第3話 賢者、正体がバレる
翌日、アイと私は町外れにある教会に行った。
「こじんまりとした教会ですね」
「あぁ、そうだな。けどこれくらい人の数が少ない方が良い。」
「さっきから、思っていたんですけど何でアオイ様、フード被って姿を隠しているんですか?外せば良いじゃないですか。これではまるで、追ってから逃げているようです。」
そう言いアイは私のフードを取ろうとした。
「おい、こら、やめろ」
私は必死に抵抗したが、ついにはフードが取れてしまう。フードから誰もが目を奪われるようなきれいな白銀の髪が姿を現し、辺りにどよめきが生まれる。「おい、あれって」「あぁ、あの白銀、古代の魔女だな」「確か、古代の魔女の居場所を役所に届けたら金が貰えるんだろ」
私はアイに言った。
「こうなるからイヤだったんだよ。私のユニークスキルである『胡蝶の夢』は歴史を書き換える事ができる。正確には人々の記憶に干渉し、書き換えると、言った方が正しいのかもしれないけどね」
「じゃあ、魔法使うんですか?」
「いや、使わない。私はこの魔法が嫌いなんだ。この魔法は、確かに強い。けど、強い魔術にはそれなりの責任が必要なんだ。それに私の力を求めて近寄って来る者ばかりで、私という人に興味があり寄って来る人なんて私は長い人生のうちで、三人しか見たことがない。この魔法があるせいで、私は私自身に興味を持って貰えない。」
「すいません、そんな事情があるとも知らずにフードを取ってしまって。」
「いや、良いんだ。これは良い機会だと思う。予定変更だ。アイの適正検査が終わったら王城に行く。そして王に謁見する。さあ、さっさと適正検査を終わらせろ!」
「古代の魔女様。お喜びください。アイ様の結果が出ました。彼女は、闇属性に適正があります。それも、かなり強力な適正があります。それこそ賢者に匹敵するくらいの素質を持っているかもしれません。」
突如、私の中でトラウマが蘇った。私が、この力が嫌いになった原因。私が森で引きこもるようになった原因。私の大好きだったあの人の事。全部、全部、全部。一気に身体中の生気が奪われた。そして、アイの今後を考えると… 自分のような思いをしてほしくないそう、強く思った。
「そうか… 賢者に匹敵する程の力を持ってしまったか。良かったなアイ、これで将来は安泰だぞ。少なくとも働き口には困らない。」
私の言葉にアイは何か複雑そうに
「アオイ様…」
と言った。
「行こう。アイ、レイヌ城にこの国の王城に」
今の私はどんな顔をしているんだろう。絶望、悲しみ、苦しみ、怒りそれらすべてを混ぜ込んだ、そんな顔をしているのだろうか。「そんな顔、私は見たくないですよ。アオイ様。」
「アイ。そうだな、すまなかった。」
「それでこそ古代の魔女様です。」
これから私はたくさんの辛いこと、絶望に襲われること。たくさんあると思う。けど、この子だけは絶対に守ってみせる。古代の魔女の威信にかけて。
とある賢者のメモ
胡蝶の夢…古代の魔女 (アリタ・アオイ)の持つユニークスキルの一つ。精神干渉魔法の一種。効果は対象の記憶を書き換えられること。また、このスキルは範囲スキルのため複数人の記憶を書き換えることも可能。だが、本人はあるトラウマがあり、このスキルを嫌っている。




