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古代の魔女  作者: 八草月
最終章

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第46話 とある邪神と少女の物語

 昔々、あるところに人々を困らせている邪神がいました。

その邪神は人々が困っている姿が面白くて仕方ありませんでした。しかし、人々に迷惑ばかりかけて喜んでいる邪神の事を神々はよく思っていませんでした。そんな事には気づかず邪神は毎日、毎日、人々を困らせてはその様子を面白がっていました。

ある日のことでした。邪神は人々を困らせために畑に雷を落としました。しかし、運悪くその雷は近くにあった豊穣の神の像に当たってしまいました。その光景を見た豊穣の神は怒り狂い、神々を集め、ついには邪神を天界から追放してしまいました。

天界から追放され、地上に降りてきた邪神を快く思う者は地上には誰一人としていませんでした。邪神はどこに行っても厄介者扱いでろくに相手にしてもらえません。邪神はついに自分が今までしてきた事が人々にとってどれほど迷惑だったか気づきました。

それからというもの邪神は人々に会うのが心苦しくて、人々と会う事を拒み続け、山小屋で一人で生活していました。人々も自業自得だと思い、邪神に関わる者は滅多にいませんでした。

しかし、一人だけ邪神に関わっていた少女がいました。その少女は、たまたま山菜採りに来ていた所をオオカミに襲われ、逃げているうちに来た道が分からなくなり、迷子になっていたところを邪神に助けてもらっていたのでした。

それ以来、少女は邪神に毎日の様に会いに行っては日が暮れるまで雑談をしたり、一緒に遊んだりしていました。邪神も最初は自分に好意を抱いてくれる少女への反応に困っていましたが、次第に心を許していきました。

いつしか邪神と少女はまるで親子の様に親しい仲になっていました。

そんな日々が5年程続き、少女はすっかり大きくなりました。

ある日、少女は邪神に言いました。

「私、お医者様になるためにこの村を離れて大きな街に行くことが決まったの。だから、あなたとはしばらく会えないと思う。けど、待っていて。街で必死に勉強して、お医者様になれたらこの村に絶対に戻ってくる。それまで待っていて。」

その夜、邪神は不吉な夢を見ました。

その夢では暗闇に包まれた世界で周りの建物は燃え盛っており、辺りには悲鳴が響き渡っていました。そんな燃え盛る街の真ん中で少女がモヤがかかった何者かに刺され、口から血を吐き倒れていました。そして、そんな少女を絶望した顔で泣きながら見ている邪神の姿がありました。

あまりの内容に、邪神は思わず飛び起きてしまいました。

「夢か…」

邪神はそう呟き、再び眠ろうとしましたがあの夢が頭から離れません。邪神は少女が不安で不安で仕方なくなり、二つのペンダントを作りました。

次の日、少女を見送るために邪神は久しぶりに山を降り、村に訪れました。村では少女を見送る準備で忙しく、誰も邪神に構ってくれません。邪神は悲しい気持ちを抑えて少女の家へと向かいました。少女の家のドアをトントントンとノックすると中から少し大きな服を来た少女が出てきました。邪神は別れが辛く、上手く喋れません。そんな邪神の姿に少女は笑いだしました。邪神は恥ずかしくなり、顔を真っ赤にし、ペンダントだけ渡して山へ帰ってしまいました。

少女は邪神に対して最後に何か言ったようでしたが邪神は上手く聞き取れませんでした。

邪神が完全に見えなくなると少女はポロポロと泣き出しました。そして、少女は街へと向かって旅立ちました。

少女が街へ向かってからというもの邪神は暇で暇で仕方ありませんでした。そんな邪神の楽しみは少女から月に1回ほど来る手紙でした。

手紙には街での事、最近の社会情勢について、邪神の生活を心配する声、人間関係の愚痴などが書かれていました。

邪神も少女に返答を書いては送っていました。

そんな生活が3年くらいたった頃、急に少女から手紙がこなくなりました。邪神は少女の身に何かあったのか、心配で心配で仕方ありませんでした。手紙がこなくなってから2カ月が経った頃、邪神は街へ行く事を決めました。

邪神はすぐに身支度を整え、街へ向いました。

 街についた邪神は唖然としました。

街を守るはずの防壁は跡形もなく壊されており、街のあちこちから火の手が上がっていました。そして、邪神が最も驚いたのは街を大きなドーム状の物が包んでいたことでした。

邪神はドーム状の物に無理矢理穴を空け、街の中へ入りました。

街の中はより、悲惨でした。街のあちこちに死体が転がり、死体に火の手が移り、死体を伝って火が他の建物に移る。

そんな地獄の様な中、邪神は少女を必死探しました。邪神はふと3年前に見たあの夢の事を思い出し、街の中心へ向かってみました。

街の中心に向かえば向かうほど日の光がドーム状の物に遮られ、街の中心に近いところではまるで新月の夜の様に真っ暗でした。そんな中でも邪神は中心へと歩み続け、遂に、少女を見つけました。邪神は3年ぶりに会う少女に向かって涙を垂らしながら歩きます。少女も邪神の存在に気づき、邪神の元へ向かいます。二人は両手を大きく開き、抱きしめようとします。二人がもう少しで抱きしめあおうとした時、少女の奥に角が生えた魔と呼ばれる存在が現れます。魔は少女を後ろから手に持っているナイフで突き刺そうとします。

邪神は少女を守るため、少女を自分の後ろに向けて、思いっきり引っ張ります。

少女が邪神の後ろに来たのと同時に邪神の背中に激痛が走ります。邪神は魔を掴むと自分の正面まで持ってきて自分の胸元にあるペンダントに力を込ます。すると、神々しい光の矢が正面にいる魔に向かって放たれます。魔はまるで花火の様に爆発します。邪神は少女に覆い被さる様に倒れました。

少女は邪神に向かって言います。

「なぜ、あなたの身体から光が天に向かって放たれているのですか。」

邪神は口から血の塊を吐きながら落ち着いた口調で言う。

「僕はもうすぐ天界へ帰るんだ。身体にある光が全部天に向かって放たれたら僕は消える。」

その言葉を聞いて少女は泣きながら首を横に振る。

「そんなに悲しまないでくれよ。小さなお姫様、聞いておくれ。地上に来て、孤独だった僕と初めて話してくれた君に僕は本当に感謝している。そんな君に3年前、託したペンダントがあるだろ。あれは破壊と再生のペンダントさ。紫の方が破壊のペンダントで全てを壊し尽くす、緑の方が再生のペンダントで全てを再生させる。どちらも僕しか作れないペンダントさ。そのペンダントは強大な力を宿している。世界の理を壊してしまうほどに。だから普通は誰にも渡さないし、作りもしない。けど、僕がいなくなった後も僕という存在を君には覚えておいてほしいからね。だから、僕は君にペンダントを託したんだ。それに、君なら世界を破壊するような事はしないと思うしね。おっと、そろそろお別れの時間のようだ。最後に、僕は何も死ぬわけじゃない。僕は腐っても神さ、天界から君のことをずっと見ているよ。バイバイ、あなたに幸せがあらんことを。」

邪神はそう言い残し天界へ消えていきました。

「天太玉命様。あなたに誇れるような人間に私はなってみせます。だから、天界から見守っていてください。」

少女は涙を拭き、天に向かって言った。その瞬間、微かに空が光ったのを少女は感じた。

少女はその後、王国に仕える内政官として活躍し、その功績が認められ、王国のナンバー2と呼ばれるまで上り詰めた。そして、前国王が亡くなったタイミングで王国を乗っ取り、王国全土で民の事を第一とした善政を敷く。損得なく、誰にでも優しく接する態度からいつしか『女神様』と呼ばれ、慕われていた。当の本人は死ぬまで女神様という名前を嫌い、私はただの人間である。尊敬されるべき神はあの方意外にいない。と繰り返し主張した。

邪神に託されたペンダントはその後、王国の家宝となり、どちらも現在まで使用されていない。

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