第39話 賢者の過去4
皇国暦2000年
―センテリア皇国センテリア城―
戴冠式の前日に皇都に戻った少女はセンテリア城の自室で泣いていた。何時間も何時間も泣いていた。
「ウッウッ、ヒックヒック。お母様、お姉様…。」
そう何度も何度も繰り返し言いながら泣いていた。
涙が枯れるまで泣いていた。
翌日、泣き終えた少女の目は真っ赤に腫れ、瞳からは生気が消えていた。その姿は"人形"そのものだった。そこに上機嫌なサミュエル卿が部屋に入ってくる。
「アオイ様、ご機嫌はどうですか。」
「サミュエル卿、久しぶりに城に帰ってこれてぐっすり眠れました。」
少女は作り笑顔を浮かべた。
「それは良かった、と言いたいところですか目が腫れています。泣いていたんですか?」
男が笑顔を作りながら訝しむ。
「やはりわかりますか。そうです。私は泣いていました。」
「それはこの戴冠式が嫌だからですか?」
男の目が鋭くなる。
「違います。久しぶりに城に帰ってきたら安心して涙が止まらなかったんです。この城に返してくれたサミュエル卿には本当にお礼申し上げたい。」
少女は深々と男に向かって礼をした。
「それは良かった。」
まさか感謝されると思っていなかったのかほんの少しだけ驚いた素振りをした男はすぐに元の姿に戻った。
「ところでなぜサミュエル卿はここへ?」
少女の問いに男は何かを思い出した顔をした。
「そうそう、馬車の用意ができましたので正門までお越しいただきたいと言いにきたんでした。」
「そうですか。では、正門へ参りましょう。」
少女は少し震えた声で男に言いドアを開ける。
そのまま男と少女は正門まで向かった。その時も少女は笑顔を常に浮かべていたが瞳だけは僅かに怖がっていた。
少女は正門まで行くとサミュエル卿と共に馬車に乗り込んだ。
馬車は城から戴冠式の会場であるセンテリア大聖堂までの間、通称城前通りと呼ばれる大通りを抜ける。そこには新しい王女の姿を一目見ようと群衆が左右にびっしりといる。
そんな群衆に対して少女は笑顔で手を振る。
そんな事をしているうちに馬車はセンテリア大聖堂に着く。少女は馬車から降りて大聖堂の前へ進んでいく。
少女が大聖堂の前のドアまで着くとドアが大きな音を立てて開く、少女はそのまま真っ直ぐレッドカーペットの上を進んでいく。左右には神話に登場する神々が描かれたステンドグラスがある。そしてこの大聖堂の中で最も大きいステンドグラスはセンテリア皇国を作ったとされている女神が描かれてある。そんな女神のステンドグラスの前にある王座の前で待っていた高齢のセリアン教の大司教から王冠と杖を貰う。
その後少女は大聖堂から出て馬車に乗る。
少女が乗り込んだ馬車は城へ向かって再び来た道を引き返す。少女は笑顔を崩さず群衆に手を振る。
少女を乗せた馬車は城に着く。少女は馬車から降りる。その時だった。薄紫色の髪をした少女が衛兵達を切り捨てながら少女に向かって走ってくる。衛兵達が止めようとするが止められない。薄紫色の髪をした少女は少女に刃を向ける…。
とある王族のメモ
センテリア大聖堂…セリアン教の総本山。皇国を建国した女神がそこに眠っているとされている。




