第23話 賢者、公爵になる。
帝国暦1400年
―フランティア王国パリース城玉座の間―
「それでは、始め!」
シズクの一言で火蓋が下ろされた。開始の合図が鳴った瞬間、騎士団長はこちらに向かって走ってくる。遅い、遅い、遅い、遅すぎる。これが王国最強の騎士なのか。あまりにも遅すぎる。これが王国最強ならコトネの攻撃は何なんだ。私は騎士団長の攻撃を全て、最小限の動きで避ける。このくらいの攻撃なら、攻撃を仕掛けるより、相手が疲れるまで待った方が得だ。10分20分30分と経つ。
「ハー、ハー、ハー。逃げずに真正面から戦えよ、卑怯者が。」
「卑怯者、か。分かった。逃げずに戦ってやる。」騎士団長の明らかな挑発に私は乗ってやった。騎士団長に向かってゆっくりと歩いていく。「くっそー、舐めやがって。うおーー。」騎士団長がこちらに向かって走ってくる。
カキーン。剣と剣がぶつかり合う。私は即座に剣を斜めにする。「何!?」騎士団長の剣が滑り落ちていく。その隙を逃さず私は騎士団長の首に剣を突きつけた。「そこまで。勝者、お姉様。」
ザワザワザワ。再び部屋の中にざわめきが広がる。そんな中、部屋の中で一番驚いた顔をしている男にスッキリした顔で声をかける。「これで私がシズクのお姉ちゃんだと認めてくれるよな。お若い、貴族様。」「何をした。お前が騎士団長に勝てるなんて、有り得ない。僕はお前を認めないからな。覚えていろ〜。」と言い、玉座の間から出ていった。「シズク、良いのか、あいつ勝手に出ていったが。」と聞くと呆れた顔をして、「まぁ、ロニアン公爵家が反対しようが決定権は王にあるから、何も変わらない。だから別に良いわ。それよりも、発表しなくては。」ゴッホンと軽く咳払いをしたシズクは良く通る声で「皆、色々あったが重要な発表をする。我が姉、アリタ・アオイに公爵の地位を授ける。この決定に対する異議は受けつけない。これで良いですね。お姉様。」と聞いてきたので「有り難く、承ります。」と言い、頭を下げた。その後頭を上げ、指定された場所に歩いて行く。貴族達の顔は明らかに不満そうだ。当然である。シズクの姉という理由だけで自分の娘くらいに見える女が自分よりも上か、同等の地位まで来たのだ。不満がないわけがない。しかし、この雰囲気は使えそうだ。と思いながら少し微笑むのであった。
とある女王のメモ
王国の戦士達が弱い理由は充分な訓練を受けれていないことにあるらしい。何とかしなければ……




