第34話 賢者、闇へ…。
帝国暦1401年5月
―フランティア王国パリース城―
「おい、シズク、しっかりしろ。」
私はそう言いながらシズクの身体を大きく揺すぶる。
はっ。とシズクは意識を取り戻した。
「お姉様、私は何をしていたんですか?
ってお姉様!血が…。」
最初間抜けそうな顔をしていたシズクは私が出血している姿を見るや慌てだした。
「お姉様、回復魔法をかけるので動かないでください。ヒール。」
シズクの手から出た黄色い光が私の傷口に当たる。すると私の傷口はすぐに塞がった。
その姿を見たシズクは安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうシズク。私はヒールを真後ろに放てないからお前の力を借りるしか方法がなかったんだ。」
「お姉様、そんな事、私が知らないとでも思っているですか。それよりもこの先から感じる禍々しい魔力、お姉様も感じているのでしょう。」
険しい表情をしながら階段の先をシズクは見つめる。
「あぁ、この先には何か強大な力を持った何かがいる。」
私達は慎重に奥へと階段を降りていく。禍々しい魔力はより強くなっていく。
「シズク、もう少しで出口だ。気を引き締めろ。」
最後の一段を降り、出口を越えた先には力を蓄えているある一人の少女がいた。
「ユヅキお姉様?」
シズクが最初に言葉を紡ぐ。
その言葉を聞いたお姉様はこちらを向く。
「どうしてお姉様も生きているんですか?あの時、死んだはずじゃなかったんですか?」
私も理解できていない頭を無理矢理動かして小声で呟く。
何も答えず、ただひたすら魔力を蓄えているお姉様に私は察した。
「お姉様もそうなんですよね。お姉様もベーンやシュレッケンの様に操られてるんですよね。無様なものですよね、あのお姉様が誰かに操られるなんて本当に有り得ない、認めない。私の尊敬するお姉様が操られるなんて絶対に認めない。」
私は力強く、思いを込めて言った。
そして最後に「私がその支配からお姉様を解放してあげます。」
そう笑顔で宣言し、私はお姉様に向かって歩く。
近づけば近づくほど禍々しい魔力に圧倒されそうになる。帰りたくなる。
後ろからシズクの「お姉様…。」という声が聞こえてくる。
ますますシズクの元へ帰りたくなる。シズクを思いっきり抱きしめたくなる。
けど、私はお姉様を支配から解放するんだ。そうしなければいけない。あの苦しそうな顔でただひたすら魔力を蓄えているお姉様を救うために。
一歩一歩歩んでいく。
そしてお姉様の側まで来た私はお姉様を思いっきり抱きしめた。
私の中にお姉様の蓄えていた凄まじく膨大で禍々しい魔力が乗り移る。
苦しい。あまりの魔力の多さでまるで魔力の海に溺れそうな感覚に陥る。
ヤバい、意識が朦朧としてきた。
「お ね え さ ま…」
そうつぶやき私の意識は闇の中へ落ちた。
とある王族のメモ
五賢者…世界的に優れた者をレーヌ帝国の皇帝が指名した組織。




