第41話 賢者の過去6
皇国暦2000年
―センテリア皇国 首都センシティ―
小さな女の子を抱きながら泣いている白銀の髪をした少女を私は体育座りで無言でじっと見つめる。
「どうしたんだアオイ。」
突然肩を叩かれ、後ろから声をかけらる。私は「うわっ」と驚き、後ろを振り返る。
「お姉様、突然声をかけないでください」
「すまんすまん。お前があまりにも神妙な顔で過去のお前の事を見つめていたから少し気になってな。何を考えていたんだ。」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
「いや、私とシズクが最初に会った時って傍から見たらこんな感じだったんだな〜。って思って、少し感慨深かっただけです。」
少女の方を見ながら穏やかな声で言う。
「そうか。どうだ、私がこの世界に呼んだ理由が分かったか?」
ニヤニヤした顔から真顔に戻ったお姉様が良く通る声で言う。
「いや、まったくわかりません。」
私が断言するとお姉様は驚いた表情をした。
「意外だな。お前ならてっきり私がこの世界に呼んだ理由が分かっていると思っていたんだが…、まぁ、分からないなら仕方がない。本当はお前自身に気づいてもらいたかったのだがな。」
お姉様はそう言うと宙に二重の円を描いた。すると世界がまるで太陽が消えたかのように暗くなり、火が上がり、悲鳴が鳴り響き、辺りには死体が転がった何処かの街と3体の大きな石像の前で剣を構える少女の姿が映し出された。
「お姉様、これは一体何ですか。」
あまりの光景に驚きながら聞く。
「これは私が見た景色だ。」
小さく呟く。
「お姉様が…?」
予想外の解答に聞き返す。
「そうだ。あの石像を守っている少女、誰だか分かるな。」
少女の方を指差しながら聞いてくるお姉様に
「…私です…」と答えるとお姉様は「そうだ。」と言った。
しかし、私はこんな光景見たことがない。疑問に思った私は聞いてみる。
「けど、私はこんな光景を見たことがないですし、石像を守った記憶もないです。」
するとお姉様の声が少し小さくなり、「これはな、私がお前の未来を見た時の記憶だ。」と言った。
「私の未来…?」
再びの予想外の解答に頭に大きな?が浮かぶ。
「そうだ。お前の未来だ。」
どうなっているんだ。どうしてお姉様は私にこの光景を…。いや、そもそも未来を見るには…。
「お姉様は私に何かを隠していますね。」
私は真剣に言う。
「どうしてそう思うんだ。」
真顔からニヤけ顔に戻ったお姉様が聞く。
私は理論的な声でお姉様に説明する。
「本来、未来を見ようと思うとそれこそ、一生分の魔力を消費するはずです。そんな事、普通はできません。普通の人なら莫大な魔力に肉体が耐えきれずに耐えきれない痛みと共に肉体が爆発するはずです。」
「私には肉体がないからその理論には含まれないな。」
以前ニヤニヤしているお姉様ははぐらかす様に言う。
「肉体がなかったら尚更です。本来、魔力は肉体に引き寄せられる物。肉体がないのにそれ程の魔力を集めようと思ったら魔力を集めるのに数千年単位の時間が必要なはずです。つまり、お姉様はこの地獄の様な光景を私に見せるために死んで魂だけの状態になった時からずっと魔力を溜めてきた事になります。数千年単位で時間が必要なことを何も情報を知らずにやるとは考えられません。お姉様、何を隠しているんですか。」
私は断言する。
「それを知りたいならこの地獄の様な光景が起こっている場所に来い。」
お姉様はそう言い残し去っていった。それと同時に私の意識も闇に落ちた。
目が覚めるとそこはベッドの上だった。
とある王族のメモ
未来を見る魔法は女神の日記の中の魔法使いが使用していた。その姿に憧れた数多くの魔法使いが試みたがいずれも成功しなかった。なお、女神の日記は実話と神話を混ぜた物語であることが近年、証明されているためこの魔法使いの存在も事実である可能性もある。




