第27話 賢者、地下牢に入る
帝国暦1401年4月
―フランティア王国 パリース城地下牢―
「お前の裁判は2日後だ。それまではここで大人しくしていろ。」と看守の男が私を牢に入れる。牢は私の家の隠し部屋の半分程の大きさだったが、これでも他の牢に比べたら大きい方だろう。私がシズクの姉だからだろうか。と、思っているとドアが開き、中からアイと意外な人物が現れた。「アイは来るだろうと思っていたが、お前は意外だな。フィレール卿。敗戦の将に何の用だ。」と聞くとアイが「アオイ様。逃げ出しましょう。」と言い出した。「アイ、すまないが私はここから逃げるつもりはない。それにこんなところ、逃げようと思えばいつでも逃げられる。」と真剣に言うと「それじゃあ逃げ出してくださいよ。アオイ様。あなたは裁判で絶対に死罪になります。私は、あなたが何も知らない群衆の前で反逆者だと、悪者だと思われて殺されるのが嫌なんです。だから、逃げ出しましょう。」そう食い気味に言うアイに「もう一度言う。私はここから逃げるつもりはない。ここで逃げたら、今まで私がやってきたことが全て台無しになる。そんな事はあってはならない。それに私は覚悟を決めたんだ。最愛の義妹のために死のうと、こんなにも良い死に場所はない。こんなにも『義』を貫ける死に場所はないと。だから私は逃げ出さい。アイにはすまないと思っている。勝手にこんな事をやって、勝手に死のうとして。本当にすまないと思っている。けど、これは私の4000年の人生の中で私が唯一見つけ出した死に場所なんだ。わかってくれ。」と納得できていないアイに言う。それでも。とアイが言いかけたと同時にフィレール卿がしゃべりだした。
「アリタ卿。私はあなたのことが嫌いでした。初めてあった時、あなたは私にこう言いました。私はシズクの決意を尊重する。と、王家の敵であるデュラン卿の味方をしておきながら何を言っているんだと思いましたよ。そして、あなたが王に対して反乱を起こした。その時、私はあなたに対する怒りで一杯でしたよ。王のお陰で公爵になれた、そして王の決意を尊重する。と私に言った。それなのにあなたは王に反逆的な諸侯と反乱を起こした。その後、よりにもよって私の陣に降伏してきた。正直、あなたの事を殺したかった。けど、降伏した者を殺すのは騎士道に反する。それに、どうせあなたは死罪になって死にます。だから、ここで殺してはいけない。そう思って必死に我慢しました。けれど先ほどの王との会話を聞いて驚きました。あなたへの印象がだいぶ変わりました。まだ、信じられない部分もありますが、あなたへの評価はだいぶ上がりました。その上で言えることがあります。あなたはこの国のため、そして王のためにここで死んではいけない人です。だからここから逃げ出してください、と言おうと思っていましたが、あなたの覚悟を聞き、変わりました。私は何も言いません。」と言った。そんな彼にアイは何か言っているが、私はそんな事気に留めないで「その心意気に感謝する。そして、あの時は貴殿のことを馬鹿にするようなことを言い、すまなかった。あの時は作戦実行のため仕方なかったとはいえ、本当にすまなかった。私の覚悟を受け止めてくれたフィレール卿に一つ、お願いがある。聞いてくれるかな。」と言った。すると「内容によりますが、大体のことは聞きましょう。」言ってくれた。「私の部屋の中にある本の中に作者がとある王族になっている本が何冊かある。それをシズクに渡してくれ。」と笑顔で言った。分かりました。と了承してくれたフィレール卿に「感謝する。私は貴殿を高く評価している。私がいなくなっても義妹を頼む。」と言い、「そろそろ、面会時間が終わるようだ。今日は来てくれてありがとう。楽しい会話ができた。アイもありがとな。」と言うと二人は帰って行った。これで私がやるべきことは全て終わった。後は2日後の裁判の日まで大人しくしているだけだ。
とある王族のメモ
フランティア王国の裁判は貴族6人と王がが裁判官となって被告人を裁く。一般的に貴族達は1票、王は3票の票を持っている。




