二十話 ヒーローって見てる人がいなくてもヒーローであるべきだし
ブライトナイトとの激戦から二時間。もう奴の足取りは追えないなと正一郎が見切りをつけ、転生者対策課の面々で考察タイムに入っていた。
「そんな、ブライトナイトがノレンさんを攻撃するなんて……ノレンさん何か悪いことしました?」
「んなわけあるかボケ。当然のことをしたまでだボケ」
太陽の疑念の声に切れるノレン。ぶつかりおじさんに肘鉄をするのが当然のことなのかはともかく、ノレンにばかり非は無いと正一郎は考えていた。そんな中で、ブライトナイトの行き過ぎた行動について由美が切り込む。
「アイツ、多分だけどまだこっちに突っかかってくると思う」
確かにその通りだろうと正一郎も頷く。欲しい人からの承認を得たとばかりに由美が続きを話し始めた。
「まず、勝負は預けたって言っていたことからこっちへの悪い感情はそのままだろうし、あの手の輩は嫌な時に限って攻勢に転じてくると思うんだ」
異世界でのお約束みたいなものだけどね、と付け足す由美に、太陽も遺憾ながらという顔で追随する。
「確かに、そういうやつに限ってこっちの都合の悪い時に奇襲してきたり、戦いたい相手とだけ戦うために一人になるところを狙ったりしますよね」
異世界ってそういうところなんだと正一郎とノレンが思う中で、ノレンが口を開く。
「ってことなら、正一郎が一番危ねぇな」
「は?俺?」
何のことだか分からないといった正一郎に、ノレンは訳を話しだした。
「だってよぉ、オレとの戦いに水差して、あまつさえ指示役して、更にアイツからオーディエンスまで奪ったんだ。恨まれて当然だろ」
正一郎は困惑した。戦いに水を差す、は分かる。指示役を先に潰すというのも分かる。しかしオーディエンスを奪うとは?と。
「見る人がいなくなったら、何が困るんですか?」
太陽も同じ気持ちになったようで、ノレンに質問した。ノレンは
「アイツ、誰もいなくなった途端に逃げたんだぜ?きっとヒーローをするのは人がいてこそとか考えていて、見る人が居なかったら戦う意味がないとか思っているタイプだろうな」
と答えた。これに憤慨したのはほかでもない太陽である。
「ヒーローを何だと思ってるんですかブラストナイトは!見る人がいなくても、人知れず戦うのがヒーローってものです!」
最初に記者会見がどうとか言っていた奴とは思えない発現じゃねぇか、と正一郎は思ったが、心の内にとどめておいた。確かにあの男の鎧はヒーロー然としているが、銃弾をはじくこともなく、攻撃に対する耐性もないように思えた。見てくれだけ形を整えているとするならば、ノレンの考察も案外馬鹿にならない。
「とにかく、今後行動する時は二人一組で行動すること。いつどこで襲われても大丈夫なように、俺は太陽と、ノレンは宝来さんと一緒に動くことにしよう」
男同士、女同士のペアを提案する正一郎。これに待ったをかけたのは由美であった。
「ええっ、う、ウチ的には皆川くんと一緒に動きたいなって思うんだけど。いつでも守って上げれるし!」
どうやらアプローチを積極的にかけていきたいようである。しかし正一郎は生粋の朴念仁であるため、そういった機微には疎いのであった。
「その気持ちはありがたいが、寝食を共にする以上同性同士の方が都合いいだろう。トイレや風呂なんかも異性が居たら落ち着かないしな」
生理現象ばかりは致し方ないと正一郎が一人頷く中、そ、それでも一緒でも大丈夫、いや大丈夫かな?駄目かも、でも、と由美がぐるぐる考え始めた。ノレンはその一部始終を確認したのち
「うん、俺も由美と一緒のがいいな。男どもよりよっぽどいい」
と正一郎に援護射撃を入れた。別に正一郎に恩を売りたい気持ちはこれっぽっちもないし、それこそ正一郎が好きなんて事はかけらもない。ただし自分以外の誰かが得をすることがとても嫌なのである。
「そ、そうだよね、落ち着かないよね」
しょんぼりとした由美を見て、仕事は終わったとばかりに満足するノレン。それに気が付かない男二人は、今後のことについて話し合う。
「じゃあ、これからよろしくお願いしますね正一郎さん!」
「そうだな。それでこれからの行動になるが、とりあえずシフトは二人一組での動きにするとして……」
全然しょげた仲間に気が付かない上司に、あーあー、これは面倒なことになるぞと思い始めたノレン。しかしここで由美に恩を売っておくのも悪くはないなと考え直し、未だ悲しみに包まれている由美の肩を叩く。
「まぁ後輩、とりあえずうまい飯でも食いに行こうぜ」
「うう、やけ食いしてやる……」
飯で機嫌が取れるなら安いもんだなと考えたノレンは、次いでと言わんばかりに正一郎へ声をかける。
「なぁ、こうなった以上通常時も拳銃は携帯しておいた方がいいと思うぜ?いつどこであの異常者が攻撃を仕掛けてくるか分からない以上、そこの嘱託員はいざ知らず、一般人のオレたちは身を守るものが必要だからな」
正一郎はノレンが一般人?と疑問に思ったが
「まぁ、確かにそれもそうだな。いいだろう。拳銃の持ち出し許可は俺がとっておく」
とノレンの提案を許可した。よしよしとノレンが内心ガッツポーズをとったことは、本人以外には解らない事である。




