十四話 何が使えるかとか後々分かるし
「何で逃げたんだ」
厳しい口調で正一郎が問う。ちなみに現在どこにもいかれないように正一郎の車の中に太陽を連れ込み、後ろ手で手錠をかけ、隣には拳銃を抜いたノレンがいる。
「だ、だってあれでしょ?僕を人体実験の材料にするとか、違法な行為を強要したりするんでしょ?ネットに書いてあったもん」
陰謀論に踊らされるたちの人間なのかー、と正一郎は眉をひそめた。一方ノレンは同じことを考えながらも口角が若干上がる。
「馬鹿オメェ、警察がそんなことするわけないだろぉ?ただちょーっとお前の力を借りたいんだよ。警察は今転生者を集めて世のため人のためのヒーロー部隊を作ろうとしてるんだ。それに協力してくれたらそれなりの金は用意するぜぇ?」
ノレンお得意の口車が突然火を噴く。正一郎はいい事ばっかり言ってるなぁという感想で、特に訂正はしなかった。
「ヒーロー……!」
そして自己顕示欲からマジシャンを目指した太陽が、ヒーローという言葉に反応する。それを見逃さなかったノレンは畳みかけに入った。
「そうだ、ヒーローだ!この宮城県の平和は、お前にかかっているんだぜ!」
ノレンのその言葉に、太陽はまんまとヒーローになった自分を想像した。彼の頭の中には高らかに笑いながらマントを翻し、ビル群の中を悠々と飛ぶ自分の姿がありありと浮かんでいる。うっとりとした顔まで見せている。正一郎もそんなことはないなんて無粋なことは言わなかった。業務に夢を見せるのも、上司の務めであると思ったからである。それにこいつはコイツで扱いやすそうだなと、打算的なことも考えていた。
「僕、やります!やらせてください!」
希望に満ちたような顔で太陽が決意のガッツポーズを見せる。話はうまくまとまった。
「それで、キミのことを教えてくれないか?年齢とか、能力とか」
ここで屋ッと正一郎が口を開く。物を浮かせたり、自身が飛んだりしている辺りで正一郎は大体の正解を導き出せていたが、こういうものは本人から語らせた方がより詳細にわかるというものである。
「はい!朝日太陽24歳!神様から貰った能力は浮遊の力で、自分を浮かせたりものを浮かせたり出来ます!」
「具体的には、どういう形でものを浮かせられるんだ?」
そう正一郎が促すと、得意げに朝日は語りだす。
「そうですねぇ、物体の質量とかにもよりますが、僕の魔力量を考えると……大体大型トラックくらいなら五分ほど浮かびます。軽い物なら素早く飛ばせます。僕くらいなら時速換算で120キロの速度が出ますし、小石くらいならライフル銃並みの威力で飛びますよ」
案外強い能力に、正一郎はおおっ、と声を上げた。思っていたより能力が案外強かったからだ。活用の幅も広い、空からの偵察に相手のかく乱。何なら相手を宙に浮かせて拘束することも可能ではないか。荒浜の件に彼がいてくれたら心強かっただろうとしみじみ思う正一郎であったが、過ぎたことは仕方ない。
「なるほど、ではこれから俺たちと一緒に働いてくれるか?」
正一郎が笑顔でそう告げると、朝日も笑顔で答える。
「はい!ところで記者会見はいつからですか?」
とんちんかんなことを。
「うん、うん?」
思わず聞き返す正一郎。
「だってヒーローと言えば記者会見じゃないですか!あこがれてたんですよね!ヒーローインタビュー!」
ぱぁぁ、と笑顔の止まらない太陽に、正一郎は頭を抱える。そう、コイツこういうヤツだ。能力は強力なくせして、言葉を選ばず言えばクソボケだった。
朝日太陽(24)
朝日家の四男で四人兄弟の末っ子。死ぬほど甘やかされて育てられてきたので、最終的によく言えば天真爛漫、悪く言えばクソボケ野郎となった。発想力、というより空想力が非常に高く、やれると思ったことには一直線にやるタイプだが、そのせいで被害を被るのは周りである。兄たちは非常に甘いが、兄の家族、特に奥様方からの受けが悪い。




