第24話 賢者、決意する
帝国暦1400年
―フランティア王国パリース城玉座の間―
「お姉様の件も済んだので、本題に入ります。先月、エルベニア大公国が我々の領土を不法に占拠したことを皮切りにエルベニアとの関係が非常に悪化している件について、何か良い案がある方はいますか?」とシズクが辺りを見渡すと私の前にいた男が「私に一つ、良い案があります。」と言った。場所的に公爵だろう。と思いながら聞く。「まず我々、フランティア王国とエルベニア大公国との戦力差ですが、エルベニア単独であれば我々の戦力が大きく上回っていますが、エルベニアの背後にジャポーネがついていると考えると我々の方が圧倒的に不利でしょう。そこで敵を我々の領地の奥地まで誘い込み、こちらの方が優位に戦える戦場で一気にかたをつけるか、敵が我々の領地に入っている間にエルベニア領への侵攻をし、撤退していく敵を追撃するのが現実的でしょう。」とスラスラと言った。確かにその案であれば敵を撃退する事も可能であろう。私が大将であればこの案を採用する。と感心していると「フィレール卿の領土はエルベニアの真反対だからそんな自分勝手な案を提案できるだろうが我々のようなエルベニアに近い領土の者は自分の領土を荒らされるのだ。我々は断固反対する。」と私の横の40歳くらいの男が言った。「今は有事です。国の危機です。それなのに自分の事しか考えていないような人に自分勝手とは言われたくありません。私の案に反対するならあなたが代案を出してください。デュラン卿。」とフィレール卿と名乗る男が言う。「王よ、そもそもこの問題については我々の方で全て済ませることになっていたはずです。王が口出しする問題ではありません。」と王であるシズクに向かってキッパリと言った。「デュラン卿、それはあまりにも王に対して無礼ではないか。」とフィレール卿が声を荒げながら怒鳴る。「フィレール卿。もう良い。元々この問題は王家が口出しするような問題ではなかったのだ。後は全てデュラン卿らに任せよう。これでよいな、デュラン卿。」と悲しそうで何処か無念な表情をしたシズクが言う。「仰せのままに。」と満足そうなデュラン卿が言う。この状況は私の母国に似ている。私の経験上、このままでは王家は必ず貴族達の操り人形になるだろう。そして、この国は滅びる。そうさせないためには貴族達を排除しなければならない。仕方ない、心苦しいが愛する者のためだ。あの計画を実行するしかなさそうだ。と思っていると「王よ、考え直してください。このままではデュラン卿の思うがままになってしまいます。どうかご再考を。」とフィレール卿がシズクに訴えていた。「フィレール卿、シズクはデュラン卿に全て任せると言った。シズクはデュラン卿を信じると言ったのです。その決意を変えさせようとするなど、王に仕える臣下として、あってはならないことです。正直言って見苦しいです。」と私は冷酷に言った。すると非常に驚いた正直で「なっ。あなたは王の姉だろ。どうして分からないなんだ。あなたはこのままで構わないというのか。妹の苦しんでいる心が分からないのか。」と訴えてきた。「私はシズクの姉として妹と意見を尊重します。それ以上でも、それ以下でもありません。」とキッパリと言い張った。フィレール卿は悔しさと怒りで一杯の顔をして「あなたは姉として最低だ!」と言って出ていった。デュラン卿はそれを面白そうに見ていた。
とある王族のメモ
フィレール卿とデュラン卿はいつも争っている。国や民の事を第一にするフィレール卿と自己中心的なデュラン卿、性格が合わないことは仕方がないことだ。




