第36話 賢者の過去
皇国暦3500年
―センテリア皇国センテリア城女神の間―
「やっぱりまだお母様は眠っているよね。どうしよう、今日は誕生日だからいつもより早く起きちゃった。さすがにこの時間にお母様を起こすのはダメだよね。何処か時間を潰せる場所は…。そうだ。書斎に行こう。女神の日記の続きを読みたいし。」
その少女はそう独り言を言い、女神の間を去り、書斎に向かった。
私もその少女の後を追って書斎に向かった。
少女が女神の日記を読み出してからかれこれ2時間は経ち、空も赤一色から青に移り変り、鳥達がまるで朝だということを伝えるように大合唱をしだした。
少女が本に夢中になっている間にこの城では不審な動きがあった。衛兵達の数が増え、この辺りではあまり見かけない貴族の姿まで見え始めた。そんな事には気付かずに少女は女神の日記の世界に、独特の世界観に浸っていた。
そんな時だった。衛兵が2、3 人急に乱雑に書斎のドアを開けて中に入ってきたのだ。
「何事なの?あなた達はだれ?」
少女は驚いた表情のままその衛兵達に聞く。
衛兵は何も答えずにただ一言、大人しく付いてこい。とだけ言った。
その言葉に納得のいかない様子の少女は衛兵達に反抗するが衛兵達にすぐに制圧され、何処かに連行していった。
衛兵達の後を付けると女神の間に入っていった。
女神の間にはその少女だけではなく、赤い髪をした女性と薄紫色の髪をした少女もいた。
しかし、薄紫色の髪をした少女の方は抵抗した時に殴られたのか顔に紫色の痣ができている。
しばらく経ち、兵たちをたくさん引き連れた男が女神の間に来た。
「サミュエル卿。これはどういう事か事情を説明いただけますか?」
赤い髪をした女性が男を睨みつけながら言う。
「これはこれは王女様。いや、元王女様。おぉ〜怖い怖い。そんなに怖い顔で睨みつけないでください。しっかりと説明してあげますから。そうですね。要はこれはクーデター、反乱ということです。」
「そんな事は分かっている。私が聞いているのはなぜ裏切ったかということだ。」
「裏切った理由。そんなのこの国を支配するために決まっているじゃないですか。元々我々もこんな荒業したくなかったんです。我々がこんな事をする原因となったのはあなたのせいです。アフロディーテ2世。あなたが我々の言う事を何でもかんでも拒否し、挙句の果てには我々を王都から遠いレーヌまで左遷した。ここまでの仕打ちをされて、我々が黙っていると思いますか?」
男が赤い髪の女性と視線を合わせて憎しみがこもった声で言う。
「けど、それはあなた達の案は全て自分の利益を追求するような、民やこの国の事を何一つ考えていないような案だったのが悪いんでしょ。それにあなたを左遷したのも元といえばあなたが他の貴族と勝手に戦争を始めたから。全てあなたが悪いのよ。それなのにこんな仕打ち、あんまりだわ。」
「黙りなさい。今さら何を言おうと無駄です。あなたには王座から降りてもらいます。そしてあなた達王家の人間はビリーディア城に入ってもらいます。」
「次の王座には誰が就くの。」
女王が小声でボソボソと聞く。
「そうですね。一応王家の人間に就いてもらうつもりです。王家の人間は信仰的な意味で必要なのでね。」
とある王族のメモ
女神の日記…センテリア皇国を作ったとされる女神の日記の修正版。女神は現在の全て人類の始祖とされおり、センテリア皇国の国教でもあるセリアン教はこの女神を信仰している。




