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こちら宮城県警 転生者対策課!  作者: 阿野 良教
第一章 結成!転生者対策課!

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十六話 目くらましは多いに越したことはないし

「はい転生者対策課」

『俺だ!』

「よう大将、休日楽しんでるかい?」


 電話に出たノレンは、相手が正一郎だとわかると机に脚を乗せてリラックスする。しかし正一郎の言葉で状況は一変した。


『それどころじゃなくなった。マルテン案件、対象は黒煙と共に空を飛んで若林区からそっちに行ったぞ』

「おいおいマジかよ!丁度アンタがいない時に拳銃の強化案が通ったんだ!撃つぜぇ、俺はバンバン撃つぜぇ!」


 そう、なにもノレンは正一郎がいない時に何もしていないわけではなかった。拳銃の威力不足から愛用していた40口径マグナムを使う度に始末書を書かされている現状を変えるべく上層部に直訴、得意の口車に乗せてそのまま強化案を押し通していたのだ。


『いや、今回は申し訳ないがニューナンブ(いつもの)を使ってくれ、相手にの戦闘の意志がない上に見た目が小学生だ、最悪転生者対策課全体が非難の対象になりかねない』


 しかし正一郎が、そして状況がそれを許さない。マジかよクソじゃんとノレンは悪態を付き、仕方ないとばかりに深いため息をついた。何事かと由美や太陽が近づいてきたのでノレンはスマホの音量をスピーカーに変更し、全員で話を聞くことにした。


「……それで?ただ情報を投げたわけじゃないんだろ?」

『もちろんだ。俺も緊急でそっちに向かう、対処には太陽を向かわせろ。フォローで由美も入れてくれ。俺が到着するまで全体の指揮はノレン、お前が取れ。対象の名前は田中キネ、こっちに戻ってきたばかりで混乱している。出来るだけ怪我を負わせず保護するんだ』


 ノレンは正一郎の指示に少しだけ難色を示した。シフトという絶対条件を、管理者自らが破る状況は健全ではないし、なにより自分が休みの時に今日みたいなことが起こって休日返上、という事態は絶対に避けたかったからである。ぶっちゃけノレン的にはそれよりも更に深い理由が八割がたを占めているのだが。


「いや、今日はアンタ非番だろ、オレたちに任せてゆっくりしてな。なんてったってオレたちは転生者対策課だぜ?リーダーがいなくともちゃんと仕事はできるさ。なぁお前ら!」

「皆川君が居なくても、ちゃんとできるってところを見せるからね!」

「うおお!待望の初任務だ!頑張るぞぉ!」


 正一郎のような堅物をだまくらかすには数の暴力が一番だと知っているノレンは、ここぞと言わんばかりに他の面々へ声をかけた。全員の勢いと、何より自分がいなくとも回るようにしたという自身の采配に縛られた正一郎は、長い沈黙の末こう答えた。


『……わかった。現場はノレンに一任する。田中さんをしっかり保護するんだぞ』


 言質は取ったとばかりにノレンが黙ってガッツポーズをする。これで全権はノレンに委ねられた。なら好き勝手しても問題は無いよなと邪悪なことを考えるノレン。


「おう!任せとけ!」


 しかしそんなことは言葉に出さない。顔にも出さない。ほとんど詐欺師のような思考だけがノレンの中に渦巻いているのだ。この場の誰も、正一郎すら気が付かないまま通話はノレンによって切断された。この場にいるのは法螺吹き(ノレン)純情(由美)純粋バカ(太陽)という、誰がどう見ても避けるべき状況であったことを誰にも悟られずにノレンは作り上げたのである。


「さてお前ら、現場はオレたちに一任された。通話の最初に正一郎は言った、これは宮城県全体の危機になりかねない。その中でもしっかり対象を保護せよという無茶ぶりにも近いボスからの指令だ。だがお前ら心配するな。このノレン様がいれば万事うまくいく。分かるな?」


 通話の最初から二人が聞いていなかったことをいいことに、ノレンは状況を過大に伝える。二人の表情が硬くなった。


「まず由美!まずは市民の安全だ!転生者なら魔法の身体強化なり視力強化なりで相手の早期発見が出来るだろ!今から全体通話をアプリでつなげるから、逐一情報を太陽に送ってやれ!」

「はい!頑張ります!」


 まずは一人、とノレンは内心でほくそ笑む。そうしてもう一人にもノレンの毒牙は迫った。


「次に太陽!お前は空を飛んで対象に近づけ!なんだっけ、田中さんとか言ってたよな!名前を呼んで、一緒にこっち来いって言ってやれ!ヒーローとして最善の行動をとるんだぞ!真のヒーローは相手の心すら奪っちまうもんだ!」

「よっしゃ!やってやりますとも!


 こうして二人はノレンの言う通りに動く()となった。


 一見すればまともなことを言っているかもしれないが、この状況すら彼女の手の内にすぎない。彼女がやろうとしているのは転生者対策課の私物化。つまり正一郎よりも偉くなることである。銃が撃てるからこの課に飛びついたとはいえ、キャリアというものにノレンは興味があった。正確には、キャリアから続く自分の手駒の増産という野望があったのである。下からでも簡単に上席を飛ばせる世の中になったとはいえ、やはり上から動かした方が簡単かつ楽しい。


 そして何より、ノレンは他の人間とは一癖も二癖も違う最強の法螺吹き野郎であるということが、これから判明することとなる。

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