二十三話 ヒーローは基本孤独なものだし
転生者対策課に戻った太陽たちから事の子細を聞いた正一郎は、今までいじっていたノートパソコンを動かしながら状況を整理する。
「つまりだ、攻撃を食らったブライトナイトは、影も形もなく消えちまったと。そういうことだな?」
「は、はい!そういうことです!」
何故かテンパる太陽と、その太陽の方を見ないようにしている由美、なんとも言えない表情のノレンに疑問を持ちながらも正一郎は話を続ける。
「多分だがな、ブライトナイトは別に攻撃に耐性があるわけじゃねえぞ」
攻撃を立て続けに受け、なおも立ち上がるブライトナイトを見ていた正一郎以外の三人はここに来て目を合わせる。
「お前らが休憩時間を満喫している間、俺はブライトナイトの行動範囲並びに出現時間を調べていたんだ。結果、アイツは複数の場所に同時に現れていることが分かった」
正一郎はノートパソコンの画面を三人に見せるように向ける。分かりやすいようにまとめられたそれは、確かにブライトナイトが確認された画像並びに動画と、その出現時間が細かにまとめられていた。確かに同時刻でブライトナイトが複数体確認されているようである。
「このことから、アイツの能力は分身である可能性が高い。しかもその行動からしてその全てが独立して動いているようだ。だが弱点も同時に確認している。奴が同時に現れるのは最大でも三体。つまりその中のどれかが本物だ」
正一郎がパソコンを閉じ、三人を見た。作戦を伝える時間である。
「さて、ここから導き出せる作戦はひとつ。奴が確認され次第ノレン、由美、太陽と俺の三組に分かれブライトナイトを迎撃。本物を捕縛、逮捕まで行くぞ。罪状は器物破損並びに公務執行妨害だ」
「ついでに民事でも引っ張ってやる。ケツの毛までむしってやるよ」
ノレンが腕をぐるぐるしながら答える。単独行動に文句を言わないあたり、一人で勝てる算段を付けているようであるようだ。
「さっきは気絶しちゃったけど、全力でタイマン張るなら負けないよ!」
「今度こそ確実に仕留めます!」
由美と太陽もやる気である。正一郎は太陽に仕留めるまではいくなよとくぎを刺し、パソコンを閉じて拳銃を銃のラックから取り出した。ノレンの口車に乗せられた上層部から支給された、40口径マグナムである。
「奴の行動は逐一俺のスマホに入るようにした。大体の出現ポイントも抑えている。これから俺たちは、ブライトナイト捕縛作戦に入る。準備はいいなお前ら!」
「任せろ、弾がありゃ問題なくやれる」
「ヒーローを騙る悪漢は、僕が倒します!」
「絶対勝つ!」
三者三様の答えを聞きながら、正一郎たちは転生者対策課を後にするのであった。
『こちら皆川、ノレン聞こえるか』
正一郎の声がノレンのスマホから聞こえる。場所は半壊した銭湯からほど近い裏路地である。
「おう、奴さんは見つけたぜ」
ノレンの目線の先には、裏路地にたむろしていた不良少年たちに悠々と近づくブライトナイトの姿があった。
『くれぐれも殺すなよ。本物だったら事だ』
「わーってるよ。対象の無力化だろ?このノレン様に任せとけ」
ノレンが手にした拳銃は、既にブライトナイトの足を狙っている。少年たちと荒事になる前に、ノレンは物陰から飛び出した。
「皆川くん、いたよ」
由美がいるのは河川敷の下、ホームレスにいちゃもんを付けるブライトナイトが確認できた。
『万が一の時はぶっ飛ばしても構わん、俺が責任を持つ』
「せ、責任取るなんて、凄い大胆……ウチ、頑張るからね!」
正一郎の言葉に、由美は心高ぶらせる。その気持ち冷めやらぬうちに、由美は魔法でバットを二本作り上げ、ブライトナイトへ躍りかかる。
「さて、やっと俺たちの番だな」
正一郎と太陽がいるのは、仙台駅西口の一階、人通りも多いペデストリアンデッキの下で、酔っ払いに掴みかかるブライトナイトが目前にいる。
「人様に迷惑をかけるヒーローもどきは、僕が成敗します」
「分かってると思うが、戦闘に入り次第俺は民間人の避難誘導に徹する。避難完了次第応援に入るが、くれぐれも無茶してあたりのモノをぶっ壊すなよ?」
太陽の戦い方を聞いた正一郎は、何よりも破壊を恐れていた。何しろ仙台の玄関口である、下手に大騒ぎになって賠償になったらさしもの宮城県警でも支払い切れるかどうかは不明なので、最悪首切られたうえでその責任を吹っ掛けられる可能性もなくはない。
「分かってます!では、行ってきます!」
太陽が中空に浮かび、マックススピードでブライトナイトに突貫した。こうして、三者三葉の戦いの火蓋が切って落とされたのである。




