場で話し合いをした後、


「いや、外だと立たないッス」


 と、リーダーと思しき男が声を出した。それはそうである。特殊性癖でもない限り、下着が出ただけの人間を羽交い絞めにしている状況下と言えど、二月の寒空の下で急にヤれと言われてモノが立つ人間はそうそういないのだ。


「あれぇ?凌辱ものだと結構メジャーなんだけどなぁ……」


 女がそう言いながら残念がる。正直ノレンも経験がないからそういうことになるかと思ったので一安心したが、しかし状況がかなりまずい事には変わりない。いかにして状況を好転させようか考えていたその時、増えた方のブライトナイトの股から急に()()()()()()が生えた。


「じゃあ、アタシの騎士(ナイト)を貸してあげる」


 自身の穿いていたスカートを破り、タイツすらも引き裂き、そこを守るものはパンツ一枚になったノレン。そのパンツにすら手がかかり、己の腕ほどもあるソレを見たノレンは今度こそ駄目だと思った。その時


「ノレェェェェェン!!!!」


 原付に乗った正一郎が、その場に乗り込んできた。いきなりの乱入者に驚く女、動きの止まるブライトナイト達、どんな皮肉がノレンから飛び出すのかと思っていた正一郎に届いた声は、


「た、助けて!」


 涙声の、救助要請であった。


「分かった」


 それだけ言った正一郎は、拳銃を構えてブライトナイト達と女の前に立つ。正直言ったところ正一郎は、転生者対策課の中では最弱である。それは正一郎自身も感じていることであり、実際事実でもある。実力差に気が付いた女はニヤニヤ笑いを続けながら話し始めた。


「誰?まぁコイツのツレか。でもこの状況、アンタ一人でひっくり返せるとでも……おっ?」


 しかし正一郎は下がらない。40口径マグナムを引き抜くと、容赦なく女の肩に発砲、油断をしていた女の肩を貫いた。


「おっ、おっ、おあああああああ!?痛い!痛い!」


 いくら油断していたとはいえ、女は必要以上に痛がった。転生者だから普通の拳銃程度は効かないけど、殴られた痛みも感じたくないからとノレンの拳銃を払いのけるくらいには、女の痛み耐性は低かったのだ。女の失策は二つ。拳銃の威力を甘く見積もっていたことと、日本警察を軽んじていたことだ。


 肩を貫かれた痛みで女の魔法が解けたように、ブライトナイトが消えていく。魔力を使っての回復魔法、女はあまり得意ではなかったのだ。


「とりあえず、これ着とけ」


 正一郎は自分の着ていたコートを脱ぐと、ノレンに掛ける。ノレンは即座に袖を通し、しっかりと前を締めた。痛みに震える女に、正一郎は拳銃を突きつけながら声をかけた。


「警察だ。公務執行妨害、婦女暴行罪、器物破損の罪で逮捕する」

「うぅぅぐぅぅぅ!」


 捕まっててなるものかと、女は逃走を開始した。太っているとはいえ転生者の本気の逃走に、本来であれば追いつけるものなどいない。しかし


「逃がすか馬鹿が!」


 怒りに燃えるノレンの拳銃の精度は、普通のそれではなかった。地面に落ちた40口径マグナムを拾ったノレンに腹を打ち抜かれた女は、その場で倒れる。ショック死してないだろうなと正一郎は心配したが、どうやら痛みに気絶しただけのようであった。


「宝来さん、太陽。早く着ける方ならどっちでもいいが、ガイシャを捕縛した。回復魔法を頼みたい」


 冷静な正一郎の声が、繁華街の中に溶けていく。この後先に着いた太陽が回復魔法をかけたため、女の命は一応つながったのであった。

吉田祥子よしだしょうこ(42)

転生者特典は「自分の騎士を召喚する」というもの。ブライトナイトは彼女が生んだ想像上の産物であり、二次元を愛した彼女の思う通りに動く。痛みを嫌った彼女の代わりに戦いの全てを担い、ダメージによっては自身で回復魔法を使える程度には知性もある。行動原理は正義の為に動くというものであり、正義は吉田祥子が確認できる悪を滅することによって達成される。吉田祥子はパソコンに精通しており、最初の内は目視で、そのうち他のスマートフォンや監視カメラをハッキングすることでブライトナイトの行動を制御していた。


暴走する正義は、時として悪に染まる。

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