第38話 賢者の過去3
皇国暦3500年
―センテリア皇国ビリーディア城―
「お母様!」
白銀の髪の少女が目を輝かせながら鉄格子越しに言う。
「…アオイ?いや、アオイがここにいるわけがないわ。きっとこれは私の妄想。」
「何を言っているのお母様。私はここにいるわ。妄想なんかではなく実際にここにいる。」
「本当にアオイなの?妄想ではない、本物のアオイなの?」
「そうです。私は本物のアオイです。」
「アオイ…。」
その女性は泣き出した。そして鉄格子越しにいる少女を鉄格子の隙間から手を出し抱きしめた。
すると、少女の方も今までの辛かった事を全て出すかのように泣き出し、女性を抱きしめた。
二人は抱き合ったまま泣き続けた。
30分位経ったら、二人は泣き疲れたのか泣くのをやめ話し始めた。
「それでアオイ。どうしてあなたはこんなところにいるのですか?」
「お母様。私はサミュエル卿の命令で王座につきます。」
「ダメよそんな事。あの男の事だわ。どうせ民や国の事を考えずに自分勝手な事ばかりやる。民や他の貴族を蔑ろにするような事をする。そのくせして責任はすべて王女にある。王女が悪いと言い出すに決まっているわ。王座につくということはサミュエル卿の尻拭いを。サミュエル卿がやることによって生じた民や他の貴族達の反感の対象がすべてあなたに行くということよ。そんな事、絶対に許さない。」
「そんな事分かっていますよ、お母様。そうだとしてもこれ以外にお母様やお姉様をこの城から出す方法はないんです。サミュエル卿は約束してくれました。私が操り人形になったらお母様やお姉様をこの城から出してくれると。私一人の犠牲で家族が助かるなら、私は例え全世界の人々の反感を買おうが王座につきます。それではお母様、さようなら。また、いつか会いましょう。」
少女は女性の前から去った。
女性は少女の事を何度も何度も呼んだが少女が振り返る事はなかった。ただ、感情も思考も全てを捨てた、操り人形のような顔をしていた。
そして少女はそのまま、サミュエル卿が待っているであろう先ほどサミュエル卿と会った部屋へ向かった。
「アオイ様、どうでしたか。お母様とは充分に話せましたか?」
少女が部屋に入った瞬間、いかにも性格の悪そうな笑顔で話しかける。
「はい。サミュエル卿のお陰で良い会話ができました。」
少女は感情の籠っておらず、抑揚のない声で答える。
「それは良かった。それでは早速皇都に戻り、アオイ様が王座につかれるための準備をいたしましょう。」
男が立ち上がり、ドアを開け、少女を先導する。
「はい、サミュエル卿。」
少女はそんな男の後を付け、城の正門に付けてある馬車に乗り込み、センシティに向かった。
とある王族のメモ
センテリア皇国時代のエルベニア大公国…今よりも領土が小さく、人口も少なかった。センテリア皇国の属国のような扱いを受けていた。




